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推しの世界を持つ人は桃源郷を生きている


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記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
もうね……、同じ空気吸ってると思うだけで天国なのよ。
 
目の前の女性はうっとりと呟いた。
多分、いやきっと私なんて視界に入っていないのだろう。
まるで別の世界にいるかのように……正に「推しの世界」にワープしていたような眼差しだった。
 
私にそう話してくれた彼女の「推しの世界」は宝塚歌劇団だった。
あくまでも個人的なイメージなのだが、宝塚ファンというと一種独特の雰囲気を感じてしまう。熱量が半端ないのだ。
 
「宝塚の魅力って何ですか?」と、つい野暮な質問をしてしまったと後悔したのは後の祭り。彼女は宝塚の魅力を私に熱く説いてくれた。
 
宝塚ファンの殆どは「推しの存在」を持っている。対象である推しを語る時、
目はキラキラと輝き、声高に上ずっている。誰から見ても恋が始まったばかりの乙女の姿だ。中年以降の女性がこのような表情を見せる事は殆どないように思ってしまう。「推しの存在」とは凄いパワーを持っているのだ。
 
「推し」とは、イチオシのメンバーを略した現代的な言い方だ。一番好きで応援している人を指している。アイドルグループや、アニメのキャラでも、応援しているのが「推し」なのだ。
 
そう考えると昔から「推し」を支えるファンは存在した。
推しを支える存在……歌舞伎の御贔屓筋、相撲や芸能の世界のタニマチとは明治初期の頃から存在していた。御贔屓筋やタニマチを英訳するならば「パトロン」となる。推しを有形無形に援助する存在なのだ。
そう考えると、現代の「推しの世界」は昔と比べ捉え方が変化しているのかもしれない。
 
現代の「推しの世界」では、ファンは桃源郷で生きている。
 
桃源郷とは俗世界から離れた別世界。まるで現実にはあり得ないような素晴らしい場所という意味がある。ファンは「推しの世界」に入り込むことによって、現実生活ではあり得ない経験や感動を重ねることができるのだろう。
 
「推しの世界」では、ファンはひたすら推しの幸せを願っている。推しが活き活きと輝いて幸せでいて欲しい。見返りなんて期待しない。幸せそうな笑顔を見られるならそれで本望だ。宝塚ファンが呟いた「同じ空気を吸っていると思うだけで幸せ」は正に桃源郷の境地から出た言葉なのだろう……ある意味、それは無償の愛なのかもしれない。
 
実生活で、そんな境地に達することなんてあるだろうか。
ただ、相手が幸せであればいい境地なんて、正直家族であっても難しい。
 
「推しの世界」は、あくまでもバーチャルな桃源郷。現代の「推し」は自らの現実をさらけ出すことは必須ではない。その桃源郷の中で推しとして生きることがファンにとっての至福なのだ。
 
ファンはバーチャルな桃源郷と分かっているのだと思う。
その上で、桃源郷を充分楽しんでいる。
 
ただ、どんなに居心地が良くて素敵な桃源郷でも、時として荒らされてしまうこともある。現実と非現実の境界線が曖昧なファンもいるだろう。ストーカーになって推しを傷つけたり、人としてのマナーを無視する。推しのリアル世界に一喜一憂したりするファンの存在も見聞きするものだ。
 
きっと桃源郷の安心安全は、ファンの努力の賜物だろう。
ファンにとっては、「推しの世界」そのものが心の拠り所だ。
毎日の生活の中で、新鮮な刺激や活力を与えてくれる。ちょっと凹んだ時でも、推しの曲を聞いたら俄然元気になれるものだ。
そんな世界を大切に守りたい……桃源郷を守る為にもファンは強くなれるのかもしれない。
 
あるアイドルを推している知人がいる。自粛生活の前は東京や大阪など遠征も積極的に参加。とても毎日が充実して楽しそうだった。
長い自粛生活、エンタメ系のイベントは延期や中止が続いていると聞いていた。
 
「ライブ行けなくて寂しくない?」
 
「この間、東京公演があって久しぶりに参加したよ。皆マナーを叩きこんで参加してるから、大声出す人も立ち上がって応援している輩もいないんだよ。何かあったら公演が中止になっちゃうからね」
 
推しを護るために、桃源郷を維持するために、ファンは成長し強くなるのだろう。その知人は自粛中に、お給料に反映されるような資格を取りまくっていたらしい。全国ライブが再開したら心置きなく遠征に参加できるように、オシャレが楽しめるようダイエットも励んでいるらしい……桃源郷で生きるために見事な心構えと感心した。
 
同じ空気吸ってると思うだけで天国。
 
そんなことを言わしめるような、推しを持っている人は幸せだと思う。
「そこそこ好き」「どちらかというと好き」ばかりでは、推しの世界の絶対的な熱量は経験できない。きっと想像すら出来ないだろう。何にせよそこに入らなければ見えない景色があるものだ。浅く広くだけでは、桃源郷に入るチケットすら持っていないのと同じだろう。
 
私も桃源郷の景色がどんなものか見てみたい。
推しとの出会いは作為ではなく、きっと一目惚れのように突然に訪れるものかもしれない。ビビッと閃きが降ってきたのなら、きっと桃源郷入りのチケットを握りしめているに違いない。
 
晴れて桃源郷を楽しめるように……私は楽しみにしている。
 
 
 
 
***

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2021-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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