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回り道をしても


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Marie(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
私は細々とずっと続けていることがある。
これから書くのは母と2人暮らしをしていた頃、20年ほど前の話しだ。
 
ちょうど都会から緑の多い郊外へ引越しして間もない頃だった。
ある日、母が「近所のスーパーに車で買い物に行きたいから、車を買ったの」と言って、
車を買ってきた。
老後のために残しておいた貯金で車を買ったのだと言う。
そんな母は23年間ペーパードライバーだった。
私も、学生時代に免許を取ってから10年間ペーパードライバーだった。
運動オンチなうえ、方向オンチな親子が無謀にもいきなり運転なんてできるのだろうか?
 
それが我が家にやってきた初めての車だった。
その車は、ちょっとオジさんっぽいデザインだけど、小回りがよく利いて、買い物に行くにはちょうどよい小ぶりなサイズだった。
その時、2人でペーパードライバーを卒業しようと決心した。
 
それから、親子で運転ができるようになるため、特訓のレッスンを受けた。
まずは、近所の教習所で「ペーパードライバーのための講習コース」を受けた。
もしかしたら、教習所だと教習車に乗れるようになったとしても、家の車の感覚がまだつかめないのではないか? と疑問がわいた。
そこで、家の車の助手席に乗って指導してくれる家庭教師の車の教官にも家に来てもらうことにした。それからスパルタのダブルスクール生活が始まった。
週末には、午前中は教習所の教習車で指導してもらい、午後は家庭教師の教官に家の車で指導してもらった。
 
最初は、何度も道路の脇にある溝に脱輪しそうになり、教官に怒られた。
 
「あと数センチで溝に落ちるところだったじゃないか! わかってるのか!」
 
何度も怒られながらも、少しずつ、忘れていた車の運転がゆっくりできるようになってきた。
 
そして、1カ月の猛特訓のレッスンが終わった。
 
運動オンチな親子でも、自分の車に乗りたいという目の前の目標があれば、なんとか車に乗れるものだ。エンジンのかけかたさえも忘れていたが、母も私も猛特訓の結果、近所の道をゆっくり運転ができるようになっていた。
 
特訓コースを卒業した後、大好きなケーキを買いに私の運転で母を助手席に乗せて、
2人で中津へ出掛けた。その当時、中津の駅前に美味しいケーキ屋があったからだ。
家を出発して、途中から新御堂筋に乗ることはできたが、その先からが問題だった。
 
そういえば、私は教習所の特訓コースを無事終えても、まだ車線変更に慣れていなかった。
 
車線変更のタイミングを何度も逃して、右の車線に車線変更ができないまま、とうとう目的地の中津の出口で降りられず、通り過ぎてしまった。中津の出口は右方向にあったが、左側の車線を走り続けていた私は出るタイミングを逃してしまっていたのだ。
 
助手席から泣きそうな母の声が聞こえた。
 
「お願い! 次の出口で、絶対出てね」
 
「うん。わかった」と私は答えたが、動揺して頭の中は真っ白だった。
 
次のチャンスは梅田だ。
梅田で降りて中津へすぐ引き返せばいい。
 
梅田で出口に出られたものの、今度はユーターンができずに、西天満まで行ってしまった。
どんどん目的地から離れていく。
私は、緊張と焦りで力が入って肩はガチガチだった。
ハンドルを握る手も汗だくだった。
そこから、車のナビを使って、また目的地を通り過ぎないように慎重に下道を通って、
西天満から梅田……梅田から目的地の中津まで戻った。
遠い道のりに感じた。
 
ようやく目的地のケーキ屋に到着できた。
到着すると、もう閉店間近だった。
でも、閉店までに、なんとか間に合った。
 
ケーキ屋のショーケースの前に立っているのも、やっとだった。
私は運転に疲れてもうふらふらだった。
そんな時、
 
「今から半額セール始まりまーす!」
 
店員さんの声が店に響いた。
ちょうど、ケーキの半額セールが始まったのだ。
 
「よかった! 今日はツイてる!」
回り道したおかげで大好きなケーキを半額で買うことができたのだ。
 
それから20年経った今もあまり遠出の運転はしないし、いまだに高速道路を運転したこともない。でも、ゆっくりと週末だけ家の近所を運転している。週末だけの運転でも、忘れかけている記憶がなんとなく蘇ってくる。
 
時々、ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスの「エビングハウスの忘却曲線」の有名な言葉を思い出す。
 
人が何かを学んだ時、
・20分後には42%忘れる
・1時間後には56%忘れる
・9時間後には64%忘れる
・1日後には67%忘れる
・2日後には72%忘れる
・6日後には75%忘れる
・31日後には79%忘れる
 
という忘却曲線だ。
 
私の記憶力の忘却曲線が下がりきってしまう前に、もう一度思い出すと、忘れかけていた記憶力の曲線がまた上向きになる。
復習するとまた記憶は復活するのだ。
そして、繰り返して学んだことをずっと忘れずにいられる。
 
あなたがとずっと続けていることは何でしょうか?
 
何事も継続してゆっくり前に進もう。
回り道をしても。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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