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大っ嫌いだった悪魔が、大好きなキングに。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:肩書のないオッちゃん(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
一生に一度は絶対に会った方がいいと言われていた。
キングと呼ばれている。
 
存在感がスゴイから、遠く離れていても、
即座に分かる。
 
名前を言えば、「あー、わかるわかる」
と誰からも返ってくる高い知名度。
 
初めて出会ったのは忘れもしない
大学3年のときだった。1995年。
 
受講していた東南アジアの政治経済を学ぶゼミで、
夏に先輩たちと一緒にゼミ旅行が企画された。
 
マレーシア・インドネシアを巡り、
現地の大学との学生との交流やボロブドゥール遺跡なども
観光できるプランで、胸躍らせて参加したのを覚えている。
 
出会ったのは、そのゼミ旅行の途中、
マレーシアだった。首都クアラルンプール。
 
噂通りに強烈な存在感を示した。
離れていてもわかるっていうのは本当だった。
 
ただ、近くを見渡しても見つけられない。
 
キョロキョロと探す。
 
産後の妊婦さんを一度で元気にするとか、
王様とも呼ばれるが、悪魔とも呼ばれるアイツ。
 
ムサンキングやゴールデンフェニックスをはじめ、
リンゴみたいに100種を超える種類もあるアイツ。
 
今では中国人が大好きで買い占めてしまうから
1玉6千円から、高いと1万円を超える値が付くほど
値上がりしてしまっているアイツ。
 
「見つけた!」
 
旅先で好奇心のアンテナがピーンと立ってた当時の私は
500m以上先にはあったであろう屋台から
ぷーんっと臭うアイツを見つけた。
 
そう、King of Fruits! ドリアンだ。
 
ゴツゴツとした大ぶりのトゲみたいなもので覆われている殻。
それを割ると、黄色味がかった、でっぷりとしたバナナの果肉を
風船で膨らませたような果肉がお目見え。見方を変えると
でっかい芋虫に見えなくもない。
 
「うわ、くっさ」
 
思わず顔をそむけたくなる。
第一印象は【人生で最悪】だった。
 
最初はえづくほどに、体が拒絶する感覚が全身を襲った。
味わうって言っても、その臭いが強烈で、食感も
クリーミーでねちゃねちゃしていて、とても好きになれなかった。
 
この初めての体験は、一生忘れない強烈なものだった。
 
そして、当時のいたずら心に満ちた私は
こんな強烈な体験をどうしても共有したかった。
 
そんな私は翌日2房を買って、
ホテルに持ち帰り、みんなにも食べてもらおうとした。
 
臭いでバレないようにと、袋を二重にして
ぐるぐると密閉に近い状態にして、持ち込みにトライ。
 
ゼミ旅行の仲間にも「素敵な思い出」を!
 
どんな顔して食べるのかワクワクしながら
こっそりとエレベーターに乗り込む。
 
宿泊フロアは12階。
途中、3階でホテルのスタッフが入ってきた。
 
「マズい」
 
スタッフが顔をしかめて、人差し指を一本立てた手を
彼の顔の横に持ってきて、左右に振り始めた。
 
「No. No. No Durian comes here!」
(ダメダメ、ドリアンはここに来ちゃダメ!)
 
「ソーリー」と言ってうつむくしかなかった。
そしてエレベーターは、行き先をB2Fに変え
私は地下の一室に連れていかれた。
 
(マズい、マズい)
 
とてつもない説教を受けることを覚悟した。
 
薄暗い、だだっ広い空間。
何か調理場のようなものが見えた。
 
どうやら連れていかれたのは従業員用の食堂だった。
 
「ドリアンは部屋へ持ち込んじゃダメだ。その臭いは
3週間近く部屋に残ることになる。お客様によっては嘔吐して
しまうこともあるんだ」
 
あー罪悪感と恥ずかしさが半端ない。
警察に連れていかれるんだろうか、そんな不安がよぎった。
 
「せっかくマレーシアに来たんだから、ドリアンが食べたいのは
わかる。ここで全部食べていけ」
 
「……」
 
友人に食べさせたいとは言えず。
自分でまず1房を食べた。
 
(マズい、マズい、マズい)
 
1房で手が止まる。
 
「なんだ、遠慮するな。ドリアンは高いんだから
全部食べておけよ」
 
残りも一気に口に放り込んで
鼻からドリアンの臭いが逆流するのを
感じながら飲み込んだ。
 
二度目の出会いは、まさかの形。
いろんな意味で【マズかった】。
 
これに懲りてしばらく
悪魔の果物であるドリアンには
近づかなくなった。
 
10年後。
 
仕事で海外に行く機会を貰い、インドネシアの
お客様と食事をする機会があった。
 
季節は初夏。当時の上司が大好きな果物を
食べたいという。嫌な予感があたった。
 
やはり、ドリアンだ。
 
ちょうどシーズンもぴったりだったこともあり
再びアイツと顔を合わすことになった。
 
テントがいくつも張られたドリアンマーケットが
あって、車が長蛇の列をなしていた。すごい人気だ。
 
現地の人に、写真でざっと20種類はある
ドリアンの種類の中から「ムサンキング」という銘柄を
オススメいただいた。
 
冷蔵庫で冷やしてあったものを、
その場で割ってもらい、一房もらった。
 
覚悟した、あの強烈なインパクトを。
 
(マズい……!? いや、これは)
 
「うまい!」
 
夏のスイカにかぶりつくように
むさぼる自分を止められなかった。
 
なんと、ドリアンはカットしたばかりや、
冷やして食べるときには、臭いがグッと抑えられるらしい。
 
臭いが匂いになったせいか、果肉を味わって
食べることができ、なんと美味そのものに。
 
クリーミーで、ねっとりと甘い。
 
【悪魔がキングに変身した】三度目の出会いだった。
 
高校1年の時にすぐ後ろに座ってスゴんでた
ピンクの靴下、短ラン、ピンクの自転車の彼を思い出した。
見た目トゲトゲしく、近寄りがたかったアイツ。
2年になったときに、中学の同級生を通して
彼と接するとたいそうイイヤツだと判り、以来、
一緒にバンドまで組み、長い付き合いになっている。
 
もはや、ドリアンもそんな存在。
東南アジアに行くと探してでも
食べに行く大好きな果物の一つになったのだ。
もう長い付き合いだ。忘れられない強烈な存在だ。
 
皆さんにも大っ嫌いな悪魔と思っていたものが
大好きなキングになるものがあるカモ!?
 
 
 
 
***
 
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2021-08-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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