メディアグランプリ

犬嫌いだった私にポメラニアンが教えてくれた大切なこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ねむりじぞう(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「キャン キャン キャン」
 
毎朝、私は通勤時に犬に吠えられている。
犬の名前はジョン。私が勝手に名付けた名前。体は小さいが、真っ白でふさふさしたゴージャスな毛並みのポメラニアンだ。
 
ジョンは、50年前から建っているような古い大きな一軒家の庭の片隅で暮らしている。昔ながらの木製の小さな犬小屋を住処としている。柴犬やブルドッグでさえ家の中で家族のように飼う人が増えている中、ポメラニアンを屋外で飼うというのは最近ではとても珍しく感じた。
 
来る日も来る日も、朝、私はジョンに吠えられる。
 
「キャン キャン キャン」
「なんやお前! こっち来んな!」なのか、「こっち見んな! ボケッ!」なのだろうか。一体ジョンは私に何を訴えているのだろうか。私には想像がつかなかった……。
 
 
子供の頃、私は犬が苦手だった。
 
まだ小学校低学年の頃だったろうか? 両親に連れられて東京の街を歩いているとき、道端に鎖で繋がれた大きなドーベルマンがいた。警察犬みたいなやつだ。手をつないでくれていた父がその横を通り過ぎようとしたその時、私はドーベルマンと目があってしまった!
 
「ガルルゥ~! バゥアゥ! ガゥアゥ! ガゥバゥ~~!!」
 
激しい剣幕で、まるで散弾銃で打ち込んで来るような勢いで私に吠え続ける!
私は震え上がってしまい、その場から一歩も動けなくなってしまった。どんなに父が手を強く引いても、私は前に進むことが出来なかった。私につられたのか、母も半べそだったように記憶している。
そのときは結局、一旦退散し、別の道を遠回りして目的の店へ向かったのだった……。
 
 
中学生の頃キャンプへ行った時には、私たち家族がテントを設営していると、近くに見知らぬ家族がやってきてキャンプの準備を始めた。その家族はコリー犬を連れていた。
「何もこんなところでキャンプしなくても……」と思ったのだが、父は全く気にしない。私は仕方なく、コリーにできるだけ目を合わせないよう細心の注意を払いながら、夕飯のカレー作りを楽しんだのだった。
カレーが出来上がり、飯ごうで焚き上げたご飯を蒸らしている時だったろうか。私の耳元で妙な鼻息が聞こえた。
……。
私は息をのみ、全身を硬直させ、目玉だけをそろりそろりと鼻息をするほうに向けた。
「クゥ~ン クゥ~ン」
……。
ギャぁぁぁぁぁぁぁ~~!!!
 
私は大きな叫び声をあげて、その場から猛ダッシュで逃げ出した!!
 
「ワン!」
キャンプ場をぬけ、つつじの生け垣を飛び越えてテニスコートを走り抜けた。
「ワン! ワン!」
テニスコートの奥の生け垣も飛び越え、さらにその先の林の中へ……。
「ワン! ワン! ワン!」
まだまだ走り続ける。
と、その先で急に視界が開けるのが見えた!
うわぁ!!
何と林の先は崖になっていた。ギリギリのところで転落は避けられたのだが、犬はすぐそこまで迫っている!
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
どうする? 逃げ場はない……。
 
私は意を決して振り返り、再び大きな声を上げた。
 
おりゃ~~ぁぁ~~!!
そう! 私は犬と戦うことを決意したのだ!
迫りくるコリー犬。
「ワン! ワン! ワン!」
もう私は逃げない。戦うのだ!!
私はこぶしを握り締めて身構え、その時に備えた。
そして大きな声を上げて威嚇した。
おりゃ~~ぁ~~!!
「ワン! キャン! ク~ン ク~ン」
!?
 
何故だろう。突然、犬の勢いが少しだけ収まった。負けを認めたのか? 私は勝ったのか? いやいや、まだ油断はできない。
おらぁ~!
「ク~ン ク~ン」
おらぁ~!
「ク~ン ク~ン」
睨み合いは続く。
 
その時だった。ぜえぜえ言いながらコリー犬の飼い主がこちらに走ってきた。
 
「こらっ ジョン! やめなさい!」
 
こうして、本格的な戦いはどうにか回避することができたのだった……。
 
 
このような恐怖体験を何度も経験することで、とりあえず私は犬を見ても動じないようにはなった。しかし、今でも犬と目が合うと吠えられることは多い(ように感じる)。
 
いったい彼らは私に何を訴えているのだろうか?
 
あれこれと悩みながら週末テレビを見ていたところ、夜、とあるドラマが始まった。結果が出ない新人女性騎手が地方競馬の冴えない厩舎で再起を目指すというストーリーのようだ。そのドラマの中で「人馬一体」という言葉が出てきたのだが、この四文字熟語を聞いた瞬間、「これだっ!」と閃いたことがあった。
 
馬は言葉はしゃべれないけれど、目の前にいる人の感情を敏感に感じ取ることができる、ということを聞いたことがあった。ドラマでも同じようなセリフが語られていた。
騎手が馬のことを怖がっていると、馬も緊張して警戒する。その結果、馬はその騎手が乗ることを嫌がるのだそうだ。動物は、本能的に目の前にいる相手の心情を察知することで、自分自身を守る術を身につけているのかもしれない。
 
私は、犬を見ると緊張する。今では表情は変えなくなったけれども、やっぱりどこか身構える意識が働いてしまうのだ。犬たちはそれを感じ取って、警戒して私に吠えていたのかもしれない。私が、表面上だけではなく、心の中から犬のことを愛おしく思う気持ちで接すれば、犬たちも表情を変えてくれるかもしれない。
私は今すぐには変われないかもしれない。けれど、少しずつでもいいから犬に優しい気持ちで接するよう心がけてみよう! そうすれば、いつかドーベルマンが私に微笑んでくれる日が来るかもしれない。
馬だって、犬だって、人間だって一緒だ。これからはできるだけ明るく優しい気持ちで、周りの人たちに接してみよう。そうすれば、これからの人生が今よりもっと楽しくなるかもしれないから……。
 
そして、翌朝。
 
「キャン! キャン! キャン!」
私にはこう聞こえた。
 
「おはよう! また会えたね! 今日も頑張れよ!」
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2021-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事