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座敷わらしがいる家には幸運が訪れる

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記事:蒲生厚子(ライティング・ゼミ名古屋会場)
 
 
「うちには座敷わらしがおるんよ」
姉がそう言うと、横で母が大きな声で笑った。
「そうなんよ。おるんよ」
 
九州の実家では、母と姉が二人で暮らしている。15年前に家を建てたのだが、なんとその家に座敷わらしがいるということなのだ。
 
ネットで調べたところによると、座敷わらしは、東北地方で旧家に時折現れるといわれる、子供の妖怪で家の守り神だそうだ。童形で顔が赤く、髪をおかっぱにしており、時にはいたずらもするが, 見た者には幸運が訪れる。家には富をもたらす。しかし、いなくなると家が没落すると伝えられる。
 
おるんよ、といっても見たわけではない。もし見ていたなら、富をもたらし大金持ちになっているはずなので、間違っても会ってはない。でも、話を聞く限りではいるに違いないと思えるのだ。とてもいたずらな妖怪らしい。
 
最初は家を建てた直後のことだった。
姉が「パスポートがなくなった」と騒いでいた。引っ越しのときに、なくならないように、パスポートや手帳など大切なものをまとめてポーチに入れて、壁掛けに掛けておいたらしい。
引っ越しが落ち着き、荷物の整理もおわったころ「さて」とパスポートをしかるべきところにしまおうと思ったら、ない! 壁にかけておいたポーチごとなくなっている。
おかしいな。壁にかけておいたと思ったのは、勘違いか?
それからは、タンスやデスクの引き出し、本棚の本の上や間、食器棚の中、キッチン周りから洗面所まで、ありとあらゆる所を探してもなかった。
 
さんざん探してあきらめて、そのうち出てくるだろうと、探すのを半ば諦めた1週間後の朝、
朝食を食べながらふと壁をみると、そこには無くなったはずのポーチが……。
あれだけ探したのに、なぜ? きつねにつままれた思いでポーチの中身を調べると、そこにはパスポートも手帳もすべて揃っていた。
不思議なこともあるものだ、と母親とふたりで首をひねったが、出てきたからよしとした。
 
次に起こった不思議なこと第2弾。
友人たちを数名招いて、新築祝いをしたそうだ。料理に舌鼓を打ちながら、お酒を飲んで楽しい時間を過ごした翌日、男性の友人から電話があった。
「昨日帰ったら、ワイシャツのボタンが無くなっていた。行くときはあったから、どうやらお宅で落としたらしい。あったら拾っておいてくれる?」
そのシャツには、外国製でとてもしゃれたボタンがついていた。あまりに素敵だったのでよく覚えている。しかも、日本では手に入らないのでなんとしても探してあげなければ、と姉と母はふたりで、床はもちろんのこと、ベランダの隅からすみまで這いつくばるようにして探したが、見つからなかった。毎日掃除をするたびに、目をこらして見ていたが、やはり見つからなかった。
 
1ヶ月くらい後、毎日見ているベランダのど真ん中にぽつんと例のおしゃれボタンが落ちていた。まるで置いてあるかのようにぽつんと。
 
これにはさすがにびっくり仰天した母と姉。
「この家には座敷わらしがいるに違いない」という確信に至ったということだ。
 
私が実家に帰省したときも、東京から帰省した姪が持って来たカステラが消えてしまうという事件がおこった。「わぁ、ありがとう! カステラだ」そこまではみんな見ていた。しばらくして、さて仏壇に上げようと思ってカステラの箱を探したけど、どこにもない。たしかに、他にいろいろいただいた物と一緒にテーブルに置いてあった。それなのに、カステラだけが消えている。
 
「また座敷わらしだね」毎度まいどおこる不思議ないたずらに慣れてしまっている家族は「しかたがないな~」という顔でそのうち出てくるだろうとと笑っていたが、こればっかりは出てこなかった。
きっと座敷わらしはカステラが好きに違いない。食べちゃったんだな。
 
「他にどんなことがあったの?」と聞いても
「たくさんありすぎて忘れちゃったよ」というくらい、なくなった物をさんざん探したあげく、とんでもない所から出てくることが多いそうだ。
 
実家の座敷わらしは家の中だけではなく、時空も移動できるらしい。
姪の結婚式でのこと。神戸での挙式だったので2泊3日の日程だった。
結婚式はシンプルだが感動的で、クライマックスでもある、親への感謝の言葉には泣かされた。親へのプレゼントはとても素敵は置き時計。今まで育ててくれた時間と、これから流れていく時間を共に喜びましょうという意味が込められた特別な時計だ。とても良い話だ。
 
姉は結婚式で着た服や小物と一緒に、大切な時計をしっかりとくるんで宅急便でホテルから家へ送った。そして帰宅した翌日、姪から電話があった。
「おかあさん、ひどい。あの時計いらないの?」なぜか怒っている。
「いるよ、もちろん。何で?」わけがわからず聞くと、
「だって、わたしの宅急便に入ってるじゃない!」
姪が東京に帰って荷物を開けると、自分たちの時計と姉にあげたはずの時計の2つが入っていたそうだ。それで、いらないから突き返したと思ったらしい。
 
「そもそも部屋が違うし、あなたたちの宅急便に入られるわけないじゃない! とにかく欲しいからもう一度送って」と頼んで、手つかずで手元届いていた宅急便を開くと、入れたはずの時計が入っていなかったという顛末。こればっかりは説明がつかない。座敷わらしのいたずら以外のなにものでもないだろう。
 
 
私の家でもよく物がなくなる。しかも、大切にしていたものほどなくなる傾向にある。
夫からもらった「Love forever」と刻まれた腕時計もなくなった。大事にしていたはずだが、永遠に返ってこないような気がする。きれいな腕時計だったから、座敷わらしが気に入って宝箱に入れているのだろう。
他にも我が家でなくなった物は、まず出てこないのだが、わたしは座敷わらしのいたずらに違いないと思っている。そして、うちはいっぱい幸運が訪れるに違いないのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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