大叔母は１９歳
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：いとうひろこ（ライティング・ゼミ日曜コース）
＞けふは、わざわざありがとう。おおばあげるって、わすれてごめんね。年が大きくなるといかんね
＞おばさん、こちらこそごちそうさまでした。大葉、私もすっかり忘れてました。今度、ください
母のお供で、母の叔母の家にちょくちょく遊びに行きます。
おばさんは一人暮らし。
家の真ん前に家庭菜園があり、今の時期、なす・トマト・キュウリ・ピーマン・スイカ、時期が変われば、白菜やネギ、ジャガイモに玉ねぎと、だいたいの野菜を作っています。大葉は一人生えで、たくさん育っているようで、私が「今日は冷や麦でも食べようかな？」と話していたら、薬味に摘んであげるから持って帰りなさい、と言われていたのでした。
母の叔母、つまり祖父の妹のことを、『大叔母』というらしいと、最近知りましたが、この大叔母、息子二人は就職と共に家を離れ、旦那であるオジサンが20年くらい前に亡くなってからは、一人暮らしをしています。
昨年までは、片道４㎞弱のうちまで、自転車でどうにかこうにか、遊びに来ていました。
が、さすがに最近は難しくなったようで、最近は私が車でちょくちょく顔を出しています。
こう書くと、私は、よくある典型的な独居老人のお世話をする親戚かのようですが、実のところ大叔母について行くのが精いっぱいで、世話をしたことはありません。
なんせ、気持ちは19歳ですから！
「久しぶり～。うぁ～、その袖がふわふわしたの！ 今、流行っとるんでしょ？ もう少し年が小さかったら、私も着たのになぁ」「ねぇ、こないだテレビで見た化粧品を試しに買ってみたんだけど、ここのシワ、ちょっとましになった気がしない？ それからここのシミは薄くなってる気がするけど、どう？」
「あの男の子、いい顔してるねぇ。今どきの感じでカッコよくない？」
と、まるでガールズトーク炸裂なのです。
だから、携帯メールもお手の物。
でも、『けふは（今日は）』と、文語体が入り混じっているメールが届くと、大叔母の実年齢を改めて思い出します。
実は、91歳！
かと思えば「こないだ売った株、あれからまだ値上がりしてるんだよ！ 自分が見込んだ利益を確保できて売ったんだから、後悔はしていないつもりだけど、もうちょっとタイミング待ってりゃよかったと、欲も出るわなぁ」と、日記の折れ線グラフを見せてくれます。
日記帳なので、その日の出来事が１行、書かれているのですが、書いているのは、日記と株価だけではありません。今は、住んでいる県と市、そして私が住んでるところのコロナウイルス感染者の人数も記録して「最近はまた増えてきたから、気を付けて過ごしてね」と心配してくれます。
遊びに行くと、いつも先客がいます。
おばさんの家は、サロンのように、日替わりでお客様がおいでです。
そこに私が飛び入り参加するときは、紅茶好きな私のために、お客の好みはさて置き、必ず紅茶を入れてくれます。
お料理も得意で、「こないだ、電子レンジでかぼちゃのケーキ作っとったから、今からチャレンジしようと思うで、一緒に味見してね」と、早速、庭でとれたかぼちゃを使って、広告の裏に書き取ったレシピを見ながら一緒に作るのですが、いまだにレシピ開拓をしています。
人がいつも集まっているのは、こういうところなんだろうなぁ、と、いつの間にやら、私も輪に入って、あっと言う間に時間がたってしまいます。
大叔母の話題の豊富さに、話しは尽きません。どうして、そんなにいろいろ興味を持って挑戦できるのでしょう･･････。
女学校をでて、教員免許も持っていて、代用教員をしたこともあるようですが、「女学校の間は、学徒動員で軍需工場に毎日通っていたから、勉強はほとんどしてないの。今思えば、何を教えてたんだろうねぇ」
知識のないことがコンプレックスのようで、いまだに老眼鏡を頼らずに、新聞や本を読み、気になったことは、お話してくれる姿は、女学生のようです。
畑仕事をしていると、どうしても背中が曲がり、おばあちゃんぽくなりますが、背筋ピン！ 後ろ姿から想像して正面を見たら、腰が抜けるんじゃないか？ と思うくらいです。
一人暮らしを謳歌して、前向きにいろんなことに散り組んでいたりするのは、70歳から初めたヨガのおかげじゃないかと、秘かに思っています。
もう20年も習っているので、不調なところがあるというと、そこはヨガ教室に早変わり。
記憶力と好奇心は19歳
おばさん、これからも変わらず、元気でいてください。
そして、また、ガールズトークしようね。
＊＊＊
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