メディアグランプリ

150倍もの難関を潜り抜け憧れの放送局に就職できたのは、あんこ屋にケンカを売られたおかげ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:南野原つつじ(スピード・ライティング講座)
 
 
「で、このあんこ屋にケンカを売られたっていうのは?」と突然聞かれました。
 
目の前にずらっと並んでいるのは、大阪に新しく開局する放送局の社長をはじめとする役員達。
正社員4名の募集に600名の応募者が殺到したそうですが、私は運よく書類選考を突破し、面接試験までこぎつけたのでした。
事前に好きなアーティストや、今まで行ってよかったコンサートなどを聞くアンケートがありましたが、その中になぜか「今年最も腹が立ったこと」という質問もあり、「あんこ屋にケンカを売られたこと」と書いたからです。
 
「え、話せばちょっと長くなるんですけど、いいんですか?」
「あぁ、いいよ」
「私大学を卒業してから大学院に行こうかどうしようかとか考え、ぼけっとしていたところ、突然学部長の教授から『助手に欠員ができたので後輩を助けると思ってぜひ大学に残ってほしい』と、お電話をいただき、それで大学の助手をしてたんです。
調理実習の助手として実習に使う食材を調達したりもしたんですけど、ある日和菓子に使うあんこを○○というあんこ屋さんに買いに行きました。
3キロ買ったんですけど、測ってみると2700グラムしかなくて……。
1グループ300グラムずつに分けてお配りするはずが270グラムずつしか配れなくなりました。
調理実習の先生が
「和菓子の美しさとは何で決まるかご存知ですか?一つ一つの大きさが揃っていることなんです。ですから、あんこは30グラムずつきっちりと計量して使ってくださいね」
と、説明されましたが、30グラムずつ計ると10個作れるはずが9個しか作れません。
仕方なく
「すみません、あんこは30グラムずつではなく、申し訳ないんですが、27グラムずつ計量してくださいね」と、
実習が始まる前に、すべてのグループに米つきバッタのようにペコペコしながら伝える羽目になりました。
そんなことがあったので、次の和菓子の実習の時には、余裕を持って、必要な分量よりも多い分量を注文することにしました。
さらに念のために、「2.4キログラム強お願いします」と、ファックスを流しておきました。
注文していたあんこを取りに行ったとき、突然あんこ屋のおじいちゃんからこんなふうに言われたんです。
「2.4キログラム強っていうのは、なんですの?」
「いや、あの、ちょっと、足りなくなったら困るかな……と思いまして」
と言うやいなや、
「大体なぁ、あんたら、いっつも、あんこが少ないだとか足りへんとか、いい加減にしなはれ!
うっとこは、ちゃーんと、測ってますんや!!!」
と、ものすごい剣幕で怒られたのでした。
 
私の個人的なつながりのお店でしたら、売られたケンカなんぼでも買えます。
 
「そうですか、前任者の方が辞められて私今年から勤め始めましたので、ここに来させてもらうのも初めてだったんですけど、こないだ3キロ買ったはずが2700グラムしかなかったんです」とか、説明できたと思うのですが、もしも、ここのあんこ屋さんが
「もう二度とお前の大学にあんこは売らない」と言われたなら、違う場所であんこを調達しないといけないし、先生や後輩や大学に迷惑をかけてしまうと思いました。
 
言いたいことはあったけれど、次の瞬間私の口からはこんな言葉が出ていました。
「いやいや、すみません、失礼なことを言ってしまいました。
うちの先生はこちらのおまんじゅう屋さんのあんこがお気に入りで、『あんこは○○に限る』と、おっしゃっておられますので……」なんて、口からでまかせをいい平身低頭へこへこして、何とか持って帰ってきたあんこを測ってびっくり、またもや全然重量が足りなかったのでした。
 
結局はそのあんこ屋の秤が古かったのか不正確だったんだろうなと思うんですが、
姉に「もう嫌やこんな生活」というと「どんな生活?」
「『あんこは○○に限る』なんていう生活や」と……。
 
と、たったそれだけの話だったのですが、なぜか役員一同に爆笑されてしまいました。
入社後も社長や副社長、役員さん達から親しみがこもった感じで
「あんこちゃん、あんこちゃん」と呼んでいただいたことを考えると、よっぽどその話が受けたから合格できたのかなと思います。
だってその話以外ははっきりいってどうでもいいような話しかしなかったからです。
 
私はずっと昔から、音楽が好きで、FMラジオが好きで、FM大阪でアルバイトもしていたぐらいでした。
でもFM大阪も、FM NHKも社員募集がなかったので諦めていたのでした。
そこにJ-WAVEと同じように大阪にも、もう一つ開局されることになったということも驚きでしたが、まさかそこに正社員として就職できるようになるとは夢にも思いませんでした。
 
考えてみれば、私の夢が叶ったのは、○○というあんこ屋さんが、私にケンカを売ってくださったおかげだと思います。
 
”塞翁が馬、禍福はあざなえる縄のごとし”
と言われますが、そのときは「うわぁ腹がたつ」とか、「最悪」と思ったことこそが、後々私の人生に役に立ったことは他にも数えきれないくらいあります。
2014年からの難病闘病もその一つです。
 
このコロナ禍も、行きたいところにも行けず、会いたい人にも会えず、もう最悪と思うしかない日々が続いていますが、考えてみれば昔は姫路から京都まで行くしか受講できる術がなかった天狼院の数々の講座も、今は通信受講が可能となったおかげで家にいながらにして、学びたいことを思う存分学べる環境になりました。
 
私も2月からのライティングゼミを皮切りに、ライターズ倶楽部、スピードライティングなど、さまざまな講座を受講することができました。
良き師や友にもめぐりあえ56年間の人生の中で最も濃く深く書くということに向かいあえて大変な中にも至福の時間を過ごせたような気がします。
 
”災い転じて福となす“
災いの裏側にある福を教えてくれたあんこ屋のおじいちゃんに心より感謝しています。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-09-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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