社会不適合者。
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記事:Raito(ライティングライブ福岡会場)
「社会不適合者」 と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
この言葉は中学生のころに出会った10歳年上の演劇をしている役者さんや作家の友人がよく、揶揄して口にしていた言葉だ。 役者は食べていくのが難しいからとおおよそほとんどのお家で否定されたり望まれなかったり様々にあったらしい。
だから、という事もあってその劇団ではよく「家族から、社会から非難される役者」 という像がネタに書かれていた。 当時の私にはどのお話も喜劇は分かりやすくて面白くて今でもいくつかのストーリーはよく覚えている。
かくいう私も憧れたことがある。
小学生のころ父がレンタルビデオ屋さんから「サウンド・オブ・ミュージック」 という映画を借りてくれた。
二本立ての長時間ものだったが何度も何度も繰り返し見た。
母には「よくそんなに何度も見て飽きないわね」 と言われていたのを覚えている。
仕事で帰りの遅い両親を待つ時間にはちょうどよかったのだろうと思う。
トラップ家の子供たちが歌を歌い、特にお休み前のコーラス曲が楽しそうできれいでとても好きだった。
小学生のころ父の経営する会社が不渡りや計画倒産の餌食になってしまい、危うくなったのは私が小学生三年生のころだっただろうか。
私は覚えてはいなかったのだが母が言うには「学校を変わらないといけないかもしれない」 と言ったら、私の兄弟たちはしょげてしまっていたそうだが、私だけは「自分が働いて稼ぐ」 と言っていたらしい。
「あんたは変わっとった」と笑いながら話す母である。
理由はそれだけではないが私は早くから自分で働きたいと思っていた。
だが田舎まちでは子供ができるような賃金をもらえるような仕事はほとんどなく、加えて、どちらかといえば過保護な両親出会ったために小学3年生から働くということはできなかった。
新聞配達をしている年上のお兄さんやお姉さんが羨ましかった。 だから怪しくても少女コミックの裏なんかにある役者募集などを見てはたくさん稼げるならしたいなあ、と純粋に思っていた。 しかしそれも危ないから、となんだかんだと理由をつけられかたずけられたが今となってはいい思い出である。
そういえば宝塚にも憧れた時もある。
とても費用が掛かるのだと言われてあっさりあきらめたが。
それでも何か「表現」 という世界に惹かれて仕方なかったのだろうと思う。
「誰かを笑顔にできる何か」 というものに憧れていたのかもしれない。
劇団や役者には今一歩勇気がなかったが裁縫は得意だったので中学生のころは友人の小さな劇団の衣装作りを少し手伝っていた。
それからずいぶん時間がたって社会人になって十年ぶりに再開した。役者で作家の友人は働きながら作家の仕事をしていた。
舞台が決まればバイトをやめ、稽古に明け暮れ、極貧生活をしても演劇に情熱を燃やし、公演の舞台に立つ。 ということを繰り返していたらしい。
「社会不適合者」 この言葉は時々ふっと私の脳裏に浮かんでは、「ただそうであってほしい」 と望む人々の歪な毒を感じさせる時もあるし、同時に新しいみちがあることや、人間としての、日本人としての、柔軟さや、寛容さ、変わる必要があること、特に思考が固まってしまったときや、人の世、の「ズレ」 を強く感じた時に私に様々な視点をくれる。
世の中の雇用の形の変化、派遣切り、コロナ、生き方への問い。
現代は少しだけ働き方に対する考え方がかわって来たように感じる。
それぞれのカタチで働きながら、思い、悩み、迷いながら役者、演劇を続ける友人たちを近くに感じて私は様々な職場で働いたけれど、どこの人たちよりも、情に熱くまっすぐな心がある人たちだと感じている。
ただ「社会不適合者」 と聞くとマイナスな批判や避難をイメージする方も多いかもしれない。
ただ、人間には人間だからこその不器用さと完璧でない美しさがあると思っている。
私自身は、私自身にもこの「社会不適合者」 という言葉があてはまると感じている。
置かれた環境、選んだ環境で、それが必要であると感じたならばどれだけでも忍耐をするが、「違う」 と心に強烈に感じたならば即行動を変える。
”一般的” だとか、”ふつうは” というような感覚とはずいぶん違っているらしい。
だからかどうかは分からないが私は心から「社会不適合者」 という言葉が好きだ。
***
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