メディアグランプリ

SUDOKU家族


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記事:弓削 浩美(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
ナンバープレイスというゲームをご存知だろうか。
3×3に区切られた正方形のブロックを更に縦横に3×3に組み上げられたシートに対し、各列で1~9の数字を被らないように、マスの中に一つずつ数字を入れていくパズルゲームである。「ナンプレ」或いは「数独」と言えばわかりやすいだろうか。
 
ゲーム自体の歴史は、1979年にアメリカのパズルマガジン誌に「Number Place」という名前で掲載されたことが始まりという。
しかし、知られている名前から察する通り、日本の企業である株式会社ニコリの鍜治真起氏が命名者として、ゲームが世界中で広まるきっかけを作りだしたのである。
鍜治氏は残念ながら今年ご逝去されたことが報道されたが、「数独」はこれからも変わらず、世界で愛されるゲームであることだろう。
 
「数独」という言葉の由来を調べてみると、「数字は独身に限る」という名づけの言葉が縮まって「数独」になったらしい。1マス1マスに埋める=シングル=独身というゴロで名付けられたとのことだ。
 
じゃあ「独身」のコマがすべて埋まって解けたら、その集合体は家族なのかしら。
 
なぜそんなことを考えたか。私の人生の中で「数独」はどちらかというと「独身」ではなく「家族」にまつわる存在だったからである。
 
この世に生をうけてから、おそらく解いた「数独」の問題は数千を数える。
子どもの時は1冊100問掲載の本を何冊もこなした。それがスマホのアプリに代わってからも、私の「数独」生活には変りもなく、終わりもない。問題がそこにある限り、簡単なものも名人級の問題も解き続けるのみなのだ。
 
初めての出会いは、小学生の頃だったか……記憶は定かではないが、夏休みに家族で訪れたドイツの駅の売店で買ってもらったものが1冊目の「SUDOKU」であったと思う。
日本語のようなタイトル、背景に漢字が並ぶ表紙。その時はまさかパズルのタイトルが日本語だなんて思いもよらなかった。
ミュンヘンからザルツブルクへ向かう列車の中で、ルールの言葉も読めないが、それでもわかる明解なルールが癖になったのだろう。夢中になって問題を解いていたと、のちに母から聞かされた。
旅行先で景色も見ずパズルゲームか……と今なら思うが、それから「SUDOKU」は海外旅行での恒例のお供になった。子どもにとって、移動ほど退屈なものはないのだ。
 
イギリス、イタリア、フランス、家族旅行の分だけ、複数の言語の本が積み重なる。
そして決まって、海外で購入した本は最後まで解かれることはない。
旅行の移動時にしか開かれない、限定本だったのだ。
 
これらを思い出したのは、結婚前に実家を整理していた時である。
長年放置された勉強机の一番下の大きな引出しに、旅行先での電車のチケットや美術館のパンフレットと一緒に挟まっていた数冊の本。
 
捨てるのも惜しくて(いまだ数独中毒なので)引っ越し後、夜な夜な昔の「SUDOKU」を解く。両親と一緒に過ごした時間が、あまりに楽しく幸せに思い出されて、なんだか寂しくて、ぽろぽろ泣きながらえんぴつを動かし解いていく。
おそらく、世界でも泣きながらパズルを解く人間は私くらいだろう。そしてそんな涙を流す奇怪な女を慰めてくれる優しい人が、私の夫だ。私は1人じゃない。
 
数か月後、いつも通り母に連絡をすると、毎日父と晩酌をしながら100均で購入した「ナンプレ」を解いているらしい。100問の名人級を5冊、表紙に印刷されたものまで解くというから親子そろって中毒レベルだ。
補足すると、「数独」は株式会社ニコリの商標登録なので、日本ではそうではない会社は「ナンプレ」と表記する。海外は登録していないから「SUDOKU」と書いてある。らしい。
 
それからも、両親が夫婦二人で行った沖縄旅行では、海を見ながらバルコニーで解いて過ごした話を聞いて、ほほえましかった。
 
子どもの頃の暇つぶしから、両親の夫婦仲を取り持ち、且つ脳トレまで、我が家を幅広くサポートしてくれる「数独」は、大事な思い出とともにある。おそらくこれからも家族に寄り添う頼もしい相棒であることだろう。
 
そして今日も私はシングルの数字を次々にマスへ書き入れ、毎日数十のSUDOKU家族を作り上げるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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