中2で習う単語が、心の中に突き刺さってる
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:北江りな(ライティング・ライブ東京会場)
「It’s experience」
その言葉は、今でも私の心の深いところにいて、
何か壁にぶつかったとき、頭の中で再生される。
昔、私は世界の色々な場所を放浪していた時がある。
リュック1つで旅をした。
それは、自分を見つめる旅だった。
ある時、自然に触れたくなり、北欧へ行った。
広大な自然を目の前にすると、
自分のちっぽけさをダイレクトに感じる。
到着した地は、フィンランド。
世界一幸せな国とも言われている。
その空気を味わってみたかった。
一人旅には慣れている。
泊まる場所は、ホテルではなく、ホステル。
相部屋で、シャワーやキッチンは共有。
寝るだけならどこでもいい、という考えの私に合っている。
フィンランドで泊まったホステルは、
1つの部屋に、2段ベッドが2つ。
合計4人で1つの部屋をシェアするスタイルだった。
だが、私が泊まった日は、
私と、もう1人のアジア人の女性だけだった。
2人きりだし、挨拶でもしよう。
彼女は日本人のような気もするが、そうでない気もする。
「こんにちは」と日本語で声をかけるか、
「Hello」と英語で声をかけるか迷う。
私自身、海外に行くと、よく中国人に間違われる。
私は漢字は書けるが、中国語は喋れない。
間違われるのは、正直複雑な気持ちである。
日本に住んでいて、自分の国籍を意識することはあまり無い。
ところが、海外へ行くと突然、
「私は日本人だ!」という謎のアイデンティティーを発揮したくなる。
海外の人から見たら、私はただのアジア人だ。
中国人だろうが日本人だろうが、同じアジア人に見えるだろう。
だが、私たち日本人は、だいたい見分けることが出来ると思う。
でも、今回は違った。
彼女は日本人にも見えるし、中国人にも見える、微妙なラインだったのだ。
迷った結果、カタコトの英語で話しかけた。
やはり世界共通語が良いだろう。
すると、彼女はとても流暢な英語で、返してきた。
彼女は中国人だった。
英語で話しかけてよかったなと、思った瞬間、
突然のマシンガントークが始まった。
彼女はめちゃくちゃお喋りだったのである。
私は挨拶程度で終わりにしようと思っていたのだが、
喋る、喋る、喋りまくる。
私が適当な相槌を打っている間に、
翌日、一緒に観光に行くことが決まってしまった。
一人旅が好きな私は、約束してから少し後悔した。
明日もこのマシンガントークが続くのか、と。
彼女はしゃべり続けたが、私は目を閉じた。
時差ボケで頭が重い。
翌日、彼女と私は、船に乗って隣の国へ行くことにした。
片道約2時間の船旅。その間も彼女はしゃべり続けた。
大体何を言っているかは分かるが、他愛もないことだ。
日本のテレビのこと、アイドルのこと、食べ物のこと。
女子トークってやつだ。
私は英語を喋るのが得意ではないから、相槌専門である。
一通り観光をした後、
私たちは公園で遊び、疲れ果てて少し寝そべった。
「私たち、いい友達じゃない?」と彼女は言った。
私は正直友達が少ない方だ。
大人数よりは少人数が好きだし、
パーティーに行くより、一人で散歩していたいタイプだ。
出会って2日で友達なんてなれるわけないだろう、と思った。
ひねくれ者の私だ。
さあ、帰ろう。
そのとき私たちは気づいた。
帰りの船が、あと少しで出てしまう!
急いで乗り場に向かったが、乗り遅れてしまった。
次の船までは時間がある。
チケットを買い直さなければいけなくなった。
貧乏旅行の私には、チケット代をもう1回払うのは苦しかった。
でも仕方がない。払わなければ、帰れない。
どうしてちゃんと時間を見ていなかったんだろう。
悔しさ、悲しさ、色んな感情が渦巻いていた。
その態度が出てしまったのだろう。
いつもずっと喋っている中国人の彼女が、しばらく黙った。
そして、一言。
「It’s experience」
中学2年生で習った単語だった。
「経験だよ」
その言葉は、心に沁みた。
何かが起こってしまった時、
過去を見るのか、未来を見るのか。
私はいつも過去を振り返ってきた。
どうして、こんなことをしてしまったのだろう。
こうしておけばよかった。
後悔だらけの人生だった。
でも、その「経験だよ」の一言で、私はハッとした。
全ての出来事には意味がある。
起こってしまったことは、仕方がない。
これから先、どうするか、だ。
3時間後に船は出る。
だから3時間、思いっきり遊んだ。
その時間は、他の観光をしてきたどんな時間よりも濃かった。
私たちは、友達だった。
その翌日、私は他の国へ行く飛行機を取っていた。
彼女とはここでお別れだ。
フィンランドで出会い、フィンランドで別れる。
世界一幸せな国の空気は、透き通っていた。
今後会うことはないかもしれない。
たった3日間しか一緒に過ごさなかったけれど、
私たちは確かに友達だ。
そして、私は彼女を尊敬している。
これから何か壁にぶちあった時や、
後悔するときは必ずあると思う。
でも、そんなとき私の心の中には、この言葉がある。
「It’s experience」
***
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