メディアグランプリ

時間泥棒が退散したとき


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記事:Marie(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
去年、家の片づけをしていた時に部屋の奥にしまっていたお琴が出てきた。
学生時代に筝曲部でお琴を弾いていたので、とても懐かしく、片づけの途中だったが、思わず弾きたくなった。
お琴は、13本弦があり、弾く前にお琴の弦に琴柱(ことじ)を1つ1つ立てて調弦をしてから弾く楽器だ。早速、調弦をして弾いてみると、不思議と調子良く音がでた。
 
25年近く前に弾いていたお琴。頭では完全に弾き方を忘れていたが、手がなんとなく覚えていて、初心者用の練習曲が少し弾けた。楽器の演奏も子どもの頃に覚えた自転車と同じなのだろう。どうやら全く忘れたわけではないようだ。確かに感覚は体の中に少し残っていた。
 
ところで、私は、つい最近まで「忙しい」「時間がない」と毎日、口癖のように言っていた。「時間がない」と思えば思うほど、時間泥棒に時間を盗まれてしまっていたのだ。自分自身と静かに向き合う大切なプライベートな時間が作れずにいた。仕事、家事、身体を休める時間など絶対に譲れない時間を除くと、自分だけの時間はほとんどなかった。というか、時間がないと思い込んでいた。
興味がある事や学ぶことに時間を割くことは、自分に投資することで、長い目で見たら、一番大切なことだとわかるのについ後回しにしていたと思う。
 
そして、半年前、自分の時間をもう一度見つめ直して、週に1回は「絶対この時間は自分だけの時間に使うぞ」と心に決めた。
 
「仕事の次に最優先するスケジュールは自分磨きのための『自分時間』だ」と。
そう決心したら、時間泥棒はいつの間にか退散して行った。
 
時間をやりくりして、自分を予約し、大切な「自分時間」を有効に使うため、長年、いつかは再チャレンジしたいと思っていたお琴を習い始めた。
まずは、ゆっくりと初心者用の練習曲からのスタートだった。瀧 廉太郎さん作曲の「荒城の月」という曲を稽古した。この曲は日本で作曲された初めての西洋音楽。小学校の教科書でも習った。メロディーはすごくいいが、弾いてみると少し難しい曲だった。何度も何度も練習して、ゆっくり弾けるようになった。小さなステップだったが、達成感を味わえて、大きな喜びに変わった。
 
今は、菊城正明さん作曲の「花すみれ」という曲を練習している。私にとって「花すみれ」の曲は、学生の頃、初めての舞台発表で弾いた思い出深い曲だった。
春に筝曲部に入部して、夏休みに猛練習をして、緊張しながら新入生全員で合奏をしたことを今でもはっきりと覚えている。
しかし、卒業してから1度も楽器に触れていなかったので、もうすっかり弾き方を忘れてしまい、イチからのスタートとなった。
学生の頃は、クラブのメンバーで1週間合宿をして曲が弾けるまで、朝から晩まで毎日何度も練習することができたが、社会人はどこで時間を作って練習しようかと、時間の制約もあって大変だ。
 
正直、一度やめたことに再挑戦することは、少し勇気がいるかもしれない。再挑戦し始めたときは、少々自分に苛々する。「昔は若かったからできたのだろう」とか、「昔は時間があったから達成できたのだろう」とか、気弱なことばかり考えてしまい、最初は、なかなか滑らかには回らなかった。始めは思うように手が動かず、集中もできなかった。時々、自分で決めた練習時間に、うっかり他の予定を入れてしまうこともあって、練習しないでレッスンに行くことになり、あとで後悔したこともあった。
 
それは、ちょうど、ハンドルを手でクルクル回す手動の鉛筆削りのようだった。
回し始めはクルクル……ではなく、ガリガリ、ゴリゴリという結構な騒音が響く。ハンドルが固くて、最初の1周目には力がいる。
でも、2周目、3周目……。鉛筆の芯が削れてくると、カサカサ、クルクルという静かな音に変化し、ハンドルもいつの間にか軽くなっている。
 
お琴を習い始めて今月で半年経った。今は、家で楽器に向き合う時間は、自分自身と向き合う大切な時間となっている。曜日と練習時間を決めて、短い時間でも稽古するようにしている。3カ月過ぎた頃から、段々とそれが習慣になってきた。クルクルといい感じに自分時間が回ってきた。
 
「自分時間」とはもともと存在するものではなくて、意識して捻出するものだろう。
 
少しの勇気と時間をやりくりすることで、時間泥棒に奪われた時の焦りの気持ちが少しずつ消えていった。

日常から少し離れて楽器に触れていると、弾いている時間は気持ちが豊かになれる気がする。生活に潤いができて、小さな幸せを感じとれるようになってきた。
最近は、以前より、少し前向きに物事を考えられるようになった。
 
やりたいことは、いつからでも、何歳になってもチャレンジできるのだろう。
 
でも……。
いつか始めよう! 時間ができたら好きなことをしよう!
と考えていたら、もしかしたら、その「いつか」はずっとこないかもしれない。
 
私は、これからもずっと自分を毎週「予約」し続けて、誰が何と言おうともスケジュールの中に「自分時間」を入れるつもりだ。
 
まずは、隙間時間を見つけて、自分だけの大切な時間を作ることから始めよう。
あなたがもう一度挑戦したい趣味はありますか?
 
 
 
 
***
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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