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「あの時僕らは魔法使いだった」

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記事:古家智惠(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
私は元々魔法や不思議な世界、魔女に魔物、呪いにドラゴン…そんなファンタジーが大好きな子供だった。
魔女は実はみんな頭を尼僧のように刈り上げていて、カツラを被っているのだという話を知っているだろうか?
ワルプルギスの夜に踊り合う魔女たちのことは?
狼男の遠吠えの意味は知っている?
今にして思えば私はワクワクする冒険よりも、見知らぬ彼らの生態を見るのが好きだったのかもしれない。
小学生の頃にはそんなファンタジーのある本を図書館で探して夢中になって読んだし、とにかくそんなファンタジーの片鱗があるものは片っ端から読んだ。執着と言ってもいい。友人から借りたマンガやアニメを見たりもした。
でも、あれだけのセンセーショナルな作品を見たのは後にも先にもあれが初めてだった。
 
それは私が中学2年生の時だった。
私がこの作品を知ったのはおそらく人より遅かったと思う。
うちの家庭には映画館に行く習慣がなさかったし、今と違って情報はテレビかラジオからしかやってこない。
もちろんケーブルテレビも家にはなかったし、新しい映画はレンタルビデオで借りるか地上波で流れるまで触れることさえできなかった。
世界的にかなりの勢いで売れなければ、海外で話題の作品なんて一般人の目にも耳にも入ってこなかったのだ。
……こうして昔を振り返って思えば、令和のこの世の中は本当にすごい時代になったものである。情報でもなんでもすぐさま自分の小さな手の中のスマートフォンへとリアルタイムで入ってくるのだから。
 
私は中学生になっても小学生の頃と変わらず、まだまだファンタジーが大好きだったけれど、どちらかというとそれはアングラな好みだった。
 
だけれども、世界に大きな激震が走るのだ。
 
みんながこぞって読みたがった魔法の世界のお話が、映画になり映像化された。
かの有名な作品「ハリーポッター」だ。
 
当時映画一作目が世界的大ヒットとなり、その一年後に作られた二作目の映画を見に行っただの、これから行くだの、その話で私のクラスは持ちきりだった。
そうして二作目が映画館で話題となっているからこそ、私は地上波で一昨目を見ることができた。
 
そうして映画館ではなく各家庭のテレビで一般的に見られるようになったことで、私だけでなく世界がハリーポッターにハマっていった。
 
映像美もさることながら、綿密に作り上げられた世界観、個性豊かなキャラクター達が生き生きと描かれるこの作品の、私は時に世界観が好きだった。
それぞれが当たり前のようにその不思議な世界で生きていて、魔法の世界ならではの生活習慣を送っている。
細かい設定がきちんと盛り込まれたその世界はハマるに余りある作品だった。
そこからずっと作品はヒットし、映画が作られていく。
私も高校生になり少しずつ自分の意思で映画館に足を運べるようになって、きちんと映画の内容を鑑賞できるようになっていった。
深い世界観、実際にはあり得ない建物や造形、魔術のなんたるか、空飛ぶ車に、瞬間移動ができたり、時渡りをしたり…本当に楽しい世界だった。
作品が注目され、そうして原作にスポットライトが当たる。
そこで初めて、私は原作者がこの素晴らしい世界を貧困と心労の中で書き上げていたことを知った。
 
彼女は死産や離婚などたくさんの辛い経験を重ね、借金に苦しみ、住むことにさえ苦労をしていたという。
そんな苦しい中でそれでもハリーポッターの世界は輝いてずっとペンを走らせていたそうだ。
辛い現実の中歯を食いしばって生きながら生み出した作品が、彼女の人生に大逆転劇を起こしたわけである。
このエピソードを聞いた時、私は想像力の羽が何よりも強いものだと言うことを知った。
 
当時、ファンタジーは私の心を慰め孤独を拭う大きな手立てだったように思う。
小中学生という思春期特有の多感な時期に理由なく漂うあの虚しさを、ファンタジーは埋めてくれていた。
それはきっと、作者の経験した悲しみや苦しみ、そして喜びが作品に滲んでいたからだろう。
彼女は辛い現実を生きながらも自分の創作の炎を消さなかったし、諦めずに書き続けた。
その情熱がたあったからこそ、シリーズ7作品という超大作となり、20年経った今でも愛されているのである。
 
想像の世界とはいえ自分が夢中になって幸せになれるのならば、脳はそれが現実でなくとも幸せホルモンを出すらしい。
オミクロン株が流行し、何かと閉塞的で暗い世の中だけれど、頭の中だけは自由で楽しい想像を膨らませることで、自分を支えて行きたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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