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料理嫌いが何とか毎日料理をする方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 春花(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
1、 お湯を沸かす。
2、 「味」の「覇者」と書いて「味覇(ウェイパー)」なる赤い缶に入った調味料を取り出し、適量入れる。
3、 最後に牛乳を入れる。
 
これで「チャンポン」のスープが完成だ。
4玉200円くらいで売っている中華麺を茹で入れ、豚肉や竹輪入りの野菜炒めをどかっと盛ったら完璧。野菜炒めはごま油で炒めると風味もよくなる。
 
なんとなく眺めていた誰かのブログで脳にインプットされ、
「ガラスープ+牛乳?!」
牛乳だと?! と、衝撃を受けたのが、かれこれ10年ほど前。
今ではすっかり、この簡単レシピのお世話になっている。
 
大体、ウェイパーを入れる前はお湯なので、そこに牛乳を投入することが、最初は暴挙としか思えなかった。
なんとなく、アイスカフェオレを飲んだ後の、溶けた氷に乳成分が混ざる感じ、あれを連想させるではないか。
 
本場のチャンポンは鶏ガラや豚骨などでじっくり出汁をとるから、あのように白濁するのであって、牛乳によるインスタント白濁は見た目を寄せるためだと思っていた。
だが、牛乳のコク、うまみ、まろやかさ、それらも牛乳が選ばれる所以なのだ。
 
私は子供が生まれるまでまともに料理をしてこなかった。
18歳で親元を離れたが、ろくに手伝いもせず、母親直伝のレシピも数えるくらいしか体得していない。
そのくせ食べるのが好きで、一人暮らしになるとよく外食をした。その味は到底自分の腕で再現できるものではなく、一層外食に傾倒していった。
食べさせなければならない存在ができ、必要に駆られて料理にちゃんと向き合い始めた。
 
これは私なりの仮説にすぎないのだが、料理は理系の人の方が向いている。
 
私の文系脳では、チャンポンのガラスープに牛乳を混ぜることは、アイスカフェオレの残り汁につながってしまう。
ハンバーグにパン粉と牛乳を入れることも「何かのおまじない?」くらいに思っていた。牛乳は分かるけど、パン粉って……。
イメージで思考をストップさせてしまうのだ。
材料は丸覚えしようとして、いつまでも頭に定着しない。
 
違う違うそうじゃない。
料理は科学なのだ。
全ての材料には科学的な意味がある。
 
分かってはいたが、毎日台所に立つようになった今は、身に染みて分かる。
料理をするときは、意識的に理系脳に切り替えたほうが上手くいく。
 
常識にとらわれない。
材料を物質として捉える。
分量をなめてはいけない。
 
味覚には「甘味」「塩味」「旨味」「苦味」「酸味」の基本となる5種類があって、このうちの3つを満たすと「美味しい味」になるらしい。
私はこれらで美味しい料理を作ってしまえるほどの手練れではないのだが、「代わりのもの」を選ぶときに役立つ。
 
冷蔵庫を開けたら……
「ない。」
スーパーに行ったら……
「ない。」
レシピには○○○って書いてあるけど……
「そんなに使わないから買いたくない。」
料理あるあるだ。
 
そんなとき科学的に考える。
この紹興酒って何のために入れるの?
家には料理酒しかないけど、料理酒とどう違う?
紹興酒には料理酒にはない焦げたようなコクと甘味がある。
じゃあ、八角入れるし、オイスターソース入れるし。
いっか、料理酒で。
 
以上は、私が焼豚を作るときに紹興酒がなかった際の思考回路である。
紹興酒なしでも美味しくできた。
全体の水分量は変えてはいけないのだが、水では代わりにならない。料理酒で甘味、とろみ、旨みはカバーし、紹興酒ほどの深みは出ないが、八角やオイスターソースで奥行きは十分だ。
八角がないとパンチに欠けるので、同じ強い風味を持つカレー粉を入れてみたりするかもしれない。別の料理にはなるが、面白いかもしれない。
 
科学的にも、レシピの本質的にも、きっと正しくないだろう。
ただ、そんな感じで考えるということ。
「ねるねるねるね」のCMの魔女のように、料理を楽しむ。美味しくできたら「テーレッテレー♪」とファンファーレを鳴らしても良い。
結果、全然美味しくもない代物ができてしまうこともあるが、それも家庭料理なら許される。
料理嫌いにとって、一番大切なのは、気負わず楽しく作ることだ。
 
一つ注意点は、分量の「比率」には気を付けたほうがいい。
特に初めて作る料理は、分量を馬鹿にしてはならない。「ねるねるねるね」も混ぜる分量は厳粛に決められている。
目盛り通りに作れば、及第点は取れるのである。慣れてきたら、大体の「比率」だけ覚えて目分量にすればいい。
 
そんな風に料理というのは、私にとってはなんだかんだと神経を使うものだ。なので、週に2回、食材宅配サービスを利用している。献立もお任せ、レシピ通りにカットされた材料を調理すれば、栄養バランスもバッチリの夕ご飯ができる。言われるがまま行動することの、何と楽なことよ。
脳みそは刺激を受けたいかと思えば、放って置かれたがる。
 
マメに料理をするのが根っから好きという人に、私は憧れる。
美味しいものを作ることに、創り出すことに幸せを感じ、一つひとつの台所仕事を慈しむような。
そんな人には理系だの文系だの、全然関係ないと思う。
できれば私もそういう性質で生まれたかったが、残念ながらそうではない。
 
ラジオを聴きながら、YouTubeを見ながら、コーヒーを飲みながら……。
台所を最大限に楽しい空間にして、気分を上げながら包丁を握る。
料理も実験、魔女の帽子を被り、とにかく簡単で美味しいレシピを探求する。
今日は冷蔵庫掃除日と決めて、冷凍食品やレトルトを使って調理をする。
そんな試行錯誤をしても……、実はこれぞという方法がないのが、毎日の炊事の大変さなのだろう。できればすべてサボりたい。
 
付随する片付けとか買い物とか、そういうのも大変なのだ。
だから、私は子供たちが巣立っていったら、きっとまた料理をしない生活になるだろう。
そのころには「グルメテーブルかけ」みたいな便利な道具ができているといいなぁ。
科学者様、ラクして美味しいものが食べたいです!
 
 
 
 
***
 
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2021-10-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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