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呼吸を忘れた場所は、書店でした


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:古山有則(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
思わず、大きな息を吸いました。
呼吸をすることで、止まっていた時間が動き出し、周りを見渡してみると、そこには本が置かれています。
呼吸を忘れた場所は、書店でした。
 
呼吸を忘れた原因は、手に取った本に
「人生のおまけとして睡眠があるのではなく、睡眠こそが人生の中心だ」と書かれていたからです。
この文章を読んだとき、私の人生のすべてが否定された気持ちになりました。
なぜなら、今までの私は、睡眠をなるべく削ろうと思っていたからです。
当時の私は大学院2年生で、授業、資格の取得、論文執筆で、朝7時に研究室に入り、夜22時に研究室を出る忙しさでした。努力をしても、結果が奮わず、睡眠時間を削って時間を捻出していたんです。
 
「もっと時間をつくらないといけない」
 
と焦っていた私は、睡眠時間を4時間以下にして、体に鞭を打つことにしました。
睡眠時間を減らした結果、時間を生み出し、ギリギリ日々の課題を終わらせることができるようになりました。
睡眠をしている時間は、一旦すべてが休止してしまいます。
手を動かさなければ、課題も終わりません。
私にとっての睡眠は、課題から逃げる選択の1つです。
睡眠時間は、減らせるものなら、完全にゼロにしたいものでした。
「睡眠を減らしたい」と思っていたので、
本に書かれている「睡眠こそが人生の中心」というメッセージに、私自身を完全否定されたと思ってしまったのです。
 
「いやいや、そんなことないし」
「睡眠時間を増やすなんて無理だし」
 
と思った私は、誰が書いた、どんな本か確認すると、
表紙には、千田琢哉「人生の勝負は朝で決まる」と書かれていました。
今まで本をあまり読んだことがなかったので、この人が誰かは知りません。
誰かは知りませんが、自分を否定されて黙っているわけにもいかず、この人の意見を聞き、反対しようと思い、本を読み進めていくと、
 
「早起きこそが成功の秘訣なら、新聞配達の人たちは全員大富豪になっている」
「始業時刻までに、『やらなければならないこと』を終わらせる」
「睡魔と闘った6時間の勉強は、熟睡したあとの3時間の勉強に遠く及ばない」
 
など、今までの私の価値観からかけ離れすぎる発想に、否定や批判が一切できないどころか、むしろ、この人のことをもっと知りたいとまで、惚れ込んでしまったのです。
 
今までの自分に結果が出なかった理由は、睡眠に問題があることに気づきました。
睡眠時間を削り、常に眠さを感じていて、何をやるにも集中力が散漫になっていたのです。
成績が良い友人も「眠いまま何をやっても意味ないでしょ」と言っていたことも、ふと思い出しました。
友人が言ったときは「努力した分だけ、力になるに決まっているじゃん」と思っていましたが、本書を読むと、いかに自分が間違った努力をしていたかを思い知りました。
 
この本は、右ページに短めの言葉が書かれているので、スイスイ読み進めることができます。
数十分の間に、書籍の3分の1程度読んでしまっていました。
この「数十分の間に、書籍の3分の1程度を読んでしまった」という出来事が私の人生を変えてしまう、大きな勘違いを生むことになります。
 
今までの私は読書に関してコンプレックスを抱えていました。
ずっと「本を読みたいな」と思っていても、いざ読んでみると途中で投げ出してしまっていたのです。
読書をすることは、中途半端な自分が露呈されることだと思い、避けていました。
なので、本を読むことは興味を持っていても触れられないことです。
 
書店に私がいたのも、偶然でした。
親の迎えを駅で待っていて、いつもは書店には行かないのですが、道が渋滞しており、30分以上の空白の時間があったのです。
 
「文房具か漫画でも見ようかな」
 
とピンときて書店にふらっと立ち寄りました。
偶然に寄った書店で、たまたま目に入った本が読めたことで、
 
「私は、気づかないうちに本を読めるようになったんだ」
 
と勘違いしてしまったのです。
読書に対する自信がついてしまったことで、もう途中で挫折しないと思い、書籍を購入し、残りを1時間で読破しました。
 
読破できたことで、さらに自信がつき、この本を書いた「千田さん」のことの発想をもっと知りたいと、惚れ込んでしまったのです。
当時の時点でも、千田さんは累計100冊以上の本を出版されており、すべての本を読むように読書をスタートしました。
その日を境に、私は全く本を読まなかった人生から、365日本を読む人生に変化していったのです。
本書がきっかけで、毎日のように本を読むようになっただけではなく、睡眠時間をできる限りとるように心がけています。
この記事も、たっぷり昼寝をし、集中力が高い状態で書くことができました。
呼吸を忘れてしまうような出会いを求めて、私は今日も書店に足を運んでいます。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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