少女漫画の王子様系男子より、少年漫画のど根性系ヒーローが推しの理由
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記事:中江 園加(ライティング・ゼミ12月コース)
「なんかさ~、年々好きになるタイプって変わってくるよね~」
久しく「好きな人のタイプ」なんて話題になることもなかったし、むしろ考えることすらしていなかったが、高校時代からよく知っている女友達のこんな一言がきっかけとなり、思い返してみると、確かに変わっていることに気が付いた。
昔と今とでは、好きになるタイプが違う。
芸能人の好みはもちろん変わったし、私生活での好みのタイプも確かに少しずつ変わっている。
何もその変化は、「燃え上がるような恋」より「疲れない安定した恋」を求めるようになった、とかではない。
もっと深い、根本的なことから変わったように思うのだ。
確か昔は、かっこよくて優しくて、何事にもスマートで、涼しい顔をしてなんでもさらりとこなしてしまう、そんないわゆる「少女漫画に出てくるようなキラキラ王子様系男子」がタイプだったように思う。
例えば高校生の時なんかは、入学した初日、出席番号順に並べられている机の中で、自分の後ろの席だった男の子にプリントを回そうと振り向いた時に、予期せずその後ろの男の子とばっちりと目が合った。視線を逸らすことなく、さわやかな笑顔で「ありがとう」とその男の子に言われた瞬間に、もう好きになっていた。いわゆる人生で初めての「一目惚れ」というもので、その入学式の日から卒業式まで続く、三年間の淡い片思いがその日から始まったのだ。
しかし、今にして思えば相手のことをまだよく何も知らないのに、実に三年もの長い間好きでいられるなんて自分のことながら、一体何を好きだったのかよく分からなくなる。
確かに後ろの席の彼は、みんなに優しかったし、いつも友達に囲まれていて楽しそうに笑っていて、その子が怒っている所や悔しがったりしている所なんて全く見たことがない。というか、彼がそんな感情を出してくれる程近い距離に私はいなかったのだろう。
しかしその頃の私は、いつでもスマートで熱くなることなんて無縁な涼しげな彼をこっそり盗み見ては「今日は一言でも話せるといいな」なんて胸をときめかせていた。
それから十数年の時が経ち、多くはないが恋も何回かしてきた。
色んな経験をして、色んな楽しい思いもしたし、悲しい思いもした。
そして、そんな私が今思うのは「少女漫画に出てくるようなキラキラした王子様系男子」より、「少年漫画に出てくるような、暑苦しくても、みっともなくても、藻掻きながらあきらめずに必死に頑張っている人」の方が好きなタイプだということ。
昔は暑苦しい人が苦手だった。なんでもスマートにできる人が好きだった。
でも大人になって変わった。
なぜなら、生きていくということは綺麗ごとだけではないと知ったからだ。
自分の人生に本気になると、みんな少年漫画みたいに暑苦しくなって、顔だって涙でぐちゃぐちゃだけど、必死で何度でも立ち上がろうとする。
少女漫画みたいに涼しげでさわやかな顔もしてないけれど、そんな風に必死で藻掻いている姿の方がかっこいい。
生きていれば辛いことも悲しいことも苦しいこともある。
悔しくて眠れなくなる日も失敗して泣きたくなる日も、焦って自分を見失う日だってある。
というより、もしかしたら人生なんてその連続なのかもしれない。
少年漫画で強敵を倒して平和になって安心したのも束の間、またすぐに新たな敵が目の前にいつも現れるように。
だから負けたって、泣いたって、倒れたって、例え一度は逃げることを選択したとしても、何度でも立ち上がり、挑み続ける勇気が必要になってくるのだ。
少年漫画に詰め込まれている「友情と努力」は、現実を生きている、今の私達の戦いにこそ生かすべきものなのではないかと思う。
そしてそこに相応しいヒロインもまた、少女漫画みたいに王子様に助けられるのを待つような女の子ではない。
一緒に戦い、一緒に泣いて、一緒に泥だらけになっても、何度でも立ち上がれる強さやしなやかさを持っている魅力的な人がきっとヒロインに良く似合うのだろう。
さて、そんな憧れのヒロインになる修行をしながら、同じ目的地を目指せるヒーローが、少女漫画のように都合よく目の前に現れるのを気長に待ちながら、ひとまず今日は眠りにつくとしよう。
***
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