メディアグランプリ

葛藤と、ふと思い出される両親の姿。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:草間咲穂(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「お父さん、いってらっしゃい!」
といって、仕事に向かう父親を見送った経験が恐らく1回もない。
 
「お母さん、いってらっしゃい!」
といって母を見送った経験も恐らくない。
 
というと悲しい話に聞こえる話かもしれませんがそんな話ではないのです!
 
私の父は絵本作家、母はステンドグラス作家。
物心ついた時から、両親は自宅で仕事をしていました。
 
自宅はアトリエでもあり、住まいでもあり、色とりどりのガラスや絵の具、色鉛筆など、ありとあらゆる画材や工具、富士ゼロックスの大きなコピー機までありました。
 
家=仕事場なので、「いってらっしゃい」をいう必要がなかったのです。
 
そんな環境だったからか、思えば”仕事と暮らしの境目”というものをあまり意識ぜずに育ったように思います。
 
締め切り前の夜中。
よく出版社から編集者さんが家にきて、父親が描き終わるのを
「先生、原画を今日貰わないと帰れないんですよー」
と言いながら待っているという事がしょっちゅうありました。
 
本業の絵を描くことは、なぜかいつもギリギリまで取り掛からない父。
 
「もう! 締め切りギリギリまでやらないなんてほんとに信じらんない!!」
 
と母は怒って言いながら、地べたに座って父親が描いた絵に、容赦なく色を塗っていました。
多分何も父に聞かず、自己判断で色を刺していたと思います。
もはや共同作品!
「これはお父さんの作品と言っていいのかなぁ」
と子供ながら不思議に思っていましたが、編集者さんもだまーってその姿に何も言わず、時計と原画も交互に見ながら家の中を焦った様子で歩き回っていました。
その構図が映画のワンシーンの様にとても鮮明に記憶に残っているのです。
 
なぜ、よく覚えているのかなぁ、そう思い返すと両親が同じ場で仕事をしている姿を見る事がとても好きだったからでもあるのです。
締め切りギリギリの回数が多かったという事が多かったのも事実ですが……
たまに
「咲穂、その絵の具とって!」
と仕事をもらえると嬉しくて、ワクワクしながら一緒に夜中まで起きている時間はとても幸せでした。
両親が共同して一つの絵が出来上がっていく様子を見ることは、子供ながらに二人を心から尊敬できる時間でもあったのです。
支え合って何かを作るっていいなぁと。
(恐らく見守る気持ちは、編集者さんと真逆だったと思いますが)
 
そして完成した絵は凄く綺麗で、大好きでした。
何より、二人は仕事をしている事がとても楽しそうでした。
お互いが小言を言いながらも、なんだかんだ助けあって支え合っている。
そして仕事が楽しそう。
そんな情景を子どもながらに感じることができる瞬間でした。
 
そして何とか無事に原画を出した嵐が去った後、同じ場所で今度は私が工作をしたり、友人を呼んで遊んだり、仕事と暮らしの境があるようでなく、働くことも、遊びも常に横にある、そんな環境でした。
 
ちなみに父は、家事は常に完璧!
お弁当作り、掃除、洗濯。
朝起きるといい匂い。キッチンに立っているのは父の姿。
 
「お母さん、また置きっぱなしにして!」
 
今度は父が小言を言う番です。
でもその小言を言う姿が、楽しそうに見えていました。
 
そんな姿を横目で見ながら育ったからか、
 
「生活の中に仕事もある、そしてそれはとても楽しいこと」
「互いに助けあう。やれる人がやれる事をやる」
 
当たり前の様にそうやって生きていくという姿が、私の理想に自然となっていった様に思います。
 
理想。
理想、理想はそうなのです……
 
私は結婚して3年半。前からいつかは働きたいと思っていた天狼院書店に、8年半勤めた会社から転職して早半年。
 
主人は最初から
「やれる方がやればいい」
「仕事は楽しければやれるだけやったらいいよ」
と言う人でした。まさに私の理想!
 
そして今、仕事はとても楽しい!! 上手くいかない事も沢山あるけれど、沢山ありすぎるけれど、本当に楽しい!
その事は両親にも負けていない、という自信があります!
もの凄いスピードで進んでいく物事に、なんとかついていきながらも、日々新しい事の挑戦でもあり、こうやってスタッフも学び、成長する機会がある!
 
でも思い描いていた理想は……なかなか難しいものです。
我が家ではホワイトボードに言いたいことを書いて伝える、
というなんとなくできた習慣があります。
 
2ヶ月前に家に帰ったら
咲穂の仕事
「猫のうんち処理班」「洗濯物たたみ班」「洗濯物洗い班」「ごみ捨て班」
と書いてありました。
 
1ヶ月前に家に帰ったら
咲穂の仕事
「猫のうんち処理班」「洗濯物たたみ班」
と書いてあったのです。
 
2つ減ってるーーーー!!!
 
主人はそれでも相変わらず、
「やれる方がやればいい」
「仕事は楽しければやれるだけやったらいいよ」
と言ってくれます。
 
でもさすがに罪悪感が湧いてくるこの頃。
 
お互い支えって助けあって仕事も生活もするって、とても難しい。
両親もいろいろあって、子供には助け合っているように見えるのかしら。
「仕事と生活の境目」ってあまり感じて生きてこなかったけれど、それって私たち夫婦にとってはいいことなのかな。
天狼院に入って仕事がさらに楽しくて仕方なくなったからこそ、これまで考えなかったけれど考えるようになった夫婦のこと。
夫婦のことを考える時にふと思い出される両親の姿。両親の影響ってやっぱりとても強いんだなぁ。
いろんな事を考えながら頑張ろうと思います。
ああ、父を受け継いだのか、そしてこの記事の提出もギリギリ!
 
 
 
 
***
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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