メディアグランプリ

京都に住めなかった少年の行く末は。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井口皓介(チーム天狼院)
 
 
「うそ!? 京都に住めるじゃん!」
 
2年前、僕は大学入試の結果を見て驚いた。
E判定、つまり「合格できる可能性は限りなく低い」と模擬試験で判定された大学に奇跡的に合格していたのだ。
その大学を志望校に選んだ理由は「京都で暮らしたい」という極めてシンプルなものだった。
『夜は短し歩けよ乙女』という作品がある。中学時代に読んだこの作品は、京都の大学に通う「先輩」という男子学生が「黒髪の乙女」に一目惚れし、彼女を追いかけて京都の街とそこに住む愉快な人々をめぐる、という物語である。
「高校まで過ごした狭い世界から抜け出して、見知らぬ土地で生活してみたい」という思いは持っていた。『夜は短し歩けよ乙女』を読んで、この世界観を体感できる京都という街で大学生活を送りたいと思ったのだ。
 
志望校には、なんとか合格できた。愛知県にある実家からの距離が遠いため、下宿を探していると、一つ気になる点があった。
不動産会社のサイトで「大学名+学部名」で下宿を検索すると、京都の地名がほとんど出ないのだ。大学のホームページで調べると、京都ではなく大阪のキャンパスに通うことが発覚した。
結局、「京都で学生生活を送る」という目標を果たすことはできなくなってしまった。「先輩」のように宵の都を歩くことは叶わなかった。
中学生から5年ほど温めてきた夢は、潰えてしまったのだ。
 
 
大学に入学し、大阪での生活を楽しんでいた。
しかし京都に出かけると、「そこに住みたい」という以前からの憧れが顔を覗かせる。
「京都を生活の拠点にしたい」。そんな思いを叶えるために、僕は京都でのアルバイトを探し始めた。
 
運命の出会いは、突然やってきた。
知り合いの先輩が京都の書店で働いているというのだ。そのお店の名前は「京都天狼院」。初見では読み方も分からなかったこのお店、書店としてもカフェとしても利用できるだけでなく、イベントやゼミも開催しているという。
 
「何そのお店? めっちゃおもしろそう!」
 
僕はすぐにインターネットで検索し、興味を持った。お店の外観はまるで町家のようだった。いかにも京都らしいお店の外観だった。「このお店に絶対行く!」と心に誓った。
先輩に紹介してもらったあと、僕は京都天狼院を何度か訪れた。コロナ禍以前に開催された『ファナティック読書会』にも参加した。
 
「このお店、すごい! スタッフさんも優しいし、お店の雰囲気も最高!」
 
僕は完全に天狼院の虜になっていた。それから約1年、現在ではアルバイトスタッフとしてここで働いている。
大阪に住んでいて京都で働くことのメリットは、あまりない。京都の方が遠いし、最低賃金が低いため、時給も低くなることが多い。いくら京都に住みたいからとはいえ、である。
周りの大阪府民、京都府民は呆れていた。彼ら曰く、「アホちゃうん?」と。
時給の高さを求めて、わざわざ大阪でアルバイトをする京都府民がいる。逆の行動をする僕は、異端のような存在であった。彼らの意見は真っ当なものだと思う。
それでも、ここで働いている。
 
なぜなら、天狼院書店はコンセプトの通り「人生を変える書店」だから。
ただ「京都で働きたい」と思っていただけの少年は、天狼院書店の外観や内装、雰囲気を好きになり、お客さんからスタッフになってしまった。
駅までの鴨川沿いの道、夜の四条河原町の賑わい……。お店近くの景色は『夜は短し歩けよ乙女』の世界そのものだった。
それだけではない。初めてお店に入った時、話しかけてくれた店員さんに、なぜか警戒心を抱かなかった。それどころか、好きな本についておしゃべりしてしまった。それほどまでに居心地がよかった。その店員さんに憧れた。「この店員さんのように本への愛を誰かに伝えてみたい」。
天狼院書店は僕の中学時代からの夢を叶えてくれただけでなく、人見知りだった僕の人生そのものを変えてくれた。
 
 
お客さんに話しかける時には、いまだに緊張する。
どんな切り口で話しかけよう? お客さんは反応してくれるだろうか?
きっとお客さんには怪訝な顔をされるのだろうな……。
それでも。もしかしたら、この会話が天狼院のことを好きになるきっかけになるかもしれない。あのときの僕のように。
天狼院の魅力は本を買うだけではない。カフェスペースを利用するだけではない。イベントやゼミを開催するだけではない。それら全てができることだと思う。
スタッフだけでなく、お客さん同士も仲良くなることができる。それもリアルの世界で。
そんな場所、現代では珍しいと思う。
 
誰かの人生を変えるきっかけに関わることができるかもしれない。
そんな可能性を持つ場所が天狼院書店だと思う。
あなたも「人生を変える書店」に来てみませんか?
「先輩」が「黒髪の乙女」を追いかけるうちに、京都に広がる未知の世界へ歩くように。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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