メディアグランプリ

とあるラーメン屋に出会ってプロの本質を学んだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:那須信寬(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「いやぁ、僕、万人受けするラーメン作れないんですよね」オープンしたてラーメン屋の若き店主はさわやかな笑顔でこう言った。たしかに目の前にはとても万人受けしそうにないラーメンが置かれていた。見たこともない茶色いビーフシチューのようなスープ。そこに極太の麺が大量に入っている。麺を箸ですくうと異様に重い。麺が太いのに加え、スープと麺が異常な程に絡んでいる。スープの色に覆われて麺が茶色に染まっている。
 
なんとか麺を口まで運ぶ。一口食べてその濃さに衝撃を受けた。初めて食べたラーメンの味だ。いや、ラーメン以外でもこんな味食べたことない。
「お味はどうですか?」
「こんな濃厚なラーメン初めて食べました」「まだ試作段階でなかなか味が安定しないんですよ」
なるほど、たしかに濃さなどをもう少し微調整すれば食べやすく進化するかもしれない。味も濃かったが、量もあり食べ終わったあとは正直少しぐったりした。
 
しばらく経ってから、少しは食べやすくなっているかと思いもう一度訪問した。店主は僕のことを覚えてくれていて、「だんだんと味が安定してきたんです!」と以前よりも満面の笑みで言った。
出てきたラーメンの見た目は以前よりも濃くなっているように見えた。まさかと思い一口食べると、前回より濃い!
安定しないと言っていたのは、この濃さが出ないということだったのか。だんだんと安定してきたということはこれからもっと濃くなるのか。それは大変だ。
 
またしばらく経った後、僕の体に異変が起きた。「あのラーメンが食べたい!」もう無性に食べたい。
 
ところがその店は味が安定しないという理由で臨時休業が多かった。食べられないと思うとまたさらに食べたくなった。何度か訪問して、ようやく営業している日があった。すると
「今日は限定のつけ麺がありますよ〜」とオススメされた。あの濃いスープもつける量を調整しながら食べればバランスよく味わえるかもしれないと考えつけ麺を注文した。
 
つけ麺のスープはラーメンのスープよりもさらに濃かった。ヨーグルトくらいの粘度がある気がする。ちょっとだけ麺につけようとしても、大量にスープがついてきてしまう。今まで以上に存分に濃さを味わうことになった。
 
ラーメン店には大きく分けて2つの戦略がある。メジャー戦略とニッチ戦略である。
 
メジャーとは多くの人に好まれるということ。ラーメン屋のメジャー戦略とは多くの人に食べてもらうこと、つまり好きになってくれる人の分母を増やすのが目標だ。そのためには逆に好きじゃないと言われる人を減らさなければならない。多くの人の味覚を考えて、バランスよく老若男女に好まれる味を実現しなければならない。
 
ニッチとは隙間という意味で、ビジネス的には大手が狙わない小規模で見逃されやすい領域のことを言う。ラーメン屋のニッチ戦略とは、初めからみんなに好かれようとはせず、ある一部の人にだけめちゃくちゃ好きになってもらうことが目標だ。そのためには、他のラーメン屋にはない独自の魅力を強く全面に押し出すラーメンを提供しなければならない。
 
この濃いラーメンは明らかにニッチ戦略だ。ニッチなラーメンは一部の人に向けたラーメンだから自分には刺さらない可能性がある。最初は僕も好きになるとは思わなかった。ただ、独自の魅力が徐々に僕の好みにフィットしてきた感じだ。それは美味しいと言われるメジャーなラーメンを食べたときの感動をはるかに上回ってくれた。
 
この店にはそれから何度も足を運んだ。まさにハマってしまった。何度か来てるうちに店主とさらに仲良くなってきて、最初の頃に言っていた話を思い出して聞いてみた。
「前に、万人受けするラーメンが作れないって言ってましたよね? それ、作れないんじゃなくて、作る気ないんじゃないですか?」
「あ〜そうかもしれないですね!」
と笑顔で答えてくれた。
その少しあとで「僕はこの濃さが好きなんです。もしかしたら苦手だって思う人がいるかもしれないけど、僕が一番美味しいと思うラーメンを作りたいんですよね」
 
先日、とあるライティングセミナーで「第一読者は自分である。自分が面白いと思わないものを書いても誰も読まない」と教わった。
 
文章もラーメンもまずは自分が満足するものを提供しなければ良いものはできない。本当のプロとは自分の満足するものをめちゃくちゃこだわって作っている人だということを学んだ。
 
ビジネス的な視点に立って考えると、メジャーなラーメンを提供する方が安定するかもしれない。多くのお客様に喜んでもらえるし、美味しくないと言われる可能性も低い。ただ、これからさらにラーメン屋が増えていき、競争が激しくなると生き残るのが大変かもしれない。これまでは多くの人に好かれるメジャーなラーメンを目指すのがお店にとってもお客にとっても正解だったと思う。でも、これからの時代はニッチなラーメンが主流になって行くのではないか。
 
ニッチなラーメンは誰にも受け入れられず、そのまま消えていくかもしれない。でも、それが好きなお客がいれば、そのお客は感動しファンになる。そんなファンが増えれば、売上だけではなく、多くの喜びに包まれる素敵なお店になると思う。
そんなお店を目指して、日々努力をしている、そんな情熱を持ったラーメン店主がこれからも増えていき、日本のラーメン文化がさらに発展していくことを「1ラーメンファン」として応援していきたい。
 
ただ、最近、そこのラーメン屋は人気になりすぎて、待ち時間が長すぎて困っている。人気になりすぎるのも困りものだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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