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メディアグランプリ

「お茶くみ」をしてみて、分かったこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯田裕子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
今は昔、女子が「お茶くみ」をやらされていた時代があった……。
 
と思ったら、今でもその習慣が根強く残る職場はあるそうだ。ここで言う「お茶くみ」とは、あるグループの中の数人あるいは一人が、代表して給湯室へ行き、全員が飲むお茶を用意して持ってくる、といった行為のことだ。最近は、コロナ禍が幸いしてか、お茶セット自体が
撤去されることも増えたように思う。
 
そういう私も、大学生だったある時期(うん十年前)、結構な頻度でお茶くみをしていたことがあった。それは、主に、とある勉強会に参加していた時のことだ。
 
なぜ、せっせと「お茶くみ」をしていたのか? 「女子だったから」ということは、やっぱりあったかも知れない。しかし、もっと大きな要因は、おそらく、その勉強会で私が一番のチビだったということだったと思う。お茶くみは、後輩や同輩の「女性」が現れる2年後までは、けっこう私の仕事のようだった。
 
その勉強会の部屋には、コーヒー豆とコーヒーを入れる道具一式が置いてあったので、「お茶くみ」は必然的にコーヒーを入れることと同義だった。毎朝のコーヒーが欠かせない方にとっては、コーヒーを入れるのは、とても簡単だと思うけれど、大学生になったばかりで、本格コーヒーを飲む習慣もなかった私には、最初のうちは、結構一苦労だった。人数によって、水の量、コーヒー豆の量を加減しなくては、濃すぎたり、薄すぎたりしてしまう。それに、フィルターへのお湯の流し込み方もけっこう重要だったりした。味がよっぽどひどい時は「ちょっと今日は濃かったんじゃない?」などと言われたりはしたので、少しずつではあったが工夫はしていた。
 
やっていた時は、やっぱりちょっと「やらされている感」はあった。誰かに「やれ」と言われていたわけではないのだが、見えない圧力というか、当然君の仕事だよね、と暗黙に言われているというか……。「一番チビだからってさ。女子だからってさ。なんで、だいたいいつも私なのよ。」などとは、ちょこっと思わなくはなかった。
 
ただ、それから数年経つうちに、気が付いたことがあった。
 
また別のところで違った会合があった時、コーヒーを入れなくてはならない場面があった。昔取った杵柄。ささっとコーヒーフィルターを折って広げて敷いて、適量のひき豆を入れて、昔やっていた要領でお湯を注いだ。「お茶くみ」時代以降、あの経験にこりごりしていたのか、自分で本格コーヒーを入れることはなくなっていたが、自分でも思うに、かなり手際は良かった。しかも、
 
「おいしいですね。これ」
 
褒めてもらえた。まあ、お世辞だったかも知れないけれど、かけた手間へのお礼としては十分だった。
 
久しぶりに入れたけれど、おいしいと言ってもらえるぐらいに入れられた、ということは、かつての「お茶くみ」の時の苦労を、手や目が覚えていたということだ。慣れた感じで自然に動いた手を眺めていたら、大学時代のほろ苦い思い出もちょっと込み上げてはきたが、思わぬ収穫を得た気分にもなった。
 
どんなに面倒に思えることでも、どんなに嫌なことでも、とりあえず一生懸命やっておいたら、いつか思わぬ形で、また役に立つこともある。
 
人間には、やって無駄なことって、一つもないんだな。
 
妙に納得した。
 
確かに「お茶くみ」は楽しい作業ではないかも知れない。みなが平等に当番制というのだったらまだしも、誰かが押しつけられていいものではないと思う。アジアだと、年少者が年長者に何かをする、ということはありがちではあるし、その方面から考えたらどうなのか、どっぷりとアジア文化圏にいる身では、よく分からないけれど(後の方では、私も後輩にコーヒーを入れてもらっちゃったよな……。反省!)、でも、世界のどこでもそれが通用するわけではない。「お茶くみ」慣習については、やっぱり抜本的な見直しは必要だろう。
 
でも、これをもう少し違う仕事に置き換えて考えてみた場合はどうか。自分はあまり気が進まない仕事とか、苦手だと思っている仕事とか……。それらの仕事を、嫌々やることは誰でも出来るだろう。やっつけ仕事みたいになってしまっても、それが雑用に近い仕事であれば、きっとそれほど責められはしない。だけど、どうせやるのだったら、工夫しながら、前向きな気持ちでやってみると、案外すごく上達したりして、何か得ることがあるかも知れない。どこかで、その時の経験が、違う形で役に立つ日が来るかも知れない。この「お茶くみ」経験みたいに。
 
「人間何も無駄なことはない。いつか何か役に立つことがある」と思えた後は、ちょっと謙虚な気持ちにもなってきて、「何でいつも私ばかり?」という気持ちでいた時期があることも、だんだん恥ずかしくなってきた。その勉強会では、私は確かに、年齢的にも経験的にも、かなりなチビだった。先輩方からは、普段からいろいろ教えていただくことも多い立場だったのだから、「いつもありがとうございます」ぐらいな気持ちでやっていれば、もっと人間関係もスムーズだったのかも?
 
謙虚に、与えられた環境で精一杯努めていれば、きっと何かいいことがある。絶対!
先輩風は吹かせないようにしながら、前向きに頑張ろう!
たかが「お茶くみ」だけど、何か無限の可能性に目を開かせてくれた気がした。
そういう意味では「お茶くみ」もいい経験だったのかな……。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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