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お風呂の残り湯もったいない問題から見える、無意識の「こうすべき」の呪縛

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉村 香織(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
誰かから「こうしなさい」と言われているわけじゃないのに。
そうすることがべつに義務でもなんでもないはずなのに。
それなのに、わたしたちは無意識のうちに「こうしなければ」と一方的に背負い込んでいることがある。いや、無意識に身についてしまっているといったほうが適切かもしれない。さらに、きっとほとんどの人が、そんな自分の状態にすら気づいていないことがほとんどだ。
もしかしたら共感してもらえないのでは……と、書くことをためらってしまうくらいささいなことを題材にして書き出してしまったのが今さら悔やまれる。わたしがこれまで携えてきた「こうしなければ」のひとつ。それは、お風呂の残り湯もったいない問題だった。
 
家族のなかで一番最後にお風呂にはいるとき、
「残り湯もったいないな。できるだけわたしの番に使い切らないと」
 
と、以前のわたしは当たり前のように思っていた。
そこには考える隙は与えられていなかった。当たり前のことすぎて、この前提を疑ったことも一度もなかった。こうするのが当たり前、だからこうしなきゃ、と体が動く感じ。それは自動操縦といっても言い過ぎではないかもしれない。
 
「残り湯もったいない」という課題は家族間のルールでも何でもなかった。課題をみなで共有していたわけでもない。話したこともない。言葉にしたこともなかったので、こんな縛りを自分に課していることすら意識していなかった。それは、正真正銘わたしが育った環境から無意識に身につけてきた当たり前であり、「こうしなければ」だった。
 
あるとき、夫が最後にお風呂に入った日があり、たまたまシャワーを使っているところを目撃した。そのとき咄嗟に、
「え、なんで順番最後なのにシャワー使ってるの?」
と心のなかで思った自分がいた。この心の動きに気づいたときは自分でもハッとした。
「え、なにがそう思わせたの?」と。
このときの感情は、ちょっとした怒りだった。少し誇張すると、「我慢しているひとの気も知らないでシャワーのお湯をのんきに使うなんて許せん~!」という感じ。
(夫側から客観的に見たら、ほんとこんなの、そうとう理不尽な言いがかりでしかない。絶対こんなとばっちり受けたくない。だけど、紛れもなくわたしの心の中で起きていた正直な感情の動きなのだ。)
(こうやって、自分の気持ちのベクトルがどこに向いているのかに気づけるようになったのが、コーチングをやってきてほんとうに良かった成果。)
 
自分のなかで湧いてきた怒りの感情に気づいて、
「あら?わたし、いま夫を責める気持ちがあったよね。これって、なにがそうさせているんだろう?」
と分析してみて、やっと気づいた。わたしも、残り湯よりもシャワーを使いたかったのだということに。それがわたしの飾らない本心だった。「もったいない」に自動操縦されていたときには全然気づかなかったけれど、実は我慢していたみたいだ。
夫を責めるかたちとしてあらわれたあの感情の正体はきっと、自分ののぞみ(本心)に気づいてあげられていないもどかしさと、自分でのぞみを叶えてあげられていない(行動できていない)ことに対する怒り、だったのだろう。
だから、あの時の怒りの感情は、実は夫に向けられたものではなかった。
本心に気づけない自分に向けられた怒りだった。
 
もちろん、資源を大切に使うことを無意識レベルで実践できるまで教えこんでくれた環境には感謝している。お風呂の残り湯を大切に使う思想も全然悪いわけではない。それ自体はむしろめちゃくちゃいいこと!
ただ、いつの間にか染みついている「もったいない」とか「こうすべき」に自動操縦されていると、本心(「こうしたい」)を見失っていることがあるかもしれないよね、と思っている。そうして気づいてもらえない本心が、見つけてもらうために誰かを攻撃するようになるなんて、全く望んでいないことなのだ。本心に気づけるのは自分だけ。だから、できるだけ気づいてあげられる自分でありたいと思っている、ということが言いたかった。
それに、「もったいない」と「こうすべき」の間にはもっとたくさんの選択肢があってもいいはずなのだ。自分の中で抱えていたがために、他の選択肢も無いことにしていた。これこそもったいないではないか。
 
コーチとして、自分自身の思い込みや決めつけに出会うトレーニングはそうとう重ねてきた。思いがけず格好悪い自分にもたくさん出会ってきた。それは自負しているのだけれど、それでも、身近なところに、まだまだ無意識にとらわれてきた思い込みや「こうすべき」というのがあるんだなぁと感じている。
 
そして、勝手に背負い込んでいる「こうすべき」に気づくきっかけはやっぱり 『感情』だということにも改めて唸らされる。
感情を手掛かりにして、「本当はどうしたいのか」をひとつずつ受け止めていく。そのプロセスを経ることが、自分を軽やかに操縦することにもつながるんだよねと確信しているし、そんな事実に勇気すらもらってもいる。
 
みなさんのなかには、どんな「こうしなければ」がありそうだろうか。それはこれから先も必要なものだろうか。一度言葉にして精査してみてもいいかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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