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キミは私の太陽


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記事:(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
暗い道をさまよい歩く私。
どのくらい歩いているんだろう?
自分が歩いてきた距離も時間もよく分からない。
本当はむやみに動くべきではないのでは?
そんな迷いが生じたところに、差し伸べられた彼の手。
最初は果たしてその手を取っても良いのか、ためらいがあった。
しかし、今なら分かる。
あのときに彼の手を取って本当に良かったと。
彼―アルンちゃんは私のキムチ探しの旅を支えてくれる希望の光だ。
 
キムチが好きになったのは仕事がきっかけだった。
新型コロナウィルスが拡大する前は海外営業の業務に就いていた私。
出張の機会が比較的多く、多いと月に3, 4回は海外に行っていた。
海外とはいっても行き先は主要顧客がいる韓国に絞られており、近場だからこそハイペースでの訪問が可能になっていた。
ときには弾丸スケジュールで日帰り出張も敢行したこともある。
時間に余裕はなくても食事の時間は確保するようにしており、焼き肉、フライドチキン、お粥、中華、鰻料理など、様々な店を訪れた。
提供する料理のジャンルは違えど、共通していたのはどこに行っても十中八九キムチが出てくること。
からっと揚がった肉の塊の横にあるキムチに違和感を覚えることもあったが、韓国ではそれが当たり前のようだった。
おかげでキムチにも様々な味わいのものがあると知ることができた。
お店によってキムチに使われている材料や味は全く異なるのには驚かされた。
キムチといえば白菜と思い込んでいた私にはきゅうりや大根やキャベツのキムチはとても新鮮で、キムチという食品の奥深さを思い知らされた。
その裏には毎週のように韓国に来る私達が飽きないよう、毎回違う店を紹介してくれた現地協力会社のスタッフの涙ぐましい努力もあったのだが。
彼のおかげで私はキムチ沼に片足を突っ込んだと言っても良いかと思う。
 
「もっといろいろなキムチを食べたい!」
 
そう思っていた矢先、新型コロナウィルスの流行で海外出張は軒並み禁止。
海外顧客を訪問する機会はぐんと減った。
そこに職種変更の話が舞い込み、営業職を外れることになった。
こうしてあれだけ食べていたキムチを口にする機会は絶たれてしまったのだった。
 
韓国の味を楽しみたいと、積極的にキムチを買い始めたのが1年前のこと。
スーパーで見かけた適当なキムチを買って食べてみることにした。
「……何だか物足りない?」
韓国で食べたキムチにはあったパンチが全くなく、とてもじゃないが同じものとは思えなかった。
どうやら私が買ったキムチは「浅漬け型」と呼ばれるもので、キムチ味のする調味料に野菜を漬けたもの。
一方で韓国のキムチは唐辛子やニンニクや魚醤などでできたタレを塩漬けして洗った野菜にまぶして作られる。
このときに5日ほど壺漬けして発酵させるため、韓国のキムチは「発酵型」と呼ばれる。
韓国のキムチは全て発酵型で、そもそも発酵型でないと「キムチ」とさえ呼ばれないらしい。
この事実を知ったときには「偽キムチを食べてしまった」とショックを隠し切れなかった。
「韓国の味を楽しむためには発酵型のキムチを探せ」
ミッションは明確になったが、どうやって発酵型キムチを見分けるのか?
そこで出てくるのがアルンちゃんだ。
アルンちゃんは韓国農水産協のキャラクターで、韓国直輸入のキムチにはこのキャラクターのマークが必ず印刷されている。
アルンちゃんのロゴマークは韓国の農村に広がる野原とその豊かさを盛り立てる太陽をイメージしたものらしい。
そう言われてみると、アルンちゃんの手がこちらに向かって差し伸べられているようにも見えなくもない。
それこそキムチ探しという真っ暗な道を照らしてくれる太陽のように。
 
アルンちゃんの存在を知ってからは、スーパーのキムチ売り場ではアルンちゃんを探すのが私の習慣になっている。
アルンちゃんが印刷されているキムチはまず買うのがマイルールである。
アルンちゃんがいるキムチは辛味、旨味、酸味の全てが揃っており、口に入れるだけで気分は韓流である。
興味深いのは、同じアルンちゃんが印刷されたキムチでもそれぞれの味のバランスが異なること。
とにかく辛いが後から旨味が押し寄せてくるもの、いかにも乳酸菌たっぷりな酸味が強めのもの、様々な魚介類が含まれて旨味成分の多いもの。
同じキムチなのにこんなに違うのかと、日本にいながら改めてキムチの奥深さに舌を巻いている。
逆を言えばそれだけバリエーションに富んでいるということでもあり、自分の好みに合ったものを見つけるのが大変という見方もある。
それをデメリットと感じる人もいるかもしれないが、個人的にはいろいろなキムチが食べられて嬉しいと思ってしまう。
じっくりゆっくりとマイペースに、旅をするように、自分のお気に入りのキムチを探せば良いじゃないか!
そのときはもちろんアルンちゃん、君に道を照らしてもらいながらね。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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