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趣味はほどほどにお願いします


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記事:玉置裕香(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「あなたの趣味はなんですか?」
日常生活の会話のなかで、気軽にきかれる質問である。なんと答えるか、ある程度決まっているひとが多いのではないだろうか。無趣味と言いながら、考えるとでてきたりする。
私の場合、当たり障りのないように読書やピラティスと答える。最近だとノルディックウォーキングも入るだろうか。あまり知られていないものだと、興味を持って聞いてくれたりするのでよい。無難に答えられる。
 
でも人に言えない趣味の方が意外と多い。中でも日課にしているのが、う〇この観察である。
毎度のう〇この形・硬さ・色を見ていく。いきんだ時間やスッキリ感なども感じつつ、本日の体調を判断する。なかなかよいな、今週は緊張しているな。もうすぐ月のものかな。便は色んなことを教えてくれる。
 
2歳の甥っ子の行動も面白い。一緒に遊んでいたのに突然いなくなる。そんなときはこっそり後から追う。まだトイレトレーニングをしていないため、甥っ子はおむつの中でする。う〇このときは誰もいない部屋に隠れているのだ。すっきりした顔で出てくるとよかったのだな。イライラしながら部屋を出たり入ったりしていると、なかなか出ないのだなと見ているだけでわかる。
「おむつ替えるよ、おいでー」
う〇この時だけ素直に近寄って来てくれる。かわいい子だ。
 
ちなみに対象はヒトだけにとどまらない。最近では見かける機会が少なくなったが、街にこっそり落ちている犬のう〇こも観察している。すっきり1本だと、調子いいね。ひび割れて、ころころだと年取っているのかな。それともストレスが溜まっているのかな。勝手に心配したりする。変なやつ、それが私だ。
 
そんな私が毎日驚きの連続にいる。4月に新しい職場に移ったからだ。今まで大腸を専門に一般外科をしていた。10年以上同じようなことをしていると驚くことは少なくなった。だが、この新しい職場は違った。大腸だけでなく、肛門科がある。超マニアックで不思議な世界である。まず年齢層が幅広い。2歳児もいれば、20代から90代と色んな人たちがおしりのことで悩んでくる。
大体は便が硬い、ゆるい、出ない。あとはおしりが痛い、いぼができた、血が出た、膿がでた。色んな悩みでくる。世の中こんなにもおしりにまつわることで悩んでいるのかと思う。そしてエピソードも一人一人違うのだ。飽きることなく、毎日が新鮮である。
今日はそんな日常をこっそりお伝えしたい。
 
ある20代の男性の話だ。数年前からたまにおしりが痛くなるという。痛みはう〇こを出すときと関係はないらしい。血もでない。時間も10秒くらいで落ち着く。痛みは月に3回くらい。
「では、おしりの診察をさせてくださいね」緊張しないように声をかける。
若い男性の尻の穴。うん、わりとキレイ。いぼ痔もなさそう。
「次は指を入れていきますね」
「痛みはありませんか?」
指の感触を頼りに、痛みの部位がないか、直腸の中にできものがないかなどを確認する。
「今は痛くありません」
痛みも、できものもないことを確認する。
「次は器械を入れますね、フーと口から息を吐くように楽にしていてくださいね」
肛門鏡というおしりの中をのぞく器械を入れる。痔もないし、粘膜もキレイ。
「診察ではとくに異常はありませんね」
この後に肛門機能などの検査をして、特別な異常は見当たらなかった。
診察室で患者さんと話す。
「特に異常はないですね。10秒くらいの痛みですぐに治まり、月に3回くらいなら薬も使わずに様子をみていても大丈夫だと思いますよ」
「そうですか」患者さんの表情は、異常がないことで少しほっとしていた。
「ほかに何か気になることがありますか?」
「あのー、17歳の時からおしりを開発しているのですが……、それが原因だったりしますか?」
突然のカミングアウト。一瞬言葉につまる。
「……そうですね。ありますね」
「そうですか、ありがとうございました」納得した顔で帰っていった。
 
手を洗いながら、色んな人がいるのだなと改めて思った。私のように便の観察を趣味とするやつは誰にも迷惑をかけない。体調管理にはもってこいのいい趣味だ。
快感を求めて、色んなものを入れる人がいる。取れなくなったり、血が出たり、痛みで困って来るのがこの世界。
これからこういう人たちも日常で診るのだな、と思った。
自分の指を見ながら、はたと気づいてしまった。
もしかして、この指もあの人の趣味につきあわされてしまったのか!
複雑な思いで石鹸の泡を洗い流した。
 
マニアックな世界で生きていると、たまに普通がわからなくなってしまうのが問題だ。
でも改めて言いたい。
「ひとに言えない趣味はほどほどにお願いします」
 
 
 
 
***
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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