幸せな母親になるために必要だったこと
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記事:秋篠奈菜絵(ライティング・ゼミ4月コース)
「いい母親」になりたかった。
過去形にしたのは、今はその気持ちがほとんどなくなったからだ。
むしろ今は、息子を通して「ダメダメな母親でどこまでいけるか」の実験をしているような感覚さえある。「ダメダメな母親」こそが一番「いい母親」に近いのではないか。今ではそんな風に考えるようになった。
現在、私は夫と共に8歳と6歳の男の子を育てている。小学校の先生として働いていた経験もあり、色んな家庭と出会い、家庭教育の大切さを痛感していた。その影響もあってか、長男が生まれたときは、母親として「〜すべき」「〜しなければならない」という考え方にがんじがらめになり、全く思い通りにいかなかった。息子に対して、ひどい言い方で叱ってしまうたびに、「なんてダメな母親なんだ」と自分を責めてしまうこともしょっちゅうだった。完全に母親としての自信を失っていたのだ。
そんな私でも、最近ようやく「これでよかった」と自分の子育てを肯定できるようになった。息子たちの姿を見ていると、「これから先、どんなことが起こっても一緒に乗り越えていける」いう確信が持てるようになった。
小学3年生になった長男は、毎朝親に起こされなくても6時にさっと起きて自分で朝ごはんを食べ、準備をして6時半過ぎには「行ってきまーす!」と元気に家を出て行く。朝にめっぽう弱い私は、息子の出発にギリギリ間に合う時間に起き、「行ってらっしゃーい!気をつけてね」と見送る。息子よりも起きるのが遅い、そんな「ダメダメな母親」だ。
次男は、私がかなりの忘れん坊なため、持ち物を入念にチェックするようになった。次男に「連絡帳は?」と聞かれ、「カバンに入れたよ」と言うと、「じゃあ確認してみる」とカバンの中をチェックする、という具合だ。幼稚園のときには、母親に頼らず、自分が困らないように自分で確認するようになった。「ママは忘れん坊やけん」とにっこり笑う次男が頼もしい。
二人とも学校でもよく学び、外で身体を動かすのも大好きで、素直にすくすくと育っている。たまに兄弟喧嘩をするときもあるが、基本的にとっても仲良しな二人だ。
終わりがない暗いトンネルの中を歩いているような気持ちだったあの時期を乗り越えて、今あの頃を振り返っている。自分は、子育ての中でどんなことを大事にしてきたんだろう。その中にはもしかしたら、今子育てに悩んでいる人の役に立つことがあるかもしれない。そんな期待を込めて、自分が大切にしてきたことをまとめてみることにした。
⒈「やりたがること」はとことんやらせる
子どもは、好奇心の塊だと言っても過言ではない。その好奇心をなるべく大人が邪魔しないように気をつけてきた。たとえば、大きな声で叫ぶ、ボールをひたすら投げる、お皿を箸で叩く、ジャンプする、何かを高いところから落としてみるなどなど、子どもが自然に夢中になっていることがある。大人から見たら「なんでそんなことするの?」「お行儀悪いからやめてほしい」と思うことでも、人に迷惑がかからない範囲で、後始末が大変になる程度ならグッと我慢して見守る。子どもの中に「なんでもやってみたい!」という意欲の芽が生まれる大切な瞬間だからだ。
2.失敗は、貴重な経験になる
「怪我をしないように」「失敗をして困らないように」と予防線を張ることはなるべくしないようにしてきた。ちょっと危ないかもと思うようなことをしていても、なるべく止めない。するとやっぱり怪我をしてしまうことも多かった。でも、その経験によって自分の身体をうまく使える術を身につけたり、「身体の痛み」を知って、大怪我をしないように予測して行動する力が身に付いたと思う。小さな怪我をたくさんすることが大きな怪我を防いでいる。そして、何をしたら危険なのか、自ら考える力も自然と育っていった。
3.コントロールしない
これは、私にとってとっても難しい。今でも息子を叱るときに、つい「〇〇したら、〇〇しないよ」と言ってしまうことがある。他にも「〇〇できたら、これを買ってあげる」など、条件をつけて相手をコントロールすることは、しないようにしている。子どもは親の所有物ではない。コントロールされて育った子は、自分が本当はどうしたかったのか、何がしたいのかがわからなくなってしまうと思う。
4.わかる言葉で納得するまでとことん話す
子どもがわがままを言ったとき、頭ごなしに「ダメ」と言わずに、どうしてダメなのかをコンコンと説明してきたと思う。一歳なら一歳に伝わる表現で。三歳なら、三歳に理解できる言葉で。「私はこれはしてほしくない。なぜなら〜」「あなたはこうしたいかもしれないけど、私はこう思う。どうしようか?」子どもとして関わるのではなく、一人の人間として関わるように気をつけてきた。その甲斐もあって、今8歳になった息子とはお互いが納得いくまで議論ができるようになってきたと感じる。たまに開かれる家族会議では、大人も子どもも対等な立場で意見を交わし合っている。
5.親が自分の人生を楽しむ姿を見せる
これは、実は一番大事にしていることかもしれない。親が自分の人生を楽しむ姿を見せることは、子どもの生きる希望になる。決して大袈裟ではない。そしてそれは、「もっと学びたい」「もっとできるようになりたい」という意欲の源泉にもなる。「大人になるって楽しそうだな」と子どもが思ったら、あとは学ぶ意欲が自然とついてくる。そして、人生の中で何か困ったときには、親に相談してくれるような信頼関係もそこから生まれるのだと思う。
私が昔もっていた「いい母親像」は、料理が上手で、いつも笑顔で優しくて、自分のことよりも子どものことを優先する母親だった。今の自分は、全くそんな母親ではない。自分の好きなことややりたいことのための時間を確保することに貪欲だし、なかなか子育ても家事も丁寧にできない。でも、だからこそ夫や子どもたちが支えてくれ、一緒に頑張ってくれる。そこには自然と感謝が生まれ、いつも笑顔の母親でいられるんだと思う。
お母さんって、完璧じゃなくていい。
むしろ、完璧じゃない方がいい。
母親は、母親になった瞬間から24時間頑張っている。だからこそ、そんなに頑張らないでいいよ、ダメダメな母親でも大丈夫だよと声を大にして言いたい。
「ダメダメな母親な私でいい」と心から思えることこそが、幸せな母親への第一歩だと思うから。
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