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あなたの歯周病が、ご近所さんも巻き添いにする?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:福田 乃子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ねぇ、この歯がグラグラするんだけど……」
 
これは20年前の話になる。
歯科衛生士になったばかりの私に、母が私にそう話しかけてきた。
自分の左の下の歯を、指でグラグラと動かしていた。
昔にかぶせた銀歯が動くのが気になるらしい。
痛みはないようだ。ただ食事中に噛むとその歯が動くらしく、噛みにくいのが気になったらしい。
 
「痛くないの?」
「痛くない。ただ噛みにくいのよ」
「むし歯じゃなさそうだね」
「それなら大丈夫かな?」
 
痛みが無いので、行かなくてもいいのではないか?
母はそんなことを口にしていた。
 
「歯が動くなんて良くないよ。一度診てもらったほうがいい」
 
私のその言葉で、母は歯科医院に受診することを決めたのだった。
 
 
後日、歯科医院で診てもらった母が、私にこう言ってきた。
 
「むし歯じゃなかった。でも歯槽膿漏って言われたよ」
 
「歯槽膿漏」は今では「歯周病」と言われている。
「歯周病」は、日本国民の8割以上が罹っているとされる。
私の母もその例外ではなく、「歯周病」という診断を下されたようだ。
 
「この歯はもうダメだから、抜かないといけないんだって先生に言われたわ」
「え、そんなに悪くなっていたの?」
「歯茎が弱っているんだって。だからもう長く持たないって説明されたよ」
 
結局、後日母はそのグラグラとしていた歯を抜いた。
母と歯周病との戦いは、この日から始まったのだった。
 
 
「歯周病」
 
歯周病の説明をしようとすると、かなりの高確率が返ってくる言葉がある。
 
「あぁ、歯が伸びてくる病気だよね!」
 
「歯周病=歯が伸びてくる病気」と思われている。
もしくは、「歯茎が痩せてくる病気」と言う人も多い。
実際に患者さんからそう言われた経験はかなり多い。
 
「歯茎が痩せて、歯が伸びてきて、歯が長く見えるから、格好が悪い」
 
そう考えている人がほとんどなのだ。今でも、昔でも。
だが、この病気の怖いところは、こんな「見た目」の問題では無い。
 
 
「今朝、はみがきしていたら、歯が抜けてしまった。だからくっつけて欲しい」
 
実際にそう言って歯科医院にやってくる人はいる。
根っこの先まできれいにスルッと抜けている歯を握りしめて。
 
ガムを噛んでいて、それにくっついてはずれた銀歯なら、専用の接着剤を使用して付け直すことができる事が多い。
だからそれと同じ感覚で、抜けた歯を持ってくるのだ。
また元通りにくっつけてくれると信じて疑わずに。
 
だが、結論から言うと、抜けてしまった歯はくっつけることができない。
もう「抜けている」歯は、また植えることができないからだ。
 
そう、「歯周病」の末路は、「抜けてしまう」ことなのだ。
 
 
だが、この歯はどこから「抜けてしまう」のだろうか?
 
実はこの質問をすると、ほとんどの人が「歯茎」と答える。
歯茎が弱って、ぐじゅぐじゅと傷んでしまったので、抜けてしまった、と。
 
しかし、実際はそうではない。
弱って傷んでしまったのは、「歯茎だけ」ではない。
弱った結果、その歯茎の下にある「顎の骨」から抜けてしまうのが正解だ。
顎の骨が傷んで、腐って、溶けてしまったことで、歯を支えられなくなったのだ。
 
 
人間誰しも、目に見えないものは「存在しない」と考える事が多い。
歯茎の下にいるはずの、顎の骨の存在に気付かない人がほとんどなのだ。
 
だから、私の母だけでなく、大多数の患者さんもそうだが、歯周病で弱ったのは「歯茎」だけだと考えていた。
顎の骨をカバーしている「歯茎」のみ見えているので、その部分だけに起きている問題だと思ってしまった。
 
 
病気と考えるのが難しいなら、「家」で例えてみるとわかりやすい。
あなたの大事な歯が「家」となると、歯周病菌は「シロアリ」のようなもの。
 
見た目もおしゃれで、誰もが羨むような有名建築家がデザインしたような家屋。
でも、その土台の基礎の部分に、もし超強力なシロアリが集まってきていたとしたら……?
 
シロアリ達は特に騒ぎ立てることなく、静かに着実に家の基礎の部分を蝕んでいく。
家で一番大事な部分である土台を、確実に。
すると、ある程度限界を超えた時に、土台はその家の重みに耐えられず、家は崩れ落ちることになるのだ。
せっかくのオシャレな家も台無しになるのだ。
 
そしてその増えきったシロアリ達は、今度は近隣の家まで襲いかかる可能性が高くなるかもしれない。
 
つまりは、自分の家だけでなく、ご近所さんも巻き込んだ、地域全体の崩壊を招きかねないのである。
 
 
 
「あ、歯医者さんからハガキが来たわ。定期検診の時期なのね」
 
母は歯を抜いてから、人が変わったように歯磨きをしっかりとするようになった。
自分の大事な歯を守るため、シロアリの駆除を毎日自分でやるようになった。
 
だが「歯周病」は無くなってはいない。
歯周病菌は歯周ポケットの奥底で、機会を伺いながら、静かに仲間を増やしている。
それを駆除するために、歯医者の定期検診で自分では取れないところを清掃してもらいに、今でも真面目に通っているのだ。
 
 
そして、歯医者で働いている、歯科衛生士の私に、こうも語りかけてくる。
まるで自分が歯科の専門家であるかのように。
 
 
「歯は無くなってから大事さがわかる。だからあなたも定期検診に行きなさいよ」
 
 
今、あなたの口の中に、本当に歯周病菌はいませんか?
あなたの見えないところで、着実に増えてはいませんか?
 
自信を持てないならば、早め早めの歯科医院への受診がオススメですよ!
 
 
 
 
***
 
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2021-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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