メディアグランプリ

心の中に猫を飼っている。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本麻莉(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
少し前に、「心の中に猫を飼う」という空想の遊びをしていた。
 
空想の世界で、心の中に猫を飼っていた。
 
猫は、気ままに歩く。
跳び上がる。伸びをする。眠たい時に寝る。遠くを見ている。
 
猫は、感情をあらわにする。
怒る、そっぽを向く、悲しむ、甘える。
 
私は猫を注意ぶかく見つめる。「何をしたいと思っているのだろう?」
 
私は、猫の気持ちを完全にはわからない。
ただ、なるべく丁寧に、その気持ちを感じ取れるようにつとめた。
 
「猫」は、「自分の内側にいる自分」の比喩だった。
 
私は、自分の中にある気持ちに目を向けて、尊重するのが上手ではなかったから
「本当は嫌だなぁ」「疲れたなぁ」「何も制約がなかったら、あっちがいいなぁ」
そんな心の声を、
「まぁ仕方ないか」「でもやらなくちゃ」「だけど諸々の事情で、こっちだな」
といった理性の声で押し込めて、見なかったふりをすることが当たり前だった。
 
「心の中に猫を飼う」は
自分の内側にある気持ちや、感覚を大切にするためのリハビリのようなものだった。
 
べつに猫じゃなくても、シベリアンハスキーでも黒ヒョウでもアフリカ象でもいいのだけれど
とにかく簡単には無視できなさそうな、圧のある存在感を持つ動物がいい。
 
「自分」が勝手気ままにふるまうことは難しくても
「猫」ならば勝手気ままに、誇り高く生きてくれるような気がしたから。
 
猫の願いを汲みとって、できるだけ叶えてあげる。
猫の抱く感情に対して、ジャッジをせずに、ただ受け止める。
 
心の中にいる「猫」をとおして、自分の気持ちを大切にする練習。
それは自分自身を大切にすることにも繋がっていたように思う。
 
ある日、読んでいた本の中に、思わず膝を打つようなことが書いてあった。
「言っていることはわかるんだけど、どうしても納得できない」というモヤモヤの正体。
それはどうやら、人間の脳の仕組みによるものらしかった。
 
本に書かれていた説明によれば、人間の脳の中では
ヒトに進化してから発達した脳の部位「大脳新皮質」が、理論や言語を司っている。
 
その部位のさらに内側では、それよりも古く
哺乳類の時から存在する脳の部位「大脳辺縁系」が、感情や直感を司っている。
そしてこの脳は、言語を理解できないのだという。
 
「言っていることはわかる」のは、ヒトの脳である「大脳新皮質」
 
「どうしても納得できない」のは、哺乳類の脳である「大脳辺縁系」
 
「大脳辺縁系」には言語は通じないから説明することはできない。ただ「なんとなくそう感じる」という「結論」だけを、受け取ることができる。
自分の脳の中なのに、自分の内側のことなのに、それはコントロールできるものではないらしい。
不思議だな、それはまるで、自分の中に自分じゃない生き物がいるようだ。そう思ったところでふと思い出した。
 
そうか、猫だ。
 
理屈であれこれ言って、説得を試みたところで、猫は聞いちゃいないだろう。
そんなことより遊びたい、美味しいものを食べたい、寝たい、ふれ合いたい。
 
「猫」は、「自分の内側にいる自分」の比喩だったけれど
「大脳辺縁系」のイメージを、なかなか上手く捉えているような気がした。
自分の内側にあるのだけど、自分の思いどおりにはならずに、勝手気ままにやっている。
 
「私」は、脳の構造で言えば「猫」よりも外側に存在している「ヒト」で、しかも成人しているので
一応社会のルールは守るし、生活のために働くし、部屋が汚れたら掃除もするし、多少やりたくないことでも頑張ってできる。
何かをしたいと望むときに、「自分はこういう理由でこうしたいんだ」と、言葉を尽くして周囲や自分に対して説得することもよくある。
それは決して悪いことじゃない。
 
だけどそれが「正しいこと」だから、「説明できること」「合理的なこと」だからと、そればかりを優先した結果
「理由もなく好きなこと」「なんとなく嫌いなこと」「よくわからないけどとにかく嫌なこと」を軽視したり、さまざまな感情に蓋をして、我慢していることを繰り返しているうちに、自分の「やりたいこと」「やりたくないこと」が段々わからなくなってくる。そうして、自分がなんのために頑張っているのかわからなくて、途方に暮れたりする。
以前の私はそうだった。
 
自分の内側にある「なんとなく」は、言葉では説明ができない。
言葉では説明できないけれど、それは自分の自然な気持ちであり、感覚だから。大切な生き物を愛でるように、大切にしてあげたいと願う。
 
自分の願いを汲みとって、できるだけ叶えてあげる。
自分の抱く感情に対して、ジャッジをせずに、ただ受け止める。
理由のないものたちを信頼してあげる。
 
心の中の猫も、私の中にある大脳辺縁系も、思い通りにはならない。そして愛しい。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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