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メディアグランプリ

話を聞かない医師から学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:上田聡代(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「健康診断は受けてくださいよ!」
小さな診察で私の体はフリーズした。
 
「健康診断は受けていますか?」診察室に入ると、医師が唐突に聞いてきた。
「去年は予約したのですが、コロナで集団検診は中止になったので……」私が最後まで答える前に、大声が鳴り響いた。
 
指定難病(原因が明らかではなく、治療方法が確立していない希少な病気で厚生労働省が指定)の専門医は数少ない。他府県まで通院していたが、1年前にようやく見つけたこの医師は、いつも上から目線のコミュニケーションをとる人だった。
 
一瞬で不愛想な表情に変わったと私自身でさえ認識できたのに、この医師は、わからないのだろうか? まだ続いた。
「これだけの薬を飲んでいるあなたみたいな体の人が健康な人と同じように考えたら駄目ですよ! 自覚してください!」
 
多くの患者は、弱い立場で何も言い返すことができないかもしれない。
私は違う。20年以上、産婦人科で管理職を続けてきた私は、こんな医師が大っ嫌い。
「怒鳴る」「患者の話を聞かない」「相手が傷つく言葉を使う」医師は大っ嫌い。
何様と思っているのだろうか? 同じ医療者として恥ずかしい。
 
「前の先生からは、健康診断以上の項目を年に2回は検査しているって言われていたので……」
伝えても無駄だった。
 
またもや最後まで話し終わらない間に、「あなたね、保険に入ろうと思っても難しい体なのですよ!」
私も意地になっていたのだろう。「子宮がん検診と乳がん検診は受けていますけど」
 
聞こえていない様子。「保険会社はね、難癖つけてきますよ!」
さすがの私も口をつぐんだ。
「は? そんなこと、自分が一番よくわかっている。保険は元気な時から入っているし困ってない!」と、これは心の声。
とにかくこの場から去りたい気持ちが現れていたのだろう。その時にはすでに、横向きになった体は、緑色の籠に置いたカバンを手にしており、顔だけが医師の方向を向いていた。
 
医師の話がどうやって終わったかは覚えていない。逃げるように扉を開けて診察室を後にした。わずか1分の診察は、99.9%怒鳴られた感覚で終了した。
 
診察室から抜け出すことができた私は、安堵感と同時に怒りが込み上げてきた。怒りを抑える為に、大きな深呼吸をしてから椅子に座った。会計で名前が呼ばれるまで、一点を見つめていた。何も考えていなかった。ただただ、心を静める努力をしていた。
 
駅前商店街を過ぎたところにある病院。通院日は、大好きな文房具屋さんに寄って、ご褒美を買うことを楽しみにしている。しかし、あの日は寄り道することなく帰りのバスに乗った。「あなたね!」「あなたみたいな体」という言葉が頭から離れずにムカムカしていた。同時に、カッとなり、冷静に対応できなかった自分も悔しい。窓の外を見つめながら、頭の中では答えのない質問を繰り返していた。ハッと気づけば停留所は過ぎていた。慌てて、二つ先の停留所で降りた私は、肩を落として歩き始めた。
 
ここから自宅までは、軽快に歩いても30分程かかる。ショボンとしている私にとっては遠い道のり。その分、考える時間もたくさんあった。
私には、この病院の他に、脳梗塞のフォローアップで通院している病院がある。歩いていると、そこの担当医師が頭の中に現れた。
 
初めて診察を受けた時、「神経内科の中山です」と名乗ってくれたよな。「変わりありませんか?」ではなく、「痛みはどうですか?」と答えやすい質問をしてくれるな。そういえば、話の前に必ず「上田さん」と名前を呼んでくれるな。座り方が違うよな。対面ではなく横並びの診察室で圧迫感がないよな。何より、怒鳴ることはない! 緊張感がないので、質問もしやすい。
いや、実際は質問をすることなどないに等しい。だから、どちらの病院も診察時間は数分と変わりない。それなのに、この違いはなに?
 
言葉の使い方、内容、相づち、声のトーン。確かに違う。でも、比較すればするほど、「そんなことではない」気がする。明確にわからないまま自宅に着いた。
 
帰宅した私を迎える愛犬。「今日はね、こんなこと言われたのよ」と、ブツブツ言う私の顔をジッとみつめて、首を傾げるトイプードル。
そこで気づいた! 愛犬は話を聞いているようだ!
そう! 話をきいてもらえない感! あの先生は、話を聞いてくれる気がしない。
 
あの日の出来事。視点を変えると、「健康診断を受けること」に大声で怒鳴るほど、患者(私)のことを思っているのかもしれない。一生懸命な医師なのかもしれない。
そこは私も理解することにしよう。
それでも大っ嫌いなのだ。会いたくないのだ。2カ月後の診察がすでに憂鬱になるのだ。
 
私の中で話を聞いてくれるか聞いてくれないかの判断基準がはっきりとした。
また会いたいと思える人は話を聞いてくれる人。
会いたくないと思う人は話を聞いてくれない人。
 
通院はお金もかかる。時間もかかる。
体調が悪くなると行く場所かもしれないが、私の場合は、体調が悪いと動きたくなくなるので行きたくない。
患者は、そんな気持ちを乗り越えて行くのだ。
 
訪れた患者の癒しなりたい。
いや、せめて訪れることが苦痛であってはならない。
 
気持ち新たに、話が聞ける看護師でいよう。
また会いたいな、と思ってもらえる看護師でいよう。
私は医療者。私は後輩育成者。こんな思いをする患者は撲滅したい。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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