人は欠点で愛される
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:須賀泉水(ライティング・ゼミ10月コース)
あなたの周りにも一人や二人はいませんか?
とんでもなく絵が下手な人。
もしもあなた自身がそうだったら、私の仲間。
今まで恥ずかしい思いや嫌な思いを、幾度となくされてきたことと思います。
私はとにかく、ものすごく、恐ろしく、絵が下手です。
子どもの頃からノートに落書きをすることもなければ、お友達に出す年賀状にイラストを描いたこともありません。そんなことをしたら、笑われて恥ずかしい思いをするだけだから。
笑われてしまうので、必要に迫られない限り、文字と数字以外を書くことを避けて生きてきました。でも小中学校とは残酷なもので、そんな子どもにも容赦なく絵を描かせます。そして点数まで付けられます。
授業のお題である自画像を書きあげたときは、その出来がひどすぎて「ふざけるな!」と先生に怒られたこともあります。もちろんふざけたわけではありません。下手が過ぎただけです。何も言い返せず、歯が削れそうなほど奥歯をかみしめて涙をこらえていたことは、昨日のことのように思い出せます。
絵が下手な人が苦手とするものの代表が、人の顔、4本足の動物、ミッキーマウスを書くことなのではないかと思っています。
ゴールデンレトリーバー描いて! などと言われると、それだけでその人のことが少しだけ嫌いになったものです。
こんな私が、自分の絵に対して考え方が大きく変わる出来事がありました。
気心知れた友人たち数人で、あるレストランで食事をしていた時のことです。
そのレストランは大きな模造紙をクロス代わりにしていて、「落書きどうぞ」と、テーブルの上にペンが用意されていました。
これなら食べこぼしても模造紙を交換すれば済む。いいアイデアだなーなどと思っていたら、皆ペンを手に取り落書きを始めました。
「お料理来るまでにテーブルクロスを可愛くしようよ!」なんてシャレたことを言いながら。
私は友人らが楽しそうに絵を描くところを見ていました。
みんなは、私が絵にコンプレックスを持っていることを知りません。
「泉水ちゃん、書かないの?」
「うん、書かない」
「なんで? 書いちゃいけないところに落書きしているみたいですっごく楽しいよ!」
「絵、苦手なのよ」
「ただの落書き! 気にせず書こうよ。ミッキーマウスとか描いてみたら?」
出た……書かされるのが嫌なもの、トップスリーの中から十何年かぶりの絵を描くなんて。
でもまあ、彼女たちになら笑われてもそこまでへこまないかな。
そう思ってペンを取り、ミッキーマウスってどんなだっけ? と記憶をたどりながら描き始めました。
絵が苦手なだけに、ゆっくり書いたとてうまくは書けないので、逆に筆に迷いはありません。あっという間に書き終えてペンを置いたところ、全員の目が私の絵にくぎ付けになりました。
「ちょっと! なにこれ! ミッキーってひげ生えてないよ!」
「最高なんだけど! すごい破壊力!」
「一周回って天才画伯だよ!」
私が書いたミッキーもどきを指さし楽しそうに笑う友人たちからは、私を馬鹿にしている空気は感じられません。
あれ? 笑われているというよりも、笑わせてあげたような気分かも。私までなんだかとても楽しい。
その時ふと浮かんだ言葉があります。
モデルのローラが以前SNSで呟いていて、どういう意味だろう? と心に引っかかっていた言葉。
【人は欠点で愛される】
今まで隠し続けていた、欠点と言えるほど苦手な絵。
苦手意識しかなかったけれど、さらけ出せばそこには「楽しい」や、「嬉しい」気持ちが生まれるのかもしれない。ふとそう思えたのでした。
あの時描いたミッキーマウスもどきの絵。
やたら気に入ってくれた友人がそれを写真に撮り、ユニクロに持ち込み、なんとTシャツになってしまいました。
オリジナルのデザインをTシャツにしてくれるサービスでは、有名キャラクターは著作権の侵害にあたるとしてNGのはず。そこをすり抜けるミッキーマウスを書いた私は天才だと、絶賛までしてくれました。
食べこぼしのシミごとTシャツになった私の絵。誰に見せても、「全然違うのにミッキーにしか見えない」と大好評? です。
この一件以来、私は自分の絵を、人を笑わせることができる武器だと思えるようになりました。頼まれなくても自ら絵を披露しては、私の欠点を愛してもらい、子どもの頃に感じた悔しく悲しい記憶を、楽しい気持ちに上書きしています。
友人の子どもに頼まれてドラえもんを書いた時に、「これドラえもんじゃないぃぃぃ! こわいよぉぉぉ!」と泣かせたことはちょっと反省。
でも、みんなを笑顔にしたいために。
この欠点を愛してもらっていることを実感したいために。
私は絵を描き続けています。
描く機会が増えて上達してしまうことを恐れていますが、今のところその兆しは見えません。
***
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