メディアグランプリ

父親像


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:水野 敬(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
僕の父親は、母親が5人目の妻である。
歳の差は20才で、しかも駆け落ち結婚。
そして、父親が50歳の時に生まれたのが、僕だ。しかも妹もいる。
 
これだけでも、結構イレギュラーなケースに入ると思う。
また捉えられ方次第では、父親の印象が悪くなるかも知れない。
10回忌の節目を迎えた良い機会なので、父親との記憶を思い返して書こうと思う。
 
まず、僕にとって父親は、本や映画にでてくる主人公のような存在であり、スーパーヒロー。簡単に父親の軌跡を書くと、
 
大正12年広島県生まれ
幼少期に養子に出される
学徒出陣で出兵
終戦を北海道で迎え、故郷の広島に戻るも家族も親戚も街もすべて原爆で無くなる
単身アメリカに渡り貿易会社を興す
母親と結婚
日本に帰国し、複数社サラリーマンとして勤務後、独立開業
僕ら兄弟3人を立派に育ててくれ、88歳で他界
 
波乱万丈の人生とは、こういう人生のことをいうのだろうか。
 
累計230万部のベストセラー、大河小説「流転の海」の主人公も題名のとおり相当波乱万丈な人生を送っている。この本を読んだ際、父親がモデルなのでは?と思うほどよく似ていた。
 
昔の人達はみな、このような生き方をしてきたのだろうか。生きる力がとてつもなく強い。そして、想いを形にする力に長けている。
 
父親は自営の工務店業の傍ら、本格的な家庭菜園をしたり、鶏を飼って卵産ませて販売したり、錦鯉を養殖してみたりと多岐にわたり商いをしていた。そんな父親の口癖は、
 
「人間、死ぬ気でやればなんとかなる!」だった。
 
僕自身、人生折り返しの歳になり思案する時間も増えてきた。
考えるのはいつも、日々命を燃やして一生懸命に生きているだろうか。ということ。
答えはもちろん、ノーだ。
 
例えば、父親のように3人も子供を育てる経済的精神的な余裕があるだろうか。独立起業というリスクをとって、成し遂げたい社会の課題があるだろうか。いま置かれている環境が変われば、父親のように死ぬ気でやればなんとかなる経験をつめるのだろうか……。
 
考えれば考えるほど、「できない理由」しかでてこない。なんとも情けない。
ネガティブな考えは健康にもよろしくないと考え、2022年は様々なチャレンジを本気でしてみる! という目標を立て、新年度の新しい手帳に大きな字で目標を記した。
 
目標を立てて本気で活動すると、すぐに変化が訪れた。
 
外部の集まりに参加することで、年齢を問わずつぎつぎと人脈が作れていった。
日記を書くことで、毎日ネタを探すようになった。
新規事業の提案が承認された。
グループ会社の代表取締役社長の内定がでた。
起業をしようと決意できた。
そして、ライティングゼミに参加する機会を見つけられた。
 
尊敬する父親だが、10年前の遺産分割では、彼の人間らしい素の一面を知ることとなった。
 
まず、母親が5番目の奥さんであったということ。バツヨン………。
僕が生まれてきたのが、父親が50歳の時(今の僕より年上)というのも納得ができた。
ちなみに、前の4人の奥様には、全員お子さんがいらっしゃいました。
 
遺産分割協議では、激しい恨み辛みを各ご家族からぶつけられた。
ある日突然父親がいなくなる。この環境でとり残された奥様や子供のことを考えると聞くのも心苦しかった。本当に申し訳ない気持ちで一杯でした。
唯一幸いだったのは、どの子供たちも全員開業医だったこと。どこかで父親に再開できる確率が一番高い職業に就こうと決心し、怒りの方向を変え医者になるための勉強に打ち込んだとのこと。
そして極めつけは、遺品整理だった。
 
大きな年代ものの革の鞄から、父親に宛てられた手紙と写真の数々がでてきた。
手紙に日本語はなく、それぞれ英語、スペイン語、ポルトガル語で書かれており、差出人の住所もアメリカ、ペルー、ブラジルとなっていた。
 
写真には父親の姿も収められていた。が、全部別々の家族写真だった。
手紙を翻訳すると、父親に対する愛情の言葉、帰ってきてほしい懇願の言葉ばかりだった。つたない文字や文章もあったが、それはきっと二人の間に生まれた子供が書いたに違いない……。
 
日本だけでなく、海外でも同じことをしていたのか………。
 
「死ぬ気でやればなんでもできる……」
た、確かに………。
 
青春時代、戦争が原因で失われた時間を取り戻すため、無我夢中にがむしゃらに生存本能全開で生きていたのだろうな。とすべての遺品を整理し終えプラス思考で受け止めたのを覚えている。
 
しかし、僕ら家族にばれないとでも思っていたのだろうか………。
今となっては、もう質問もできない。
 
父親の人生と比べると、僕はいま外部環境から抑圧されて生きているわけではない。また、この先死ぬような場面に遭遇するともなさそうだ。
 
父親の女性にまつわることでは何一つとして尊敬はできないが、それ以外で、残りの人生を父親のようにがむしゃらに生きてみようと思う。父親の口癖を思い出しながら。
 
「死ぬ気でやればなんでもできる!」
 
 
 
 
***
 
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2022-02-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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