人の時間は、人の命だ。自分の命を、大事に使えているか。
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記事:鳥平純子(ライティング・ライブ大阪会場)
“人の時間は、人の命だ。誰かにわざわざ時間を割いて、何かをしてもらうということは、そのくらい大きなことだということを忘れるな”
とあるエッセイに書かれていたこの言葉で、数年前にこの世を去った友人のことを思い出した。
私のつまらない理由のドタキャンのせいで、奪ってしまった彼の時間(命)に対して、もっと深く考えなければいけない気がした。
彼は、小学校の同級生だった。
特別仲が良かった訳ではないが、悪かった訳でもない。
そんな彼は、成人式の前日に行われた小学校の同窓会に参加していなかった。
小学校を卒業後、すぐに引っ越しした彼の連絡先を知っている同級生がいなかった為、連絡が取れなかったのだ。
成人式も無事に終わり、迎えた5月。
別の友人から連絡があった。
「あの子と連絡が取れて、同窓会に参加したかったって残念がっていたから、集まれるメンバーでもう一度集まらないか?」
久しぶりに彼に会ってみたい。
どんな大人になっているんだろう?
同窓会の幹事をしていた私は、今回のプチ同窓会でも幹事になり、メンバーも日程も決まり、あとは当日を待つだけとなった。
プチ同窓会の前日に、会社の飲み会があった。
一次会が無事に終わり、二次会に行かずに帰れると安心した瞬間、社長に捕まってしまった。
「君の未来の旦那がどんな場所で接待しているか教えてあげよう~」
要するに、今からキャバクラに連れて行くということだ。
女子がタダでキャバクラに行ける機会はそうそうない。
人生初キャバクラに胸が躍り、ルンルンでついて行った。
綺麗なお姉様方と楽しくおしゃべりをするのはもちろんだが、キャバクラという世界を知ることがとても楽しかった。
そんな私を見た社長は、満面の笑みで「君の未来の旦那が来る場所は、そんなにやましいところじゃないだろう?」と言った。
なんでキャバクラで接待するサラリーマンが旦那と決めつけられているんだ? と思いながら、「はい! 貴重な体験が楽しかったです。ありがとうございます!」と元気よく答えたのが、仇となった。
「よし、じゃあ今日は朝まで飲もう!」という流れになってしまい、私は他の男性社員とともに朝まで社長のお供をした。
翌日は土曜日だったが出勤日だったため、ろくに睡眠も取らず、二日酔いでヘロヘロになりながら会社に直行した。
その日の夜は、プチ同窓会があったが、とてもじゃないが参加出来る状態じゃなかった。
もう、お酒の匂いも嗅ぎたくない。
申し訳ないと思いながら、体調不良で欠席させて欲しいと連絡した。
すると、幹事が来れる時に日をずらそうということになってしまった。
彼がかなり残念がっていたので、私抜きで開催してほしいと思ったが、自分が悪いのでアレコレ言えない。
こうして、次の開催日をきちんと決めないまま3ヶ月が経ってしまったある日。
LINEにメッセージが届いた。
彼が、この世を去ったという知らせだった。
嘘? 冗談だろう?
まだ20代前半でしょ? 死んだ? なんで?
数ヶ月前に会う約束をしていた彼が死んだ。
自殺? 事故死? それとも、病気?
理由が、怖くて聞けない。
呆然とした。
あの日、みんなで会っていたら何かが変わっていたかも知れない。
私がドタキャンさえしなければ……
もし、自殺だったら、死ななくてもいいやと思っていたかも知れない。
事故死や病死だったとしたら、最期に、彼の人生に彩りを添えることができたかも知れない。
彼がどんな思いで同窓会を楽しみにしていたんだろう。
考えれば考えるほど、目を覆いたくなる。
どんなに謝ったって、後悔したって、どうしようもないのだ。
かといって、これから彼の分まで一生懸命生きるというのも何か違う気がする。
仮に、私が彼の分まで一生懸命生きて、幸せになったところで、彼が喜ぶとは思えない。
それに、そんな決意は、自己満足で身勝手な気がした。
あのエッセイには続きがあった。
「自分の命を、大事に使えているか」
そんな大それたことを考えながら、生きていなかった。
改めて言われると、あまり大事に使えていなかったかも知れない。
100歳まで生きるとしたら、私はあと70年以上生きることになる。
その70年をどう生きるか。どう大事にするか。今からできることは何か。
ふっと浮かんだ。
「次の世代にいいバトンを渡す」
もし、彼が今度生まれ変わってこの世を生きる時、少しでも幸せを感じられる“何か”を残せたら、どうだろう?
彼だけに留まらず、自分や、自分の友人たちの子供にとっても、少しでもいいものを残せたら、どうだろう?
本? 歌? 絵? 服? 料理? お店? 街? 国?
壮大過ぎて、具体的に何をどうするか今はサッパリ分からないが、頭の片隅に置きながら、生きていたら何かできるかも知れない。
人の時間は、自分の時間は“命”だ。
そう分かっていても、大切さを忘れて、また雑に扱ってしまうこともあるかも知れない。
その時はまた、思い出すことにする。
そんな日々を繰り返して、いいバトンを渡せる日を迎えられるように
***
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