fbpx
メディアグランプリ

イケメンのヘッドスパ

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:夏川ゆき(ライティング・ゼミ12コース)
 
 
先日、初めての美容院に行ってきた。
 
その美容院は職場と同じビルに入っており、何度もお店の前を通り過ぎて雰囲気は知っているお店だった。
 
入口にたくさんの本が飾られ、吹き抜けの天井から透き通った光が差し込み、素敵だった。
 
 
しかし私は今までその美容院に行くことはなかった。
 
自分の結婚式にも来てくれたほど仲良しの友達A子が美容師をしており、長年髪を切ってもらっていたからだ。たまにでも他のお店行くのは、浮気してるような居心地の悪さがあり、一途に通った。思い返せばここ8年ほど初めての美容院に行く経験はしていなかった。
 
しかしなんとA子がこの度めでたく妊娠し、産休に入るという。
 
もちろんA子は、
「うちの店の他の信頼できる美容師を紹介するからね」
と、親切に言ってくれた。
 
だが私は、かすかに浮き足立っている自分を感じながら、
 
「職場のビルに入ってる美容院、仕事の合間に行けて便利そうだから、A子が帰ってくるまでそこ行ってみようかな」
 
と、まるで今思いついたという顔で伝えた。
 
そんな背景のある、今回の予約だったので、私はワクワクしていた。
 
私は美容院を予約するときはいつもカットとカラーに加えて、ヘッドスパをオプションで追加する。
今回も、いつもA子の美容院で予約していたように、カットとカラーと、ヘッドスパを予約した。担当者は、一番失敗のなさそうで且つ値段も高すぎない「アートディレクター」という役職と、HPのプロフィール写真から醸し出される雰囲気で、女性の美容師さん(女優の江口のりこにそっくりなので、江口さんとする)を指名した。
 
当日、予約していた時間に江口さん(想像以上に江口さんだった)に迎えられ、目の前に雑誌「CLASSY」と「Oggi」、お菓子のレシピ本を並べられつつ、和やかな雰囲気でカウンセリングからカットをしてもらい、久々の「初めての美容院」経験を新鮮に感じながら、リラックスした時を過ごした。
 
カットが終わり、いざヘッドスパへというところで担当者が変わった。
 
そこには、綾野剛が立っていた。
 
彼は営業スマイルをするでもなく、驚くほどの自然体で「シャンプーが選べるんですが、今の髪質とか悩み、教えてもらってもいいですか?」と私に質問してきた。
 
「あ、ちょっとパサついてまとまりにくかったりしますね」
 
こちらも精一杯の自然体で返すと、
 
「あ〜そしたら潤い系だとこのシャンプーがおすすめなので、これで行きましょうか?」
 
と言いながら私をシャンプー台に案内した。
 
横になり、アロマが焚かれ、気が付いた。
 
体がカチコチである。
 
久々の新しい美容院に綾野剛のヘッドスパ、私は緊張していた。
江口さんにカットしてもらうと思って油断してお化粧直しもせずに来てしまったことが、わたしの緊張をさらに加速させた。
 
これは大変な事態だと思った。癒されるため、疲れをとるために、オプションで4000円のヘッドスパをつけたのに、逆に緊張していては意味がない・・
 
息子が生まれて1年が立つ頃に、夫と「私たちも親1年間お疲れ様ということで、リフレッシュの旅行に行こう!」と、家族三人で初めて訪れた温泉旅行。
当日は、慣れない環境で、取り憑かれたように夜泣きする息子の対応に追われて、夫婦揃って産後最高レベルで寝不足となり、抜け殻のようになって家路についたあの日を思い出し、これではだめだとなんとかリラックスに努めた。
 
しかし、リラックスしようと思えば思うほど、リラックスは全速力で逃げていく。
大変だ、このままでは4000円払って頭皮をカチカチにして帰ることになる。
 
絶望の淵にいた私に、突然綾野剛が問いかけてきた。
 
「お客様はこちらのお店はお初めてでいらっしゃいますよね?」
 
「……えっ、すみません、なんですか?」
 
「あ、ここはお初めてでいらっしゃいますよね?」
 
「……あ、はい!初めてです」
 
 
聞き間違いかと思ったが、確かに彼は、「初めて」に「お」をつけて、丁寧に表現していた。日本語として正しいのか不明だが、私は間違いなく初めて聞いた表現だったし、それを聞いて、「日本語へんだな、ふふ…」とほっこりしてしまい、その瞬間、リラックスが全速力で私の方へ戻ってくるのを感じた。
 
結論からいうと、その後私は自分のいびきで目覚めるまで、リラックスしきってヘッドスパを終えたのだった。
 
 
帰ってからこのほっこり恥ずかしエピソードを夫に話したところ、
 
「なんでゆきちゃん突然リラックスできたんだろうね?イケメンを前に自分のほうが弱い立場で萎縮してたけど、イケメンが自分より頭が悪いかもと思ったら急に自分の立場が上になって安心したのかな」と真面目な顔でつぶやく。
 
いやいやいやいや、それじゃない回答オブザイヤーだよ…!!
 
と、全くもって求めていない回答にイラっとしつつも、「ヤキモチかよ…」と思えるほどに、イケメンのヘッドスパで熟睡したわたしの頭皮はしっかりともみほぐされていた。
 
あの「お初めて」は実は緊張してるわたしをリラックスさせるための綾野剛の逆マウンティングだったのかも。だとしたら実はとんでもない技術をもった美容師さんだな…とぼんやりと考えながらも、やわらかい頭皮で良質な眠りについたのであった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-01-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事