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美容室は実家だ。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北村早紀(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ごめん、早紀ちゃん。私、お店離れることになったの」
いつも通り担当のスタイリストさんにカットしてもらっているときの話だった。
 
「え! 次はどこ行くんですか?美容師の仕事は続けますよね?」
次のお店に私も行く気まんまんだった。
多少遠くても、片道1時間程度なら我慢できる。
どこでもいいけどカットをお願いし続けたいと思った。
 
「ん? いや、産休で3か月だけだよ。9月25日が予定日でさ。8月いっぱいはお店にいて、12月頭に戻ってくる予定」
 
「あ、すみません。勘違いしてました……。おめでとうございます!確かに、最近ちょっとふくよかになったなあと思っていたんですが、そっか、妊娠ですよね」
 
あまりの驚きに、最初は聞き逃していたのだろう。
カットを担当してくれているスタイリストさんが、産休に入ることになった。
新しい命がこの世に生まれてくる、めちゃくちゃめでたい話だ。
 
でも、あのときの私は100%手放しで喜べなかった。
 
今のスタイリストさんにカットをお願いして、もうすぐ10年になる。
この10年の間に、他の人にカットしてもらったことは一度もない。
ずーっと、同じスタイリストさんだ。
 
10年前の12月、私は21歳で大学卒業を間近に控えていた。
そのころは、最寄り駅から数分のところにある美容院に通っていて、3年近く同じスタイリストさんにカットしてもらっていた。
でも、結婚して地方に引っ越すことになったため、お店を離れるという。
仕方なく、次のスタイリストさんを探すことになった。
 
次の美容院は、都内でアクセスがよいエリアで美容室を探すことにした。
ホットペッパービューティーで表参道をエリア指定し、「ショートカット」で検索して出てきた美容室が、今通っているところである。
 
「こんにちは~、よろしくお願いします!」
とテンション高めに出てきたスタイリストさんは、金髪に近い茶髪ロング、細めの眉毛、やや低めの声で、第一印象は少し怖かった。
 
「いい感じにカットしてくれるといいな……」
 
髪の毛の癖を伝え、そこからカットしてもらい、ブローして終わり。
カット直後もよいが、その後の「持ち」もよい。
何より、気分も上がって自信が持てる。
 
「この人に次もお願いしよう」
そう決めてから、私はベリーショートのときは1か月に1回、そうでないときは1か月半に1回は通っている。
 
「最近、仕事はどう? なんか疲れてそうだけど」
「また次の日曜日から出張なんですよね。次は3週間なので、戻ってきたらもう桜も散っていると思います」
「ひゃ~、3週間ってえぐいね~」
 
最初に入社した会社でかなりストレスのある環境下で仕事していたときも、必ず1か月半に1度は話していた。
だから調子がよい私も、元気がない私も、また精神擦り減って辛かった時期の私も、全部見ている。
だから、1回目の転職が決まったことを報告したとき、一緒に喜んでくれた。
 
「楽しそうなときもあったけど、海外出張もあってハードワークだし、ここ半年ぐらいは相当辛そうだったよ。でも、転職決まったから、晴れやかだね」
私はかなりよく働くので「調子どう?」とか「大丈夫? 身体壊さないでね~」とか、そういう気遣いをしていただいているが、自分でもあのときは酷かったと言える時期も深入りしすぎず、そっと見守ってくれる。
私が言葉にせずとも、表情や話し方等で察知してくれているんじゃないか。
 
「最近、空飛ぶ広報室を久しぶりに観て、そこから逃げ恥観てます。ガッキー祭りです」
「空飛ぶ広報室観すぎじゃない? まあ、2人が結婚したから、逃げ恥を観たくなる気持ちは分かる」
仕事の話もするが、共通の趣味であるドラマについての話題も多い。
 
あとは「Niziプロに今さらハマりました」とか、「NiziUに感化されて、ダンス再開しました」とか、私のちょっとした近況報告だ。
「あの、プロデューサーの人すごいよね、よく観てないけどさ」
どんなくだらない話でも、受け止めてくれる。
だから、私も喋り続けてしまう。
 
コロナで最初の緊急事態宣言が出ている間は、電車ではなく徒歩で向かった。
往復3時間。4月の終わりでなかなか暑い日だった。
電車に乗ることが憚れたが、お店に行きたかった。
「この状況で来てくれてありがとう! もう、キャンセル多いし、新しい予約も少なくてさ~」
「いや、もうこればかりはコロナでも来たかったです」
もちろん、「髪の毛をカットしてもらいたい」とも思っていた。
けれども、生まれて初めての事態だったので、いつものように喋って安心したかったという理由もある。
 
美容院は髪の毛をカットしてもらう空間だ。
でも、私にとってはもうひとつの実家とも言える。
1か月半に1度は必ず向かう場で、そこでは仕事で今悩んでいることや嬉しかったこと、ドラマや好きなアイドルなどの他愛もない話をする。
それが、全て心地よい。
間を持たせるための会話ではなく、全てさらけ出せるのだ。
スタイリストさんも、私がどういう状況かを感じ取ってくれ、悩みが深いところに対してはただただ聞いてくれる。
ドラマなどのライトな話題であれば、強めのレコメンドをしてくれる。
 
だから、安心できる、いつもの1か月半に1度の帰省が崩れてしまうのを私は恐れたのだ。
10年間当たり前のように続けていた帰省が一時できなくなる。
失ってはいないが、帰省できない時期があるからこそ、改めて大切さを感じることができた。
 
つい先日、スタイリストさんから無事に子どもが生まれたという連絡をもらった。
 
それを聞いて嬉しかったし、早く戻ってきてほしいと思った。
 
3か月も空くとなると、話は山積みだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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