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中2の息子の引きこもり 私たち親子の21日間の闘い


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記事:南 真一郎(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「もう学校なんか行かん!!」
普段はおとなしく優しい中学2年生の息子が、テーブルを蹴り上げて吠えるように叫んだ。
私は息子がまだ暴れるなら抑え込もうと立ち上がった。が、彼は椅子に座ったまま天井を見上げて、呻くように嗚咽を漏らしていた。初めて見る息子の反抗。彼も、ここまで自分の感情をむき出しにすることは、物心ついてから初めてだった。
 
去年の6月、息子の登校日の朝のこと。
2階の寝室から1階のリビングに降りたら、息子が仏頂面で座っていた。
「学校に行かへんって言うねん」と妻。
「どないしてん、宿題終わってないのはしゃあないから、行くだけ行ってきたらええやん」
それでもずっと黙ったままの息子。何か普段とは違う雰囲気を察した私はしょうもないことで息子を笑わせようとした。
一瞬、頬が緩む息子を見て
「おー笑ったー!」と息子を茶化すように言ったその時である。
息子が吠えながらテーブルを蹴り上げた。
 
その日から約3週間、息子は部屋に閉じこもり食事も口にしなくなった。
私と妻、そして一人息子の彼の3人の闘いの日々が始まることになる。
 
初めての非常事態宣言で彼の学校は4月からこの頃まで自宅待機だった。
本来4月から新学期だが、自宅で山のような宿題をこなすだけの日々。
「もう学校なんか無かったらいいのに」
時々、彼はそう言っていた。今から思えばこれがSOSだった。なぜそのことに気づけなかったんだろう。いや、そもそも中学受験させたことが間違いだったのだろうか?
いや、私は中学は公立で良いと考えていたのに、妻が無理やり受験に持っていった。でも、妻を責めるよりも夫婦の気持ちがズレていたことがダメだったんじゃないのか?
そうだ。これは私の生き方の課題を息子が代わりに見せてくれているのか。では、どうすればいい? どうしたら息子の笑顔が見れる? 息子と一緒に食事ができる?
 
答えが全くない日々が続いた。終日、息子といる妻はみるみるやつれていった。
 
ある日のこと。私は息子と話したいと思って彼の部屋に入った。いつものように彼は布団をかぶって顔を隠そうとした。その時、彼の手の中からスマホが床に落ちてしまった。私が拾い上げると、私の手からスマホを奪い返そうとする息子。取り上げるつもりはなかったが私は、息子の手を払いのけた。悲しいくらいに弱々しい息子の腕の力。
無理もない。2週間近く水しか飲んでないのだ。私の手に息子のスマホが残った。
これで何か変わるかもと楽観的な希望も少しはあった。
 
数日後、妻から見せられた息子からのメモには、こう書かれていた。
「けいたいかえしてくれるまで 水ものまない」
実際、ここ数日間、彼は水も飲まなくなっていた。妻は泣きながら、
「命より尊いものはない。今すぐスマホを返してあげて」
私の胸を叩きながら、そう言った。
 
私は息子が引きこもりと不登校が始まってから、初めて息子に猛烈な怒りを覚えた。
それまでは、自分に責任があると感じていた。しかし、これは違う。これは駆け引きだ。
息子は分かっている。親である私たちにとって自分の命ほど大切なものはないと。
分かっていて、自分の命を駆け引きに使おうとしている。
 
妻は私の異変を感じて2階の部屋に向かおうとする私を止めた。腕を引っ張る妻の手を振り払って私は息子の部屋に入った。
 
「話がしたい」
きっと相手にされないだろうと思っていたが、いつもは布団をかぶる息子がベットの上でむくっと起き上がってこっちを見た。驚くほど痩せこけた息子の頰に悲しくなった。
「ほら、ここにお前のスマホがある。返す前にパパはお前を話したい」
こくっと頷く息子。
「これから、1つだけ約束をしてくれ。命を粗末にするな。お前はメシも食べない。水も飲まない。これでパパやママが自分の思い通りになると分かって、このメモを書いたやろ。
お前が生まれた時、どれだけ俺たちが嬉しかったかわかるか。そして、お前がやってることがどれだけ卑怯なことか、わかるか。学校なんかどうでも良い。命を粗末にすることはやめろ」
「分かった」
久しぶりに聞く息子の声は思春期のせいか少し太くなっていた。
「明日からメシを食べろ、水も飲め。そして、これからどうしたいのかをちゃんと言葉にして言ってくれ。今のお前がお前の感じていることを言葉にすることが、お前の未来を作ることになる」
「学校、行きたくない」
「行きたくない理由は? 言いたくないならそう言えばいい。それも言葉にすることになる」
「言いたくない」
黙る息子の目から大粒の涙がボロボロこぼれてきた。
 
「あのな、骨が折れたら安静にせな元気になれへん。それは心も一緒や。俺はお前の心が傷ついたんやと思う。なんで行きたくないかは聞かへん。お前の心の傷が癒えるまで、家におったらええ」
頷く息子。涙で顔がくしゃくしゃになっている、いつの間にか私も泣いていた。
「でもな、俺、お前は偉いと思う。俺は親に内緒でコソコソ学校サボってた。お前は堂々と学校に行かへんと言って行ってない。それに初めてやん。パパやママの言う通りにせずに
自分のしたいことを、ここまでやるなんて」
 
その翌日から息子は食事を普通にとるようになった、しかも以前を同じようにリビングで家族一緒に。あの時、しっかりと息子と向き合えて本当に良かったと思う。
そして、今、変わらず不登校ながら高校受験への勉強を進めている息子と一緒に風呂に入ることは、私の1日の楽しみの1つである。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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