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アドバイスを聞いてもらえないときに、問うべきこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「それではまず、転職サイトに登録してみましょうか」
 
これで3度目だった。
 
「うーんでもそれは、いつやったらいいかわからなくて」
 
なんだかはぐらかされる。
 
さっきから話が堂々巡りをしている。
 
「転職をしてみたいんですよ」
 
相談の最初に彼女がこう言ってから1時間が経とうとしていた。
私はキャリアコンサルタント、今、彼女のキャリア相談を聴いている。
 
「なぜ転職したいんですか」
 
から始まる状況確認の問いに、彼女は答えた。
 
「私が主任になると思ってたところに、他の部署から先輩がきたんです」と。
 
ここ二年間必死で頑張った。
お客様の会社のみんなから可愛がられるようになった。
受注金額もそこそこになってきた。お客様から信頼を得ている自分が
今主任になるべきだ。そう思っていたところ、他の部署から先輩がきたという。
 
彼女はすっかりやる気をなくしていた。
もう、会社に行きたくないと言う。
 
先輩の下では働きたくない、とも。
かつてやりとりしたときに、かなりのバトルになったのだという。
 
「先輩と毎日顔を合わせるなんて無理です」
 
彼女はきっぱりと言った。
 
学校を卒業してから、叔父が経営する事務用品の会社にそのまま就職。
ワンマンの中で守られながら働いてきたという。
その彼女が初めて受注を獲得した。
このままじゃダメだ、と思い、がんばった。
 
なのに、それを認めてもらえないんだという。
認めてもらえないなら、辞める。
辞めて、やりがいのある仕事を探す。
今ならできそうな気がする。
営業をしていて、達成感も強く感じた。
 
この経験が、ほかの会社で通用するのか、自分を試したい。
 
とても前向きな言葉が彼女の口からどんどんでてきた。
 
聴いていて嬉しかった。元気をもらう、というと月並みだが、本当だった。
 
普段口下手な彼女だからこそ、気持ちの入った言葉が響いた。
 
「よし、一緒に、新しい職場を考えていきましょう。まず、転職サイトに
登録してみませんか」
 
私も元気よく提案した。
 
が、しかし、彼女はそれが聞こえていなかったのだろうか。別の話を始めた。
 
「友達は知り合いのツテを辿ってさがしたみたいです」
 
あれ。違う話になった。でも、私はそのまま、話を聴き続けた。
「友達も転職活動したんですね」
 
彼女はひとしきり、友達の話を始めた。
「そうなんですよ。もともとバイトから社員になった会社だったんですけど
やっと決心できたみたいで。友達のツテでIT系の会社に入ったんです」
 
話を戻してみる。
「そうでしたか。お友達みたいに転職が決まるといいですね。転職サイト、
登録できそうですか」
 
彼女のテンションが急に下がった。
「あー。職務経歴書とか書くと、縁故で働いてたことがわかってしまわないかなって、気になるんです」
 
え。なんだか理由になってるようでなっていないな。
 
転職したいと言いながら、転職の話になると、口が重くなった。
困った。
 
話し始めて1時間半。堂々巡りを始めた。
 
転職したい人に転職を勧めているのに、具体的な行動の話になると
進まない。
 
これじゃ相談にならないな。なんとかしなきゃ。でもアドバイスの押し付けでは聞いてもらえないだろう。
 
私はちょっと追い込まれた。
なんの発見もなく、なんの進展もなく、この相談をおえていいのだろうか。
いや、よくないと思う。
 
そして3回目のはぐらかし。
 
そのときふと、ある言葉が口をついてでてきた。
 
「あのね。さっきから、転職サイトの登録の話になると、話したくなさそうなんだけど」
 
「あ、はい」
 
「もしかして、転職サイトの登録をためらう理由が何かあるのかな」
 
さらっと質問してみた。
 
アドバイスを聞かない理由を、ごく自然に質問してみた。
 
彼女が口を開いた。
 
「自信がないんです。私転職したことないし」
 
そうか、それでアドバイスを聴いてくれなかったんだ。
 
彼女は意図的に、話をはぐらかそうとしていたのだ。
 
私は「なぜ、転職サイトに登録したくないんですか」
と聞かなかった。
なんだか、彼女を責めることになりそうな気がしたのだ。
 
そこで、こう聴いた。
「転職サイトの登録をためらう理由があるのかな」と。
 
そう。彼女は、アドバイスを聞かない、と言っているのではないのだ。
 
どこか、二の足を踏んでいる。
それを否定することなく、責めることなく聞いてみた。
彼女の意思で登録しないのではない。
何か、彼女を登録からそむけさせるような気持ちがあったのだ。
 
ネガティブな気持ちだけを外に取り出して聴いてみたのだ。
 
そうしたときに思いもよらない答えがでてきた。
 
「外の世界で自分が通用するか、自信がないんです。就活そのものに」
 
そう。そもそも彼女は、転職を言ってはみたものの
自信がなかったのだ。
 
「なるほど。登録が嫌なわけじゃなくて、自信がないと思っているのですね。
そしたら、ですね。どういう状態だったら、自信をもって登録できるのか、
そこから考えてみませんか」
 
自信がない、なら、自信がでるにはどうしたらいいか、考えればいい。
 
すると彼女は言った。
 
「そうですね。うーん。でも、自信、自信、どうだろう」
 
さらに聞いてみた。
 
「何があったら、自信になるのかな」
 
沈黙が1分続いた。
 
「あー、でも、難しい。自信がつくのがいつなのかわからないから
まず、転職サイト、どれがいいか調べてみようと思います」
 
アドバイスは聞いてもらえなかったが
弱音は聞けた。
 
弱音を聴くことで
行動が見えた。
 
彼女の中で少し何かが始まった。アドバイスではなく、自分の意思で。
 
これは、彼女と私の話だけだろうか。
 
人にアドバイスしたとき
こんな風に言われた経験はないだろうか。
 
「それはわかってるんだけどね、できないんですよ」
 
一生懸命アドバイスしたのに、とガックリくるやつだ。
 
でもそんなとき、ちょっと心を鎮めて
 
「アドバイスを実行できない気持ち」
を聴いてみるのはどうでしょうか。
 
「なぜ、できないんですか」と問い詰めるのではなく
「できないと思う理由は、何かありますか」と。
 
そこにある、ためらいや弱音は、
今まで本人が気づかなかった思いかもしれません。
 
そこに目を向けることで、
悩んでいた本人の思考が回り始めたらもうその時は、、、、、、
 
あ、今日はこのくらいにしておきます。
 
だってこれ以上は、みなさんへのアドバイスになってしまうから。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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