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言葉を伝えたからといって、同じ気持ちとして伝わるとは限らない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:マダムレイコ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「おお~い。ひろげるな~」
 
 
寒空の中、響く声。
 
「おいおい。ひろげるな」
「いやいや。だから!! ひろげるんだよ!!!」
 
 
最近、我が家の周りは建売住宅の建設ラッシュ。
 
どうやら、声の主は、
向かい側で建て始めている建設現場の棟梁か。
 
 
「もう!! 言ったことやってくれよ!!!」
 
 
半ば、投げやりのような言葉を投げている。
 
洗濯物を干そうと外に出た私は、
「おいおい、広げるなっていったのに、広げろって、わけわからんね」
と心の中で呟きながら、言葉を投げられた若者に理不尽だよね~と心を寄せた。
 
 
あれ。
 
ひろげるなって。
ひろげるぞって言いたかったのか?
 
 
「〇〇するね」を「〇〇するな」と年配の男性が時折使う方言が頭をよぎった。
 
 
きっと若者には 「ひろげるぞ」が「ひろげるな」なんて、
伝わっていないのだろう。
 
それは、声が流れてきた私だってそう。
 
 
方言は、その土地それぞれの文化。
 
 
時に、ひとの心を通わせる温かさにもなるけど、
今回は、どうやら、二人の心を誤解に導いたようだ。
 
 
言葉がもたらす、
試練と分かち合う、伝え合うことを大切さを、
なぜか私は愛おしく感じ、二人を温かく見つめてしまった。
 
棟梁は自分の言葉に言うことを聞かない若者に苛立ちを感じ、
若者は棟梁の言葉通りに動いたにもかかわらず理不尽な苛立ちに戸惑う。
 
 
 
「今どきの若者は怒ると、さっさと仕事辞めちまうからな。怒っちゃいけねえ」
 
棟梁の心の声が聞こえてきたような気がした。
きっと、棟梁は、今夜の晩酌にでも「いまどきの若者はさあ~」と酒の肴にするのだろう。
 
 
しばらく、じっとしていた若者をみて、棟梁は「広げるぞ」とつぶやき、
二人は作業を始めた。
 
 
若者は、何を思っていたのだろう。
 
 
彼は、何も言わず黙々と棟梁の後を付いていった。
 
 
人は言葉を使い、自分の気持ちを伝え合う。
 
気持ちを言葉にするもの大切だが、
相手と同じ気持ちの言葉で受け止めるのも、
またひとつの至難だ。
 
言葉が織りなす人との関係は、
気持ちが伝われば、とても優美な時間を作り出せるのに、
同じ言葉でも、気持ちが伝わり合えなければ、
諍いや誤解が生まれてしまうのか。
 
言葉とは便利のようで、
とても難しい。
 
 
でも、私たちは、
言葉を紡ぐことをやめられない。
 
 
言葉がない世界で、私たちは、
どうやって気持ちを伝え合うのだろうか?
 
例えば、言葉というものを使わずに
100%心が伝わる世の中だったら?
 
棟梁の苛立ちが若者に伝わり、
若者の理不尽に対する怒りが伝わり合う。
 
いがみ合い、感情のぶつけ合いになって
しまうのではないのだろうか?
 
いや、そのまえに「広げてほしい」が伝わるから、
お互いの「苛立ち」の感情は生まれないのだろうか?
 
いやいや、誤解は生まれなくなるかもしれないが、
「疲れたな」「面倒だな」と
ふと頭にもたげてくる気持ちが伝わってしまう。
さすがにそれはお互いに知られたくない感情だろう。
 
それ以上に、自分の勝手に湧き上がってくる、邪やエロティックな感情が
世の中で自動的に拡散されていたら。想像するだけでバツが悪い。
逆に誰かのそんな感情が、あちらこちらで伝わってきたら……
 
もう人と一緒にはいられなくなってしまうかもしれない。
 
「あの人の気持ちがわかったら」
 
そう願う人は多いけれども、
本当はわからないほうが幸せではないのだろうか。
 
自分の気持ちが伝わらないのはもどかしいけれど、
わかりすぎてしまう残酷さもあるのだ。
 
人の感情は、移り変わるのが早い。
そんな感情に、いちいちわかりすぎてしまうことで、
振り回されるぐらいなら、「言葉」を巧みに使い、
お互いの幸せを導いたほうがいいのだ。
 
そう思うと、神様はなんと便利な「言葉」というツールを
人に与えてくれたのだろう。
 
言葉は、ナイフの刃のように私を傷つけることもあるけれど、
愛おしく、幸せな気持ちにしてくれることもある。
 
せっかく言葉というツールを使うのであれば、幸せな気持ちが
伝わるような言葉を使いたい。
 
でも、幸せが伝わるような言葉とは、
どんな言葉なのだろう。
 
 
言葉じりのいい。
都合のよい言葉。
 
言葉ありきでいえば、相手が聞きたい「言葉」であれば
相手は嬉しいのかもしれないが、うわべだけの言葉でいいのだろうか?
例えば、感情のない「愛している」の言葉を受け取ったとしても、
そこに幸せはあるのだろうか?
 
幸せを求めるのなら、やっぱり感情を伴った、言葉が必要だろう。
たとえ、その言葉が相手にとって望まない言葉だったとしても、
相手を思いやる感情をのせることで、お互いに大切に思う気持ちが
伝わるのであることのほうが大事だと思う。
 
 
言葉。
 
普段何気なく使っているツールではあるのだが、こう考えると
想いや感情をのせて使っている自分がいることを発見する。
 
ただ…
 
人にはそれぞれの言葉があるから、
使う言葉が相手と同じだとは限らないし、
言葉にしたとしても気持ちが伝わっているとは限らない。
 
 
「おお~い。風上からだぞ!!」
 
 
また棟梁の言葉の試練が始まった。
 
今度は、きちんと伝わったかな。
きっと、若者だって、あなたの言葉を受け止めたい。
 
そこにお互いを思う言葉が紡がれますように。
二人の試練はまだまだ続く。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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