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Kissa


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記事:油井貴代子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
今年の冬は特に寒かった。雪もよく降った。
そんな寒い夜、私は一匹の野良猫に気が付いた。職場の向かいの家の外で、ニャーニャーとかわいい声で鳴いて、食事のおねだりをしている。
最初はその家の飼い猫だと思っていたが、数日様子を見ていると、エサを与えているだけだと気が付いた。その家は犬を飼っていて、猫がエサをねだりに来ると必ず吠え立てる。寒空の中、じっと塀の上で食事を待つその猫の様子を見て、だんだんかわいそうになってきた。
 
私は犬も猫も飼ったことがない。子供の頃、生垣に入ったボールを取るために入れた手を、猫にひどく引っかかれた。それ以来、猫は大の苦手だ。犬派か猫派かと聞かれたら、迷わず犬派と答えていた。
対照的に娘は大の猫好きで、子供の頃から猫を飼ってほしいと私にねだっていた。ただ重度のアレルギーで喘息も起こしていたため、それを理由に断っていた。何度もねだる娘に、自分一人で住むようになってから自分の責任で飼いなさい、そう言い聞かせていた。
 
昨今の猫ブームの中、SNSに上がってくる猫の写真や動画、そしてテレビ番組などを利用して、娘は猫の可愛さを私や主人に洗脳してくるようになった。あれほど苦手だった猫が、かわいいと思えるようになってくるのだから不思議だ。主人など、猫とおじさんのほのぼのした風景に、自分を重ねていたくらいだ。
自宅の近所には外飼いの猫がいて、ガレージに勝手におしっこをしていくので困っていた。ところが洗脳された私は、猫の名前を呼んでかまってやるようになった。するとゴロゴロと鳴きながら寄ってきて背中を撫でさせてもらえるようになった。やばい、これはかわいい。私の中で猫を飼ってもいいかな? という気持ちが膨らみ始めた。
 
同じ猫を飼うのであれば保護猫を飼おう。
以前から処分される猫がいることは知っており、良いご縁があれば保護猫を引き取ろうと考えた。しつけもされていて、去勢やワクチンなど、ある程度の医療行為も受けている子猫である。初めての飼育ということもあり、手軽に飼い始めることができるのが、私にとってはメリットに思えた。
ところが、いざという時になって主人が渋り始めた。世話を主人に任せるつもりはなかったが、私自身が仕事や趣味で数日家を留守にすることがある。娘が家にいる間はいいが、家を出てしまった後に主人の協力なしでは飼育できないと考えた。
「もう少し、飼うのを待ってくれる?」
娘にはそう話をしたが、すっかり猫を飼うイミングを逃してしまった。
 
ところが今、目の前に震えている猫がいる。
だんだんと私の中にその猫を保護したいという気持ちが芽生えてきた。娘に相談すると、かわいそうだから飼ってあげようという。主人は二人でちゃんと世話をするのであれば、と許可をしてくれた。
幸い職場に保護猫の活動をしている人がおり、捕獲器を貸してくれることになった。
猫を飼うためのケージやエサ、トイレ用品などを買い込み、すぐに病院に連れていけるという日を選んで決行。その猫はうまく捕獲器に入ってくれた。
ただ、もともととても警戒心の強い猫だったようで、暴れ、怒り狂い、手のつけようもなかった。なんでこんなかわいそうなことをしてしまったんだろう、と思ったがきっとそのうち慣れてくれるだろうと家に連れて帰った。
しかし、私はとても甘い考えで捕獲してしまったとすぐに後悔することになる。エサをあげようとしても、私を睨みつけ威嚇と猫パンチで受け付けてくれない。私はただただ恐怖に怯えた。
大人になった猫はなかなか人になつかないようだ。もし私が猫のことが大好きだったのなら、そんなことには怯まずに接することができたのかもしれない。
小さな命を助け、温かい家の中で一緒に仲良く暮らそう、という考え方は私のエゴに過ぎなかったのだと思い知らされた。家に連れて帰ってたったの二日で、私は疲れ切ってしまった。
かといって、弱っている猫をいまさら外にほりだすことはできない。その子は三日目にようやくエサを受け入れてくれた。きっと私と同じように、心身ともに疲弊していたんだと思う。それからは私を食事係と認識し、おとなしくエサを待つようになった。
この子が安心して暮らしてもらえるように、努力を続けよう。なにより、協力を期待していなかった主人が、あれこれと良いアイデアを出してくれる。私にはとても意外だったが、主人なりに一つの命を考えてくれているのがうれしかった。
 
自分の中のエゴを知ったように、この子はきっとこれからも私にいろんなことを教えてくれるに違いない。
猫を「キッサ」と名付けた。フィンランド語でKissaは猫という意味である。
キッサ、ようこそわが家へ。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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