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就活のプロに事務職は向いていないと言われた人間が事務職になり、7年目を迎えた結果


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:hiraco(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「あなたが口を開くと、店頭販売員か、営業しか思い浮かばへんのよね。はっきり言って、事務職では受からへんと思う」
 
短大2回生の冬に、大学の就職課の担当者(以下、Kさん)から言われた言葉に、身も心も凍った。
 
「自分でも何となく分かっているのですが、とりあえず今は事務職希望で進めたいんです」
 
当時、20歳だった私は人生最大のピンチに陥っていた。
卒業まで残り3ヶ月なのに、まだ1社も内定を貰えていないのだ。
 
みんなと一緒にスタートした就活。
周囲は、入社する気がない会社でも「練習のため」と手当たり次第にエントリーシートを送り、面接を受けていった。
それが世の中の常識だと思っていた私に、母が言った。
 
「入社する気がない会社の試験は受けない方がいい。人事担当さんも忙しい中、時間を取ってくれてるのに失礼ちゃう? 自分が同じことされたらどう思う?」
 
たしかにその通りだ。自分が人事採用担当だとして、時間を取って選考し、上司に相談し、内定を出した学生にすぐに辞退されたら、残念だし、時間を返せと思うだろう。
 
母の意見に納得した私は、みんなとは違うルートを選んだ。
自分が入社したいと思った会社の試験だけを受けることにした。
 
しかし、恋焦がれた第一志望に落ちたことで、他の会社に目を向けても、なかなかトキメキがなかった。
 
別に正社員に拘らなくてもいいのではないかと思うようになった。
 
そうして、就活から遠ざかったある日、父と母が同時に体調を崩し寝込んだ。
ただの風邪だったのだが、もし両親に何かあった時、一人っ子の自分がフリーターだったら収入が不安定で、後悔する事態になるかも知れないという不安が襲って来た。
 
居ても立っても居られなくなった私は、泣きながら大学の就職課に駆け込んだ。
 
やりたいことも、入社したい会社も、時間もない私は「正社員、事務職、休みの日は自分の時間を持てる会社」を探すことにした。
とりあえず安定した会社で働きながら、自分のやりたいことを探したいと考えたのだ。
 
自他共に認める劣勢の中、再出発した私は、ある会社の一次試験を受け、無事通過し、最終面接に挑むことになった。
 
就職課のKさんに、一次試験を通過したことを報告すると、相変わらず単刀直入にグサグサと刺された。
 
「え、うそ、ほんま? その会社、実はうちの大学の四年制の子も受けてて、他にも有名大学の人もおったみたいやのに」
 
何の変哲もない短大2回生だと思って舐めてるな。失敬な! と叫びたい気持ちを押し殺し、最終面接の対策をしてもらった。
 
どうやら中学生や高校生の頃の話ではなく、直近の短大生の時に何をしていたのか、という質問が多いらしい。
 
翌日に控えた最終面接に備え、楽しみにしていた成人式の三次会を泣く泣く欠席し、万全の状態で面接に臨んだ。
 
「君、中学生の頃バスケ部の副キャプテンで、約70人の部員をまとめてたの? 凄いね。女子同士のイザコザもあったんじゃない?」
 
ん、あれ?
直近の短大生の話聞かれるんじゃないの?
めちゃくちゃ過去の話ばっか聞かれるやん!
どないなってんねん!
と、Kさんにこれでもかとツッコミを入れながら、5年以上前の記憶を呼び起こした。
 
「君がもし不採用になったとしても、君の人格を否定している訳ではないから気にしないで」
 
終了間際に社長に言われた言葉に、やはり自分は事務職では採用してもらえないんだと思い知らされた。
 
自分の不甲斐なさに打ちひしがれながら、自転車で河川敷を走る。
ペダルを踏んでも踏んでも、全く進んでいない気がした。
 
Kさんが言うように、デパ地下の和菓子屋さんでトップセールスマンを目指すか。などと、自暴自棄になっていたその時、机の上のスマホが鳴った。
 
先程、最終面接を受けた会社から採用の連絡が入った。
まさかの逆転満塁ホームランだ。
こうして、卒業までに滑り込みセーフで事務職を勝ち取った。
 
早速、内定先の会社へ行くと、面接官だった部長から「君には今の事務の雰囲気を変えてほしいと思っている」と言われた。
 
まるで「この世界を変えられるのは君だけだ!」と、急に聖剣を託されて始まるロールプレイングゲームの勇者にでもなったかのような気分になった。
 
つまり、今の事務は雰囲気が悪いということか。どんな雰囲気なのか。
ドキドキしながら社会人生活がスタートした。
 
まさか、はじめの1週間で全てを悟ることになるとは。
 
先輩たちの仲がすこぶる悪い。空気が重すぎる。お葬式ですかと聞きたくなるくらい誰も話さない。まさに暗黒の世界。
 
あぁ、分かってしまった。
なぜ面接の時にやたら中学時代を掘り下げて質問されたのか、なぜ就活のプロに口を開けば販売員か営業しか思い浮かばないと言われるような性格の私が事務職で採用されたのか。
全部、分かってしまった。
 
この暗黒の世界を切り裂く聖剣を持った勇者的な人材がほしかったのか。
それが私だったのか。
 
入社早々訪れた難関過ぎる試練に早速、心が折れそうになった。しかし、路頭に迷う私を救ってもらった恩を返さない訳にはいかない。
 
笑顔で明るく元気に過ごし、皆さんと仲良くすること。
 
このミッション遂行を意識し、死に物狂いで毎日聖剣を振るっているうち、次第に光が射すようになった。
こうして、暗黒時代は終わった。
 
気付けばあの日から、7年の月日が経っていた。
事務に向いていない私と、事務らしくない人材が欲しかった会社。
たまたま需要と供給が一致して、上手くいくこともあるようだ。
 
周囲の人や、その道のプロの言うことが全てではないのかも知れない。
自分次第でどんな状況でも、何とでもなるものだと学んだ。
 
与えられたミッションをこなし、遂にやりたいことを見つけることが出来た私は、これから新たなステージへ旅立とうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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