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メディアグランプリ

息子との散歩は、プリクラである


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久田 一彰(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「だめだ、腰がめちゃくちゃ痛い。今日は散歩に行けないかもしれないな」
昨日から腰が痛くなったのだが、今日もまだ痛みが続いている。
 
まだ歩けない一歳の息子を抱えての散歩が休暇の日課だが、リビングのソファに腰を下ろした。目の前の息子は外に出る気配を察知したのか、なんだか期待の眼差しでいるところ悪いが、腰の痛みはまだまだ落ち着きそうにない。
 
米俵みたいな、石になった子泣きジジイの様な、息子を抱えて散歩したからだろうか。
こうなった原因は全く分からない。
 
20代の頃は考えたこともなく、30代の前半でも痛むことはなかった。
30代後半になり子育てをしてこうなったのだろうか。
 
息子を高い高いと遊んだり、寝かしつけで泣き止まないから抱っこし続けたり、お風呂に入っているときに抱えたりしたから、ダメージが蓄積したのだろうか。
こんなダメージの貯金なんて嬉しくもないのに。
 
いや、もしかしたら体重が増えているから、腰回りにダンベルの様な贅肉があるからか、身体を支えるのにSOSが出ているのかもしれない。
 
と、いろいろ考えてみたが、とにかく腰が痛いのだ。
 
「やっぱり今日は散歩に行けないよ」と向こうにいる妻に伝えると、
「じゃあ今日はベビーカーを使ったら?」とアドバイスをもらった。
 
なるほど、抱えて散歩に行けないのであれば、その手があるのか!と感心する。
これで散歩に行ける!と思った途端、目の前の霧が晴れたような感覚だった。
 
「じゃあ、行ってくるね」
早速ベビーカーに息子を乗せて出発した。まだ肌寒いので、タオルケットを包ませる。
足も出てしまうと寒いので、風に当たらないようにすっぽりと覆う。
 
家を出発してすぐに、なぜか近所の人の中で遭遇率N0.1のおじさんに挨拶をする。
 
ベビーカーを押しながら家の周りをぐるりと散歩する。
まず向かったのは、近所の小さな公園。
小高いところにあるので、金網の向こうには街や道路や車が走っている。
 
そこから走る車を「おっ!」と言って息子は指差す。
トラック、コンクリートミキサー車、軽自動車、バス、タクシー、ワゴン車。
まるで車がランウェイを歩く様に、眼下を走っていく。
 
ひとしきり車を堪能した後は、来た道を引き返して家に戻る。
まだ会話にはならないが、一緒にいるわずかな時間は、とても楽しい時間だ。
 
だけど、いつまでもベビーカーのままの散歩ではない。
そう、子供の成長はとても早い。
 
成長するにつれて、ベビーカーは使わなくなっていった。
 
次はよちよち歩きになったのだ。
そして、倒れないように私の指をぎゅっと握ってくれる。
その感覚は、父親冥利に尽きる胸キュンな瞬間だ。
 
しかし、この時間もあっという間に過ぎていく。
 
今や、その手を離せと言わんばかりに、手を振りほどき、タッタカタッタカと走る。
坂道をどんどん勢いよく走っていく。
勢いあまってこけてしまい泣くこともあるが、また起き上がって走る。
 
ベビーカーを押して散歩していた頃から、わずか1年間でこんなにも成長したのだ。
20分の散歩も、今や1時間を超えることもある。
その様子は散歩を通じて見てこられた事は、とても喜ばしいことだ。
 
散歩の初めの頃は、言葉がまだ分からないだろうが、何度も話しかけるようにした。
その効果はあったのか、時々うなずいたり、しゃがんで花を見たりする。
 
「あれは犬だよ、わんわんだね」
「花が咲いているね。これは水仙だよ」
「見て、土手につくしがニョキニョキ顔を出しているね」
「いちにさんぽ、とうさんぽ」とリズムよく鼻歌にする。
 
やがて歩く距離がどんどん伸びて、交差点にも差し掛かる。
 
信号機や自動車を指差しては、「あか、あお」とその色も認識してきたし、ミニパトカーが交番に停まっているのを見つけては「パカー」とも言える様になった。
犬が通れば「わんわん」という様にもなった。
 
そうか、繰り返し散歩して話しかけることで、だんだんとわかる様になってくるのだ。
 
今までは一方的に話しかける、いわば1人で壁にテニスボールを打ち込んでいる、様なことでも、しっかりと受け止めてくれて身についているのだ。
 
息子は教わる訳でもなく、自ら日々学習しているのだ。
 
そうとわかれば、ただ散歩するだけではもったいない。
こんな機会は今だけなのだから。
 
そう思った私は、散歩の様子を、影だけの私と息子とのツーショット写真を残すことにした。
まるで私と息子のプリクラだ。
 
春には桜と一緒の写真。
夏には若葉と一緒の写真。
秋にはドングリと。
冬には耳当てした帽子の写真と。
 
毎回影の写真は違った表情を見せてくれる。
息子も成長しているし、季節も日々変わるので一つとして同じ写真はない。
 
この写真は何枚貯まるのか、500玉貯金のようにワクワクしている。
息子がわかる様になって写真を見せたらなんて言うかな。
 
恥ずかしがるだろうか、嬉しがるだろうか、それとも反応しないのか?
タイムカプセルを埋めたみたいに、未来を想像して、今日もまた散歩をして1枚写真を撮った。さあ、次の散歩はどんな写真になるか、楽しみだ!
 
 
 
 
***
 
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2022-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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