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オンナノコのコは〇〇〇のコ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ハヤシアキコ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「オンナノコのコはウンコのコ。女子力とはいかにウンコを出しているかである」
 
これは妹の友人コバピの名言だ。
 
ははーん、これは今流行りの腸内環境やらの話だな? そう思われるかもしれないが、これは全くもってそんなステキな話ではないのであしからず。
 
ある年、私は人間ドックの直前に便秘になり、あと2日ほどでドックだというのに全くもって出る気配がなく、これでは便を提出できないのではと焦っていた。
 
「食べれば出るはず」
 
そう思い、出来るだけボリュームのある食事を心がけていた。お昼に鰻丼とそばのセットを間食し、あまりの満腹さにお腹をさすりながらオフィスに戻った。
 
オフィスに戻って間もなく、みぞおちの下から右腹が痛くなり、始めはそのうち治るだろうと高を括り、とにかくさすっていたが、そのうちどんどんと痛みがひどくなり、仕事をするどころではなくなってきた。
 
とうとう耐えられなくなって脂汗を垂らしながら脇腹を押さえて、
 
「ちょっと、下のクリニック、行ってくる……」
 
と、声も絶え絶えに同僚に伝え、オフィスが入っているビル内のクリニックへ駆け込んだ。
 
脇腹を押していないと痛みに耐えられない。
 
幸いにもクリニックは混んでおらず、受付後まもなく診察に呼ばれた。
 
診察室に入るや否や、
 
「あのですね、お昼を食べた後、お腹が痛いんです。便秘のせいだとは思うんですけど」
 
真剣な顔で訴えると、触診もせずに即、検査に回される。
 
採血をして、レントゲン室へ。
 
最初に立って撮影し、次に仰向けになるよう言われ、台に横になり足を伸ばした途端、右下腹にビキーンッと激痛が走り、思わず声をあげてしまった。
 
レントゲン技師さんが心配そうに言った。
 
「右だよね? 虫垂炎じゃないといいけど……」
 
えっ? 便秘だと思っていたけれども、あれ? 言われてみれば確かに右側だけしか痛くないし、痛みが下腹部に移動している……。
 
ええーっ! まさかの? 虫垂炎? マジか!
便を提出できないどころか、人間ドックそのものを延期にしなきゃない?
てか、その前に仕事がたまっているのに、どうするよ、えーっ!
 
今度は別な冷や汗をかき始める。
 
レントゲン撮影が終わり、待合室に戻り、脇腹を押さえながらこれからのスケジュールを考え待つこと10分、やっと診察室に呼ばれた。
 
画像と血液検査の結果を見ながら、先生が言いづらそうに口を開いた。
 
ドキドキ……
ドキドキ……
ドキドキ……
 
「……便秘、ですね」(小声)
 
ええええええええっ? もうすっかり虫垂炎の気持ちでいましたけど!
べ、便秘ですか、ただの便秘ですか、そうですか。
 
「でも、先生、私、整腸剤飲んでますし、食物繊維も取ってますし、運動もしてますし、水分も取ってるんですけど、なんで便秘になるんですか?」
 
そんな私の問いには先生は全く答える気はないらしく、結局、触診もされず、
 
「そうですねぇ、水分取ってくださいね~。便を出しやすくするお薬出しますね」
 
と軽く言われ、それだけで診察は終わってしまった。
 
虫垂炎ではなくてよかったものの、腹が痛いことには変わりはないわけで、原因はもうどうでもいいから何はともあれ薬を飲まないことには始まらない! と、鼻息荒く、脇腹を押さえつつ、お会計を済ませ、処方箋をもらって同じフロアにある薬局に向かう。
 
ところがその途中で、なんと、腸がギュルギュル言い出したのだ。
 
「こっ、このギュルギュル感はっ! これは出る!」
 
その明らかな予兆に、これは薬をもらっている暇などないと、薬局手前のトイレに、全速力で駆け込んだ。
 
いつ出るかわからないので、常日頃から採便キットを持ち歩いていた。前年もドック直前に便秘になり1回分しか取れなかった苦い思い出があったのだ。
 
腹のギュルギュル感に耐えながら、キットの説明書を読み返す。
 
「排尿してから、採便シートを便器に敷いて、排便したら5分以内に……」
 
よし!
 
よし!
 
よしっ!
 
予兆は見事に結果となり、晴れて、出たのである! 薬もまだもらっていないのに。
 
便器に座ったまま、キットの蓋を開けながら、
 
「何しにクリニックに行ったんだ」
 
と苦笑いしつつ、5分以内に取らねば! と立ち上がり、振り向いたその時、音がした。
 
カチッ
 
ゴボッ
 
「ハッ! じじじじじじじじじじじ、自動洗浄~っ!」
 
ジャジャジャジャーーーーーーッ
 
ゴボゴボッ
 
お尻を出したままキットを手に持ち、流されていくマイウンコの後ろ姿を呆然と見送る。
 
同じビル内なのに、オフィスのトイレはスイッチ式で、クリニックのフロアのトイレは自動洗浄なのだ。
 
サヨナラ、マイウンコ。
 
「オンナノコのコはウンコのコ。女子力とはいかにウンコを出しているかである」
 
コバピの名言が頭に浮かぶ。
 
「女子力か……。そうだよな、女子力の高い人は、家じゃないトイレでこんな風にオシリ丸出しで便器を見つめることもないよな」
 
哀しみを何にぶつけたらいいのかわからず茫然としたが、その哀しみでお腹の痛みは緩和され、あきらめとともに気が軽くなった。
 
開けたキットの蓋をもとに戻し、もちろんオシリもしまって薬局へ行き、薬をもらって飲んだ結果、ドックまでにきちんと2回分の便が採れてホッとしたのだった。
 
そうして1か月後―
 
検査結果の「要再検査」の文字を見ながら、再び女子力について深く考えた私なのだった。
 
 
 
 
***

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2021-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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