メディアグランプリ

飄々とバーを飛び越えろ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:アウリの寝言(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
次の競技は走り高跳びだ。TVには手足をゆらゆら動かし準備運動をしている選手の姿が映っている。選手はスタート位置につき、一呼吸おいて大きく息を吐き、バーに向かって走り出したと思ったらフワッと浮かび上がって背中からバーを飛び越えた。
 
バーはピクリとも動かなかったが、その瞬間、大歓声が沸き起こった!
選手はテレビカメラに向かってガッツポーズを作り笑顔で退場していく。私も観客と一緒になってTVの画面に向かって大きな拍手で選手を見送った。
 
人は感動したい生き物だ。普段はスポーツのスの字もないくらいスポーツに興味がない人でも一度はオリンピックを見たり、何かの試合を見て思わず感動してしまったことがあるだろう。それと同じように、人は自分の費やした感情や時間や物に対する対価を求める。人が求める究極の対価とは感動だと、私は思っている。
 
一生懸命働いて稼いだお金で美味しい料理を食べることも、ずっと欲しかった物を買うことも、本を読んだり、旅行に行ったり、友達と会って話すことですら対価として何かを求める気持ちがどこかにある。この時の何かは打算ではなく、期待である。そして期待を超えた時に人は感動する。
 
例えば、ノーブランドで合成皮革のテカテカとした財布を買ったときは「便利だし、手頃な値段で買えて得したな」とは思っても感動は沸き起こらない。
しかし、ブランド物の財布を買ったときは、「やった!買ってしまった」と買ったことに満足する。それはつまり、しっかりとした縫製や質の高い材料が値段として反映されている物の価値を手に入れるだけではなく、それを購入して得られる値段に見合った喜びを買ったのだ。
 
面白いと話題になっていて友人からも勧められた本が前評判通りだったら、そこまで大きな感情は沸いてこないかもしれないが、フラッと入った本屋で手に取った自分の知らない作家の小説を読んで、予期せず面白かった時には誰かに言いたくて仕方がなくなるくらい気持ちが昂ぶる。
 
ファーストフード店のポテトがいつもよりカリッとしていて揚げたてだったときよりも、行列ができるお店で並んで食べた食事にあった唐揚げが美味しかったらまた来ようと思う。
 
ずっと行きたいと思っていたエジプトに初めて行った時、写真で見ていたよりずっとピラミッドが小さかったとか、室内の通路が狭くてジメジメしていたとか、遺跡の向こう側に沈む太陽が蜃気楼でゆらめいて綺麗だったとか、初めての体験をした時の達成感もそうだ。
 
人は何かを期待して、その期待を何かが上回ったときの振り幅が大きければ大きいほど感動するものであり、それが本当の対価となる。
 
これは仕事においても同じことが言えるだろう。お客様が求めるのは物でも作り笑顔でもなく自分が費やした事や物に対する対価としての感動を求めている。これはすなわち、走り高跳びの競技と同じなのだ。
 
選手は自分。または提供するサービスや商品。そして飛び越えるべきバーはお客様の期待である。期待を超えなければ感動は生まれない。本当の顧客満足は感動なのだ。
 
仕事をする私達は、お客様の期待というバーを1cmでも高く飛び越えるべきである。そのためには地道な基礎トレーニングも必要になるし、知識も豊富な方がいい。人柄は素直な方が信頼関係も作りやすい。
 
会社という組織の中での立ち位置によっては、日々の業務に流されてしまい、お客様の顔を忘れてしまうこともある。ジャンプはしたけれど、踏切の位置によってはうまく飛べずにバーを落としてしまうこともある。トレーニングを積み重ねても思ったような成果が出ない時もある。しかしたくさんのトライアンドエラーは確実に、高く飛ぶための筋力になっていくのだ。地道に基本を繰り返し練習するスポーツ選手のようにジャンプ力を鍛えることが大切なのである。
 
全てはお客様の期待に焦点を合わせ、日々、改善改良して成長していくことができれば、いつの日かお客様の期待を超える仕事ができる日が来るかもしれない。目指すところは、あと少し上へ、より高く、飄々とバーを飛び越えたあの走り高跳びの選手なのだ。
 
今の仕事も来年で3年になる。石の上にも3年というが、未経験で始めた業務も最近では定時までにこなせるようになってきたとはいえ、まだまだバーを軽々と飛び越えられるとは言えない。上司からももう少し時間短縮を求められている。改善策を自分の業務に落とし込まなければいけない……
 
あの走り高跳びの選手はまた明日から地道な練習を切り返すのだろう。
世界は違えど、より高くバーを飛び越えたい同士にささやかなエールを。
 
TVは次の競技の会場に切り替わった。私は続きを見たい気持ちをリモコンのボタンに込めてTVを消した。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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