メディアグランプリ

「もうあかんわ」と思ったら、チャップリンになってみる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:栗(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」
 
これはチャップリンの有名な言葉。この世界的喜劇役者の言葉を体現する若き天才が現れた。それは岸田奈美という関西出身の作家さんだ。
 
奈美さんの書く記事が抱腹絶倒の面白さ。もともとはnoteというプラットフォームから人気を博し、そこから著書を出されるようになった。その名前を初めて知ったのは、2年前のnote記事「一時間かけてブラジャーを試着したら、黄泉の国から戦士たちが戻ってきた」。おススメに出てきたのをなにげなく読んでみたら
「なにこれ、おもしろすぎる!」
 
まだ知らない人は一度読んでみてほしい。普通は格好つけたいというか、モテ要素を入れたくなるのが若き乙女というものだ。なのにここまでさらけ出せるとは。記事につけてある写真一つとっても、飾りけがなさ過ぎて心配になる。これだけ写真を盛れる(加工できる)時代に、加工一切なしの素顔をさらしている。
 
今では報道番組のコメンテーターになるほど有名人になった彼女というのに、そのスタンスは変わらない。でも、実はそこが人気の原因ではないか。SNSの世界は、もはや自分ではなくなった加工顔と盛り過ぎたキラキラであふれている。そんな世界で、彼女は「自分をさらけだし、なおかつ自分を笑える」チカラが半端ないのだ。
 
それは彼女の生活環境が影響している。奈美さんのお父さんは若くして亡くなり、お母さんはその後の病気から車イス生活、弟さんはダウン症を持っている。さらに、仕事をされていたお母さんが重病になって大手術、健康なはずのおばあちゃんは認知症疑いで暴れまくるという、「もうあかんわ」状態になった。
 
がけっぷちに立った奈美さんは、チャップリンの言葉をひいて、こう書いた。
「理不尽なこの日々を、こうやって笑い飛ばしてもらえたら、わたしはそれで救われる。同情も憐憫もほしくない。やるべきことも全部わかっているので、家に来て手伝ってほしいわけでもない。ただ、笑ってほしい。」
 
それから毎日、彼女は「もうあかんわ日記」を掲載して、怒涛の日々の暮らしを書いた。そこにたくさんの共感のコメントもついた。そのコメントにはそれぞれの「もうあかんわ」がてんこ盛り。同じような境遇にあって苦労している人も、涙しつつ笑い転げている。元気をもらってありがとうと書く人もいる。
 
苦しい境遇も、自分一人で悩んでいるうちは悲劇でしかないが、よそで話して笑い話にすると何か救われる気がする。喜劇にしてしまう覚悟さえあれば、乗り越えることができるのかもしれない。
 
「ロングショットで見る」とは、いいかえれば俯瞰するということ。悩みにがんじがらめな自分から少し距離を置いて、第三者になってみる。そうすれば楽になって、しかも他人とそのつらさを分かち合えることを教えてくれたのだ。
 
この記事が後に著書となって世に出るのだが、これだけで終わらない。最近の発想がまたすごい。ツイッターで新しい取り組みが始まった。ツイッターではいわゆる炎上が起こることがある。好きな人のつぶやきは読みたいし、自分の気持ちもはき出したいが、汚い言葉や攻撃を見るとげんなりしてしまう。
 
そこに奈美さんは、ツイッターでコミュニティを立ち上げた。それは「文章に救われたいお嬢様の会」。今、三千人ほどメンバーがいる。スタンスは、お互いお嬢様としてふるまい、弱音を吐いた人にはそれを癒す本や文章を紹介してねぎらいましょうというもの。
 
そこではあくまでも「お嬢様」という設定が絶妙なのだ。泣き言を書こうと思っても、「皆様、ごきげんよう」から始まるお嬢様言葉だとこうなる。
「寂しさに押しつぶされそうですの……。」「傷心気味ですの……。」
 
なんてきれいな言葉づかい……というか、汚い言葉が使えない制限の中でお嬢様になり切るごっこというか。そうやって遊びにしながら、深刻な悩みを笑い飛ばしてしまうのだ。
 
ためしに私も投稿してみたが、自分がお嬢様だと思うと「腹立つ!」とか「ええかげんにせえ!」とか、どうやっても書けないのだ。ふだん、汚い言葉を使わないようにと言われてもつい書き込みたくなるところを、軽々と乗り越えてしまう。チャップリン的発想の転換だ。
 
チャップリンは幼い頃から苦労した。父親の早すぎる死、母親の精神疾患、その後の孤児院生活。少年時代から貧しく、いろんな仕事を経験した。でも、これらの生活を経る中で演劇という表現に希望を見出し、やがて誰もが知る世界的な喜劇役者となった。
 
奈美さんはまだ30歳になったばかり。彼女も若くして苦労されているが、つらいことを喜劇に転換して、人の心をつかむ強さと温かさを発揮されている。その姿はチャップリンの言葉のままだ。つらい目に遭った人には、「もうあかんわ」とつぶやきながら一緒に笑っちゃう岸田奈美さんをおススメしたい。
 
 
 
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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