メディアグランプリ

その病院で、いいですか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北見 綾乃(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
もし、最初に行った病院の「様子を見ましょう」をそのまま素直に受け入れていたら。
 
たとえ命にかかわる病気でなくても、病院選びや治療選びでその後の生活がガラリと変わる。そんなことがある。
 
私は、10年ほど前から年々ひどくなる月経時の痛みと出血量の多さに悩んでいた。
 
痛みがひどい時には転がっているだけで何もできなかった。
出血量がナプキンの吸収量を超え、大惨事になったことも、数多く……。
さらには、出血する期間も長く、通常1週間以内で終わるはずが、2週間くらい続く。生理が始まってから次の生理までは4週間とすれば、1か月の半分が出血しているのだ。そのせいか貧血となり、ちょっと動いただけで息切れがする。内科で処方された鉄剤を常用していた。
 
こんな状態では何かをしたいという気分にはなれず、とにかく生活の質が悪かった。そこで、仕事を休み、近所の産婦人科に相談してみた。
 
「うーん、診察した限り、特に治療が必要な状態ではないなぁ。ピル(ホルモン剤)を使うという手もあるけれど、副作用があるからねぇ……。ところで今、何歳だっけ?」
 
「44歳ですけれど……」
 
「そう。じゃあ、まぁ、もうちょっとすればほら、閉経になるし、ね。リスクを冒すより、様子を見た方がいいんじゃないかな?」
 
ということで、何もせず、様子を見ましょう、という結論になった。そこの病院では「ピルを使う」という選択肢以外なく、副作用を考えたらやめた方がいいというのだ。そう言われたらあまり強くは言えなかった。
 
しかし、心の中では、
「このままつらいまま様子を見るなんて……!」
と、絶望の声をあげていた。
 
「だって、“もうちょっと”って言ったって、後10年くらいはこの状態のまま、つらい生理とつきあわなくちゃ、いけないわけでしょう?」
 
未来に暗雲が立ち込めているような状態だった。
 
 
それを周囲に愚痴ってまわったところ、なんと趣味を通じて知り合っていた仲間に、産婦人科の医師がいたのだ! 奇跡……。彼女から「ミレーナ」という医療器具があると教えてもらった。
「そんなに体に負担なく5年間生理を止められるし、今では月経困難症が適応になったから。あなたが使えるかどうか分からないけど、一度調べてみたら?」
初めて聞いた名前だが、もし自分に使えるのであれば非常にありがたい。
 
そこで、早速また休みを取り、「ミレーナ」という名前を忘れないよう頭の中でくりかえし復唱しながら、再び近所の産婦人科へ向かった。
 
「『ミレーナ』という器具が月経困難症にもつかえるというのを聞いたので、私にも使えるかどうか伺いたいのですが!」
 
単刀直入に切り出してみたところ、驚きの回答が返ってきた。
 
「ああ、そういうものもあるみたいだね。ただ、うちでは取り扱っていないから、やっている病院をインターネットなんかで調べてね、行ってみたらいいと思います」
 
ちょ、ちょっとまって……?
まさか、診察結果が「病院ググれ」のひとことって……!
いや、せめてどこか紹介してくれるとかないの!? 貴重なお休みをとっていったのに、ただの無駄足……。やり場のない怒りをかかえながら、私は半ば呆然としながら家に帰った。
 
医師も専門分野だったら新しいことも何でも知っているというわけではない。分かっていたが、それを痛いほど思い知り、改めて言われた通りおとなしく、インターネットでミレーナを取り扱っている病院を調べた。そして、通勤経路内にある病院を選んだ。
 
次の病院で分かったことは、結局、私の生理の悩みは「子宮筋腫」によるものだったということだ。直径3-4cm程度でそこまで大きいものではないが、できたところが悪く症状が強くでていたらしい。そして私のケースでは、残念ながら希望していたミレーナは使えないという。ただ、手術で筋腫を取り除いてしまえば症状は治まるという。
 
「すぐにでもやってください!」
 
そんな思いでいたが、その病院では処置ができないということで、手術ができる病院へ紹介状を書いていただくことにした。
また違う病院か……と少々げんなりしたが、このつらい状況からの解放への道筋が見えてきたという喜びも感じていた。
 
今度は、いよいよ手術予定の病院へ。すると、初回の診察でなんと、また新たな提案があった。
「筋腫だけを取るのではなく、子宮自体を手術で取り除くというのはいかがでしょう」
 
筋腫だけを取る、というのは“パチン”と一瞬で切り取るのではなく、少しずつ電気メスで削り取っていくように進める。問題の筋腫はこの処置をするには大きすぎ、処置できたとしても長時間を要するという。さらに、実は筋腫は一つではなく、全部で3か所あること。問題の筋腫を取って症状がおさまったとしても、再発のリスクがあること。
一方、子宮を全摘出してしまえば、生理も完全になくなり、再発リスクも何かと心配な子宮がんのリスクもゼロになるというメリットがある。
そういったことから私の場合は筋腫摘出よりも子宮全摘出が良いというのだ。
 
「どうするかじっくり考えてきてください」と言われて帰宅したが、この先出産を望むことはまずないだろうということもあり、答えと覚悟はわりとすぐ決まった。思い切って腹腔鏡下での子宮全摘出をお願いすることになった。
 
もちろん、手術には様々なリスクが伴う。しかも入院も含め、お金もかかる。だから、私と同じ状況の方に一律に手術をお勧めすることはできない。
しかし、3年がたった今、あの苦しみから完全に解放されて私は本当に手術ができてよかった、幸せだと感じている。今は何も思い悩まず、アクティブに動ける。あのまま様子を見ていたら、3年間ずっと、今でも同じ苦しみを味わっていたはずだ。
 
本当は最初から、手術も選択肢の一つとして並べてもらえたらよかったなと思う。最初の病院で「様子をみましょう」と言われたとき、あのつらさを解決する手段は何一つ知らなかった。手術をするなどという選択肢は、全く影も形もなかった。医師は、私の筋腫に気付いていたかもしれないが、「こんな程度のものはよくあるものだし、命にかかわるものではない。手術なんてリスクを冒さないほうがいい」という考えで、外科的処置で治すという選択肢を提示しなかったということかもしれない。私の症状の訴え方がうまくなくて、そこまで大変な症状だと思われなかったのかもしれない。
 
病院選びは運命を変える。
 
もちろん、ほとんどの医師はきっと目の前の患者のことを思って診察をしてくれているのだろう、と思う。状況によっては実際に“何もしないことがベスト”なこともあるし、“なるべく悪化させない”という消極的な治療を続けるしかないというケースもある。
しかし、つらいなら、納得がいかないことがあるなら、自分から能動的に調べてみたり、セカンドオピニオンという形で他の医師にアドバイスを受けたりというのも、一つ大事な姿勢なのだということを学んだ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事