大嫌いだった母の背中を手本に生きると決めた理由
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:J子(ライティング・ゼミ福岡会場)
「あすか!また風呂掃除忘れとるやろ!ちゃんとしなさい!」
うちは自営業だ。 祖父の代から始まり父が2代目の藤下機械店。 農業機械の販売や修理をするお店だった。 働いていたのは父、母、修理スタッフの3名。
母は経理やお客様への接客対応で忙しく、家事は姉と妹と私が担当だった。 私の担当は風呂掃除。 友達の家に遊びに行くにも風呂掃除が終わっていないと遊びに行けなかった。
夜ご飯は3姉妹でじゃんけん。 勝った人が料理を作る、食器をさげる、食器を洗うの3つの中から最初に選べる。 毎回じゃんけんの時間になるとこたつの中に隠れていた。
小学2年生の秋の出来事。
いつも通り「おばあちゃん、ともだちの家に行ってくるね!」と家を飛び出した。
友達の家に行くと子犬がいた。 拾ってきたそうだ。
「捨て犬のための秘密小屋を作ろう!」みんなで力を合わせて作っていた。
やっと秘密小屋が完成し帰宅。
「あれ?鍵が開かない。お母さん!鍵あけて!」
と叫ぶと、
「あすか風呂掃除してなかったでしょ。罰として家には入れません」
あ! 風呂掃除忘れていた!
「どうしよう」
窓が開いているかもしれない。 1階はきっと閉まっているはずだ。 2階なら鍵がかかっていないかも。 塀によじ登って2階の窓の鍵をくまなくチェックしたが空いていなかった。 少しずつ日も落ち寒くなってきた。
「あすかちゃん、ほら、ここから入りなさい」
助け舟をだしてくれたのは大好きなおばあちゃんだった。
犬小屋で寝る覚悟を決めようとしていた私はおばあちゃんに助けられた。
「手伝い手伝いばっかりで私は働き者のアリじゃないのに!お母さんなんて大っ嫌い」
不満爆発寸前の子供時代だった。
高校生になり進学の時期がきた。
「女は手に職をつけた方がいい」と看護師や教師を進める母。
大学受験は失敗。 念のためで受験していた看護学校に唯一合格。
結局看護学校に進学したがそもそも看護師になりたい思いはないので、続くはずがない。
1ヵ月半で自主退学した。
実は密かな夢をもっていた。
「いつか日本と海外の架け橋になるような仕事をしたい」
両親をなんとか説得し、福岡大学へ翌年入学した。 大学時代はアメリカへ1年間交換留学し、アメリカやカナダを一人旅した。
寮生活をしていたアメリカ人のトリシアは毎週末実家に泊まらせてくれた。 トリシアのお母さんは優しかった。 もちろん風呂掃除なんてしなくていい。 自由に過ごさせてくれた。 実家から離れてアメリカで過ごす時間は本当に心地よかった。
母のことを思う時間は3秒もない日々だった。
大学時代の4年間、実家に帰省した回数は3回程度。 とにかく母から離れたかった。
就職は福岡に決めた。
新人時代の私は本当にポンコツだった。 FAXもろくに送れない、取引先の社長を怒らせる、空気が読めない。 今思い出すと冷や汗がでるほどダメな新人だった。 朝4時まで企画書を作り非常階段で仮眠していた。
そんな時父から1本の電話が。
「発明した農機具を雲仙市の助成金事業に申請したい。自分は字を書くのが苦手だから、おまえが企画書を作ってくれないか?」
との相談だった。
「いいよ」と返事をして実家の仕事を手伝う日々が始まった。
長崎の実家に同居することになった。 約10年ぶりの母との同居生活だ。
まずは母の仕事を手伝うことになった。
仕事内容は経理やお客様へのお茶出しなど。 母はその当時手書きで経理の仕事をしていた。
「こ、こんなに忙しいのか」
が正直な感想だった。
現金を数えていたらお客様がご来店。 お茶をだして、現金を数えなおそうとしたら再びお客様がご来店。 経理の仕事が全然進まない。
家に帰ってきても、深夜近くまで母は領収書をノートに貼っていた。 母は父と結婚し経理の仕事をやりだして30年ずっと続けていたのだ。
仕事を一緒にすることで、少しずつ母への気持ちが変化していった。
その後私は結婚し長女を出産した。 昔母がやっていたように仕事をしながら育児生活が始まる。 娘と遊ぶ余裕がない。 私は子供が1人だからなんとかやっていけているけど、母は3人を育てていたんだよな。 こんなに多忙なら、そりゃぁ3姉妹に家事を頼まないとやっていけないなと気づいた。
嫌な思い出ばっかり頭の中にあったはずなのに、どんどん母との楽しい思い出が溢れだしてきた。
夜ご飯を食べた後にお客様の元へ集金に行くことがよくあった。 母は三姉妹を車に乗せ
集金が終わった後は必ず喫茶店に連れて行ってくれた。 喫茶店で飲んだクリームソー
ダの甘い味を思い出した。他にも仕事の合間をぬって手作りのお饅頭やパンを作ってくれ
た。毎年お正月には3姉妹に着物を着せてくれて祖母の家に連れて行ってくれた。
「お母さん、子供たちの為に一生懸命働いてくれて楽しい思い出作ってくれてありがとう。私、お母さんさんのようなパワフル母ちゃんを目指すよ」
***
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