子育てとは花畑ではなく森を育てること
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記事:長谷川徳子(ライティング・ライブ大阪会場)
子育てとは花畑ではなく森を育てることだと思う。
花畑というと最初に浮かぶのがこんなイメージ
菜の花畑
ひまわり畑
チューリップ畑
こういう景色を見て、必ず使われる表現は
「どこを見ても、一面の○○」
そう、端から端まで全部同じ花が咲いているのが花畑のイメージだ。
8年ほど前のことだったと思う。
私鉄と地下鉄を繋ぐ連絡通路を娘と二人で歩いていたときのことだった。大声で泣き叫んでいる子供の声が聞こえてきていた。私達の前の方で、小さな子どもが大の字で床に寝そべって、泣き叫んでいるようだった。
そんなふうに意思を伝える子どもの姿を久々に見たな~、そういえばウチの娘にもそんなことがあったな~ と昔のことを思いだした。
ムスメが4歳ぐらいの頃だったと思う。1月2日の初売りの日に、私の母と3人でデパートにウィンドーショッピングに行ったときのことだ。3人ともそれなりのおしゃれをしてぶらぶらしたのはインターナショナルブティックエリアと言われる、海外のハイブランドエリアだった。そのエリアのESCADAのブティックの前で、何か気に入らないことのあったうちの娘は「イヤ~~~!」と大声で叫びながら床の上をごろごろと4回転したのだ。
そして、その姿を見た私の母は、小さなか細い声で「キャー」と悲鳴を上げた。
娘がなぜそんなことをしたのか? そして、その後どうしたのか? もう全く記憶にない。でも、その時の母の悲鳴と、娘が来ていたベビーピンクのダウンコートが私の靴先から向こうへごろごろと床を転がっていく映像は、今でも鮮明に思い出せる。
私は床に寝そべった子どもを横目で見ながら、数年前の我が娘の「床をゴロゴロ転がる姿」を思い出して、娘に話しかけた。
「小さい子どもは、みんな、あんなことするもんやねん。あんたもやったやん、ほら、高島屋の~」
という話の途中で、「ほんとに?」という声とともに、誰かが私の左腕をつかんでいた。
「ほんとにそうなんですか? お嬢さんもそうだったんですか? うちの子だけじゃなく? みんなそうなんですか?」
その大の字で床に寝転がっているお子さんの母親は、そう言いながらぽろぽろと泣いていた。
通行量の多い通路で、ぎゃんぎゃん泣きながら床で寝そべっている子どもを冷たい目で見る人もいたのかもしれない。また、その子供に対して何もできない母親として、恥ずかしい思いをしていたのかもしれない。そして、自分の子がこんなふうに床に寝そべって泣き叫ぶのは、自分の育て方が悪いからだろうか? と自分を責めていたのかもしれない。
その泣き顔を見て、私は、その辛さが少しだけわかる気がした。
「この子だってほんまに床を転がってたから、ほんまよ。大丈夫。そういうことを、みんなわざわざ言わないだけやから、大丈夫!ちゃんと大きくなるから!」と、なぜか私も泣きながら話していた。最後に私達は握手をして別れた。
今でもその通路を通ると、ただ励ましただけで別れたその親子のことを思い出す。
社会に出てウン十年、色んな人がいるのが当然ってわかるのに、なぜ子どものときは、周りと同じでないといけないと思っていたのだろう?子育て中に、自分の子が周りと少し違うことをするだけで、針のむしろに座ったような(リアルに座ったことはないけれど)そんなすごい拷問を受けてるような気持ちにさせられたのだろうか?
なぜ一面同じお花のお花畑でないとダメなのだと思ってたのだろう?
チューリップ畑で咲いていいのはチューリップだけって誰が決めてたんだろ?
チューリップ畑にたんぽぽが育っててもいいのでは?
昔、調香の講座で、講師の先生が言っていた言葉を思い出した。
「自然界には、ラベンダーだけというような1種類のみの香りなど存在しません。自然界では、ラベンダーの近くにはレモングラスやサンダルウッドや色んな花や木々があって、その組み合わせで香りができるのです。それが本当の自然の香りです。そういう複合的なものが自然なのです。」
私達大人は、子どもを森だと思って育てたらいいのではないかと私は思う。竹のようにぐんぐん上に伸びる木、苔のように湿った地面でじんわりとひろがる植物、やまゆりのように香り高く咲き誇る花、それぞれが、それぞれの好きな場所で、大きく育つ。それぞれがあるからこそ、森はうまく行く。全部その森の大切な性質だ。
そう、森で育つ木々や花のように、いろんな癖や性質で子どもができていると思えば、そして、そのままうまく育つと思って育てていければ、きっと泣きながら子育てするお母さんは減ると私は信じている。
***
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