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メディアグランプリ

長崎の夜は、いつも長い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三武亮子(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
長崎好きが高じて、東京から長崎県南部にある島原半年に移り住んで3年と半年。月に一度、車で1時間のところにある長崎の町に遊びに行くのが、今でも生活のルーティン。
 
ぶらぶらとあてもなく歩き、疲れたら座り、お腹が空いたら何か食べる。情緒ある町並みと、小さな空間にひしめき合うように立ち並ぶ店たちが、そういう気ままな時間を叶えてくれる。
 
昼間の散歩だけでは飽き足らず、数ヶ月に一度は長崎の町に泊まって、長崎の夜を堪能するのが相変わらずの愉しみでもある。
 
夜道をふらりと歩く。
 
お酒を飲んでも「歩いて帰れる」という当たり前が、車社会によって非日常になった今、その自由さ、気楽さを味わえるのも嬉しい。特に、風情ある町並みが夜に見せる表情というのは、昼間とは異なり、どこか妖艶で秘密めいているように感じるから、なおそそられるのだ。
 
この日は、昼間、長いこと気になっていた「珈琲人町」に立ち寄ることが大きな目的。風情あるししとき川通りに建つコーヒースタンド。自家焙煎の豆をサイフォンで抽出し、オリジナル陶器でコーヒーを提供してくれる。この店は、店主自ら現地で仕入れた豆を使う、ブレンドやカフェオレ、水出しアイスコーヒー、季節のコーヒーを提供している。「コーヒーにも季節があるんだ」と、まだコーヒー初級者のワタシが、コーヒーに親近感を覚えた瞬間だった。
 
お茶派のワタシにとってコーヒーは身近なモノではなく、人が丹精込めて入れてくれる「特別な」飲み物。人がコーヒーを入れる時の、「一球入魂」のような厳かな空気が、その場に流れるのがたまらなく好きなのだ。
 
小さな店内は、ウッド調のシンプルな作りで、客をそっと迎え入れてくれる温かみがある。座席はなく、カウンターのみ。「このシンプルな作りは、丹精込めて誂えたコーヒーに意識がいく配慮によるものなんだろか?」と思うほどに、コーヒーの香りと店が醸す世界に誘われる。
 
そんなコーヒーの世界に浸っていたら、店に置かれている長崎発の総合エリア情報誌『樂』が目に止まった。特集は「長崎珈琲事情」。密かに気になっていた記事だ。
 
早速『樂』を片手にコーヒーを頂く。そこには、「コーヒー道は 茶の湯の道に通じる」と、長年、長崎で喫茶店を経営するマスターのコーヒー道の極意が綴られている。
 
「コーヒーと茶の湯」が並列になるという発想が、とても斬新だと思った。その意味するところは、空間を整え、定位置に物を置き、流れるような所作で客をもてなす。その「型」が、まさに茶道の世界なのだと。
 
ワタシがコーヒーに感じた「厳かさ」は、そこに通じていたのか。コーヒーの世界というよりも、「日本人の精神性」に美しさを見たのかもしれない。
もっとゆっくりとコーヒーの世界に浸っていたかったのだが、あいにく、器が空になってしまったので、後ろ髪ひかれる思いで店をあとにし宿に向かった。
 
宿の部屋に入ると、さきほどの『樂』が、待ってましたとばかりにキャビネットの上で出迎えてくれた。店で読み終えられなかった「樂」の続きを、滞在先のお宿で読む。
 
なんという巡り合わせ。
 
すると今度は、「あ、珈琲人町だ」。偶然にも、昼間訪ねた「珈琲人町」の取材記事が、掲載されていた。「あの空間を創る人は、どんな人なのだろうか?」というワタシの疑問に早速応えてくれる運びとなった。
 
この日、お会いすることが叶わなかった店主の想いやお人柄を、活字と写真を通して感じる時間というのも乙なものだと、一人悦に入る。
 
その後も「摩訶不思議な」コーヒーの世界に魅せられ、雑誌を読み進める。そこには、コーヒーと長崎の関わりの歴史が、詳細に記されていた。
 
世界で最初のコーヒー商人であるオランダ人が、日本に初めてにコーヒーを伝えたという説が最も確信性があるといいう。一方で、世界初と言われる「株式会社」オランダ東インド会社の商館が、平戸から出島に移転したのに伴い、長崎の出島にコーヒーが伝わったとも考えられるという説もある。
 
いずれも、はっきりした文献や記録が残っていないという、なんとミステリアスな展開なのだろう。そして、情報の断片を並べて立てた仮説というのも謎解きをしているようで、妙にこころ惹かれる。
 
さらに、紅毛人たちが、江戸時代、日本の窓口として唯一世界に開かれていた出島の商館で、自国を思いながら嗜んでいたであろうコーヒーの時間や、日本の「最先端の地」長崎でふれた異国の空間で何を思ったのだろう……と妄想が始まる。
 
青い目をした異人さんが持ち込んだ見慣れぬ豆をひいて、飲み物として味わっていた長崎の人たちは、どんな思いで「世界」に触れていたのだろう……。
そう思って調べてみると、当時の長崎の人たちは、コーヒーを好んで飲んではいなかったという史実が残っている。蘭学医のシーボルトが、「日本人にコーヒーは、身体によい、ということを強調すれば、飲むのではないか」と言うほど、受け入れられていなかったようだ。
 
めずらしもの好きの現代の日本人からは想像もつかない事実に、少々腰砕けな感が否めない。
 
とはいえ、やはり日本で初めてコーヒー文化を味わった「世界の窓口」長崎から日本にコーヒーが広まり、現代のコーヒー文化にまで昇華した過程を妄想したら、わくわくしてきて、眠れなくなってしまった。
 
「コーヒー道は茶道の精神」とか、長崎にコーヒーが伝わった仮説が面白すぎる。『樂』を抱え、部屋の窓に目を向け暗がりに映る長崎の港、その向こうに広がる夜景を眺めながら、なおも妄想は続く。
 
この地で過ごす夜の時間は、毎回、どこかの誰かの歴史絵巻を見せられているような
そんな錯覚に陥るから不思議だ。
 
目を閉じてしまったら、夢から醒めてしまいそうで、もったいなくて眠りにつけない。
今宵もまた、長崎の先人たちとのおしゃべりに花が咲いた。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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