メディアグランプリ

ぬいぐるみが開く新しい世界


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記事:林明澄(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
柔らかくて温かくて、触るだけでほっとする。
そんなぬいぐるみが私の日々の癒しだ。ぬいぐるみには魅力が溢れている。
 
私の一人暮らしの家にはスティッチ、おさるのジョージ、ミニーちゃん、ジェラトーニ、こうぺんちゃん、ミニオン、白熊やアザラシ、テディベアなど30を超えるぬいぐるみが住んでいる。彼らの中には、鑑賞用にラックに飾られている子もいるしベッドで抱き枕代わりに使われている子もいる。
 
ぬいぐるみは、見た目と触り心地の両方が非常に重要だ。表情、姿勢、色などのちょっとした違いで印象が大きく変わるため、一目惚れする愛くるしい顔立ちや表情は唯一無二の存在だ。また、触り心地の良いぬいぐるみは、美容院のちょっと高級なトリートメントでさらさらふわふわになった髪の毛のような柔らかさがある。または、ふわふわ綿菓子のようだと言ってもいいかもしれない。
そんなぬいぐるみたちを見たり触ったりしていると、私の頭は“可愛い”という感情でいっぱいになる。
 
ぬいぐるみは私に安心感もくれる。夜眠れないとき、眠る前に不安を感じるときなど、枕元にあるぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。それだけで不安は軽減されて眠りにつける。まるでホットミルクを飲んだ後みたいに。
 
そんな魅力溢れるぬいぐるみだが、私は最近ぬいぐるみに新たな可能性を感じた。それはぬいぐるみが、遠くて理解が難しいものを身近にしてくれるのではないかということだ。
 
私のぬいぐるみコレクションの中には、“皮膚”と“心臓”のぬいぐるみがいる。
 
“皮膚”と”心臓“のぬいぐるみとは、私が4年前にアメリカに留学していた時、当時通っていた大学の購買で出会った。そこには、心臓、胃、腸、膀胱、腎臓など数多くの臓器のぬいぐるみが売られていた。それだけでも驚きだったのだが、その隣にはさらに細かい細胞や細菌、ウイルスなどのぬいぐるみも売られていた。例えば、赤血球や白血球などの血液細胞、神経細胞や抗体、インフルエンザウイルスやアメーバ、ゾウリムシ、黄色ブドウ球菌(皮膚にいる菌)やMRSA(とある抗菌薬に対して耐性を持ってしまった菌)、サルモネラ(生の鶏肉の食中毒の原因)までも。
 
それらすべてはカラフルでとても可愛いかった。皮膚のぬいぐるみは、肌色だけでなく毛には黒、皮膚の下の方の層にはピンクや赤など明るい色が多用されていた。心臓のぬいぐるみは、金色をしている。どちらも、表面には顔が描かれていてにっこりと微笑んでいる。
皮膚には、側面に感覚受容体(触っていることを感知するセンサー)や毛の構造が描かれていた。耐性(薬が効かなくなること)を獲得したMRSAという菌は、いかにも悪そうな茶色の見た目に黒いマントを羽織っていた。
 
そして、それら一つ一つのぬいぐるみのタブにはどんな臓器なのかや病原体なのかも分かりやすく書かれていた。体のどこに位置するかに加えて機能までも。
 
日本でも“君の膵臓を食べたい“など、臓器の名前を模した小説などはあるが、臓器をぬいぐるみにしてしまうという発想には驚いた。
 
私は、自分自身がアトピー性皮膚炎の患者経験があり、今年春から医者になった。
私が患者として医療を受けていたとき、興味はあったものの皮膚の解剖について知る機会はほとんどなかった。そのため、主治医に質問をしても内容が少し難しくなるとついていけなかった。
 
医学部に入学後、皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層からなり、その1番外の層にある分子が外から異物の侵入を防ぐバリアの機能を果たしていることを知った。そして、アトピー性皮膚炎の患者の中には、そのバリア機能に貢献する分子に遺伝子異常がある人がいることを知り、感銘を受けた。
 
医師として働いてみて、このぬいぐるみが体や医療について興味を持ってもらうきっかけになるのではないかと感じている。
 
この半年間、私は医師として診療を行う中で、可能な限り“体の中でどのような変化が起こっていて、今何が必要なのか”を丁寧に説明することを心掛けてきた。そして、分かりやすい言葉で、納得してから治療に望んでもらった方が、積極的に治療に受けてもらえることに気がついた。服薬(飲み薬)や外用(塗り薬)など、治療において患者さんに協力していただくことは多いからだ。
 
今は、”分かりやすい理解”のために、紙に図を書いて説明しているが、そこに可愛さがあればさらに理解しやすくなるかもしれない。一見、難しそうだと感じる病原体や臓器について、ぬいぐるみの可愛いポップなデザインがあれば身近に感じられるのではないかと思う。
 
実際、私がアメリカでぬいぐるみを購入した日、持ち帰ってきたぬいぐるみを見てホームステイ先の小学生の男の子が、「かわいい! 僕も欲しい!」と言った。実は数年前、このぬいぐるみは日本の東急ハンズでも一時的に発売されていたが、中高生などの若者の間で話題となっていた。また、このぬいぐるみは海外でお見舞いとして渡されたりもしているらしい。
 
私は医学部に入るまで医学のことをほとんど知らなかった。けれど、中高生の時にこのぬいぐるみに出会っていたら体に興味を持てていたのではないかと思う。柔らかい雰囲気と温かさを纏うぬいぐるみが、医療関係者でない人も医療に興味を持ったり、体の中で何が起こっているのかを理解したりするきっかけになれば素敵だ。
 
 
 
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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