メディアグランプリ

地図を持たない子どもたち


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記事:Marie(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
毎月、私は子ども向けの博物館で、様々な仕事を子どもが体験できるコーナーでスタッフとして、ボランティア活動をしている。その活動の中で、「音効さん」のお仕事の体験ができるコーナーを担当している。「音効さん」がどんなお仕事をしているかを説明しながら、効果音という音作りを一緒に楽しんでいる。
 
ところで、「音効さん」はどんなお仕事をしているのでしょうか?
 
一言でいうと「作品に音をつける」仕事である。アニメやドラマを観ると、セリフ以外にたくさんの「音」が使われている。ワンピースのアニメを例に出すと、ルフィーがゴムゴムの手で敵を殴るときに「ビヨーン! バシュッ!」という音が鳴る。この「ビヨーン! バシュッ!」を作るのが、音効さんの仕事だ。
 
その他、虫の声、風の音、雨の音、ドアの開け閉めの音など、様々な音作りの仕事がある。例えば、「カエルの鳴き声」。田んぼでカエルを探し出してカエルにマイクを向けて、「ゲコゲコ……」鳴き声を録音してもいいかもしれないが、雑音も入るのでうまく録音できない。
そこで、音効さんは、カエルの鳴き声を再現するために、二枚の赤貝の殻を両手に一枚ずつ持って、ギザギザの貝の背中どおしを擦り合わせて「ゲコゲコ……」と音を出して「カエルの鳴き声」を人工的に作るのだ。
 
こういう音作りの体験がスタジオでできる。スタジオの中には、お菓子の袋、紙、梱包材、鍋の蓋、スリッパなど、家にあるような身近なモノがたくさん用意されており、その中から子どもたちが自由に音を鳴らして効果音を作ることができる。
その音作りは子どもたちの感性で作り上げていくので、不正解はなくて、子どもたちが作った音が全て正解だ。
 
コロナ禍でお家の方からは「(公共の)物に触っちゃだめ」と普段から言われていることが多いのか、「このスタジオでは、全部消毒しているから自由に触ってもいいよ」と、子どもたちに伝えると、みんな目をキラキラさせて、色んな物を触って無邪気に遊んでいる。
 
音のないモニターの画面を見て、「この音を作るのに何を使ったら、音が出るか?」という探し物ゲームをする。
子どもたちは、目の前にある玩具やお鍋、お菓子の紙など様々なモノに興味をもって、一通り触って、音を鳴らして確認をする。その時の子どもの顔はワクワクした楽しそうな笑顔をしている。
 
子どもたちが作った音が全て「正解」なので、この音が「不正解」ということはないのである。子どもはその場を最大限に楽しむ天才で、帰るときには「楽しかったー!」と無邪気に笑ってスタジオを出て行く。
 
一方、大人の方からは帰るときに「どれが正解だったんですか?」と時々質問される。
「このゲームには正解はないのです」と、いつも私は答えている。
この経験から、「不正解がない」イコール「自由」イコール「だから楽しい」という関係性を子どもたちから学ぶことができた。
 
改めて考えると、私たちは、常に迷路ゲームをしているのではないかと思う。
子どもたちは、地図を持たずに歩いている。今、目の前にあるモノに好奇心を持って触りながら、確認をし、自分で考え出したアイデアに夢中になって辿り着く。地図を持っていないから、ひとつひとつ「どうだろう?」と確認しながら、前に進むのだ。先がどうなっているかがわからないからこそ、「今」という瞬間を大いに楽しむことができる。
 
一方、大人たちは、地図を持って歩いている。目の前にあるモノを見ただけで、そのモノがどんな音が鳴るのかすぐに想像できてしまう。大人は「答えはコレでしょう?」と簡単に答えを出してしまい、アイデアを出す過程を楽しむことができないことがある。早く答えに辿り着こうとするので、目の前にある全てのモノを一通り、試してみることをあまりしない。
今までの経験から、予め、答えはだいたいコレだろう? と決めているからだ。
 
「地図」とは、経験からのイメージや想像、固定観念で、時には、その「地図」が前を進むことを邪魔をしてしまうことがある。
 
「地図」を持っている大人と「地図」を持っていない子ども。
どちらが楽しく過ごせるだろうか?
 
断然、地図を持たずに歩いた方がたくさんのワクワクを感じながら楽しく過ごせることは想像できる。大人はもうたくさんの経験を積んでいるので、子どもの気持ちに戻れないかもしれない。でも、子どものそばに立って、子どもの気持ちに寄り添うだけで、目の前に広がる世界が変ってくるのがわかる。
 
子どもたちの視点のように、大人も「どうだろう?」「なぜだろう?」と常に考えながら過ごして、たくさんのアイデアの中から自分だけの答えに辿り着いたとしたら、きっとその過程はとても楽しいだろう。
その積み重ねで、「今」という瞬間、「今日」という1日をもっと楽しめたら、人生は今以上に楽しくなるだろう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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