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メディアグランプリ

たかが八つ橋、されど八つ橋


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本三景(ライティング・ゼミNEO)
 
 
久しぶりに京都へ来た。
せっかく来たのに結構な激しい雨。
スニーカーに雨が染み込んでグジョグジョで気持ち悪い。
体力と気力を吸い取られながら、四条の予約したホテルへ着いた。
 
去年、できたばかりの新しいビジネスホテルだ。
ビジネスホテルなので、部屋はコンパクトだが、今時のホテルらしい、シックで清潔感のある部屋だった。
しかも、祝日にもかかわらず、値段はリーズナブルだった。
どんなに疲れていても、とりあえず、トイレとお風呂、アメニティは一通りチェックする。
ケトルの横にお茶と京都名物の「生八つ橋」が置いてあった。
 
八つ橋か……うーん。
 
京都らしいし、八つ橋に罪はないのだが、「八つ橋! 嬉しい!」という気持ちにはならない。
 
八つ橋、それは、長い間京都に君臨するお土産の定番だ。
修学旅行生のお土産の定番と言ってもいい。
しかし、最近はかつてほど絶大な人気を誇っているわけではなく、抹茶のバウムクーヘンやら、抹茶のラングドシャやら、その他の新興勢力のお菓子たちにとってかわられている気がしていた。
それでもまだ人気はあるらしい。
最近では、イチゴやチョコレートとコラボしたり、ミニサイズにして買いやすい値段にしたりと、いろいろと努力をしている。
イチゴやチョコレートの八つ橋は、私が歳をとったせいなのか、八つ橋の域を超えている気がして、なんか許せない。
食べたら意外と美味しいのかもしれないが、そんなに媚びをうらなくていいのに……なんて思ってしまう。
まあ、たとえプレーンの状態であっても、八つ橋自体に惹かれていなかったので、大人になってからは、お土産の選択肢に八つ橋を入れることはなかった。
 
とはいえ、雨に濡れて疲れた状態だったので、甘いものを食べてホッと安心したかった。
ケトルの横に置いてあった八つ橋は定番のニッキと抹茶だった。
お湯をわかしてお茶をいれ、抹茶の八つ橋を一口食べた。
はむっと。
 
上品な甘さが広がった。
ほんのりしたあんこが疲れを癒してくれる。
薄っぺらく、決して大きくはないが、もう一つ食べたくなる。
 
あれ? こんなに八つ橋のポテンシャルって高かったっけ?
 
和菓子は好きだが、実は「あんこ」はそれほど好きではない。
「どら焼き」も、子どもの頃は「ドラえもん」の大好物だから食べたけど、本当は皮だけ食べたかった。
もちろん、もったいないので、そんなことはできなかった。
大人になった今では、あんこは苦手ではなくなり、美味しく和菓子を食べられるようになった。
しかし、昔の感覚が少し残っているのか、がっつり入ったあんこより、控えめのあんこが好きである。
 
久しぶりに食べた八つ橋は、あんこの主張が激しすぎず、ちょうどよかった。
そして、温かいお茶と一緒に食べた控えめな三角形の抹茶の八つ橋は、私の疲れを忘れさせてくれた。
もし、チョコレート味の八つ橋だったら、こんなホッとした気持ちにはならなかっただろう。
「こんな八つ橋、邪道だわ」と悪態をついていたかもしれない。
 
よし、今回は八つ橋をお土産に買って帰ろう!
 
私はそう決心した。
 
しかし、どんなに美味しく思っても、私の中で八つ橋の地位があがることはなかったのだろう。一日経つと八つ橋のことなんて忘れてしまっていた。
 
八つ橋、まあ、いっか。
たかが八つ橋だ。
 
そして、京都を去る日、お土産を買わずにそのまま新幹線の改札をくぐった。
 
出発の時間まであと20分あった。
時間つぶしにお土産売り場でもふらつこうとしたところ、八つ橋を思い出した。
 
ホテルの八つ橋と似たものをさがしてみよう。
絶対あるに決まってるけど……。
 
そう思って八つ橋を買うことにして、商品を選び出した。
 
イチゴやチョコレートとのコラボは却下。
私の中でそれはない。
やはり普通が一番である。
ホテルにあったような、ニッキと抹茶と半々ぐらいがちょうどよい。
一気に食べるわけではないので、個包装だとありがたい。
そんな私の要望に応えてくれる八つ橋が見つかった。
10個で500円ちょっとの値段だった。
安さに驚いた。
そんなに安くていいのか!
確かに、修学旅行生の定番土産なので、値段は安い設定なのかもしれない。
 
私は、八つ橋を手に取った。
何年ぶり、いや、何十年ぶりに八つ橋をお土産に買ったのだ。
大人になると定番を避けがちになるが、今、定番を見直すと新鮮な気持ちになる。
八つ橋のお土産だけじゃなく、「ザ・定番」の観光地にも行ってみたいと思った。
あえて、修学旅行生と同じルートをまわるのも、楽しいのではないかと思う。
もちろん、あの頃のようにキラキラした目はしていないが、少し淀んだ目で10代と同じ気分を味わうのもそれもまた「いとをかし」である。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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