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メロンパンはパンなのか?


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記事:齋藤由佳(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「メロンパンはパンではない」と彼がいつも私に言う。
 
しかし、私にとってメロンパンは、ハイブリットパンである。クッキー生地とパンを組み合わせ、お菓子でもパンでもない食べ応えのあるメロンパンが私にとってはなくてならない存在である。私にとって好きな食べ物ランキングの中でもトップ3に位置するメロンパン。そんな大好きなメロンパンを食べて幸せな気持ちに浸っている私の横でいつもポツリと言ってくるのだ。
 
「メロンパンってさ、パンでもお菓子でもないと思うんだよね」と彼は言う。
「あ…また始まったな」と思いながら私は、「好きなものを食べているときくらいほっといてほしいんだよね」と心の中で呟く。
私には、メロンパンがパンであろうがお菓子であろうが正直どちらでもいい。メロンパンの定義にこだわる彼が私には全く理解ができなかった。
でも、彼がなぜメロンパンを否定するのかがだんだん気になってきた。なぜそこに疑問を持つのかが私にはない発想だった。そこで彼に突っ込んで聞いてみた。そして、メロンパン談義が始まった。
 
「メロンパンはなんでパンではないと思うの?」と聞いてみた。
「メロンパンは、クッキーとパンが一つになっているけど、その二つは同時に焼くものじゃないんだよ」と彼は言った。
「でも、それがメロンパンでしょ」と言った。
すると彼は、「クッキーとパンは焼く温度が違う。クッキーは高温でカリッと焼くけど、パンはもう少し低めの温度で焼くんだよ。温度の違うものを同時に焼くことは両方の良さを消している。高温に焼けばパンはパサパサになるし、温度を低くすればクッキーの食感がしっとりしすぎてしまう。だからメロンパンは理にかなってないんだよね」と彼が言った。
 
そんな真剣な眼差しでメロンパンを頑なに否定している彼を見て思わず笑った。
 
たしかに、メロンパンのクッキー部分は柔らかく、パンは少しパサパサしているように感じる。パンとクッキーを別々で食べると確かに美味しいとは言えなかった。
だからといって、100%のクオリティを持ったクッキーとパンを一緒に食べても私の好きなメロンパンにはならない。あのメロンパンのクッキーとパンが合わさることで生まれる食感が私は好きなのだ。
 
しかし、彼の言うことが気になった私はメロンパンについて調べてみた。メロンパンの起源は、帝国ホテルのパン職人がガレットを模して作った日本発祥のパンであるのが有力な説あることを知った。ちなみに名前の由来はわかっていないらしい。
私は、日本発祥と知って「なるほど」と思った。食感の異なるものを組み合わせる考えは日本人ならではの発想なのかもしれない。
他の国のパンを見てみると、「フランスパン」や「イギリスパン」、「ドイツパン」はどれもシンプルな味のパンで味を組み合わせたパンは見当たらない。
 
そう考えると日本で生まれたパンは「あんぱん」や「メロンパン」のように一つのパンに複数の味が組み合わされて作られていた。その背景を想像してみると、島国で国土も狭く、資源も乏しい中で生活を豊かにするために多くのものを生み出してきたのだろうと思った。他の食べ物を見ても地域によって全く味が違うのに気づく。お雑煮を思い浮かべてみるとわかりやすい。地域によって具の材料やお餅の形、味付けが大きく変わる。その気候や取れる食材で一番美味しいものを生み出す発想力が日本人にはあるのではないか。柔軟に物事を発想できる原点があるのだと私は思った。小さな島国でこんなに多種多様な食文化があるのが日本の面白さであると気づいた。
 
最近、異業種同士が組み合わさることで新しいサービスや商品が次々と生まれている。例えば、農業×デジタル化である。農業は手作業で人が行うものだったが、AIや機械化により人手不足を解消する手助けになっている。
また、美容院×メガネショップのコラボによりメガネの似合う髪型を作る。そして脇役だったメガネがファッションの重要な一部に生まれ変わったように。一つの視点にフォーカスしてしまうと見えないことも少しだけ視点を変えて外を見渡すと面白い仕組みが作れる可能性が広がっていくように思う。人々が日々起こすイノベーションが実は社会を面白くしていることに気づいたのだった。
 
彼が言った「メロンパンはパンではない」という一言により、新しい思考に辿り着いた。私にはなかった考えや生き方に触れることで新しい発想や思考が生まれてくる。これからも考えもつかない組み合わせが世の中を面白くしていくことだろう。それがいつ生まれるかを考えるとワクワクしてしまう。だから私はメロンパンが好きなのかもしれない。
 
 
 
 
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2022-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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