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全長3センチの小さな命~楊貴妃メダカとの暮らしは一人暮らしの相棒だ


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記事:清野千聖(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「太郎、花子、ただいま~」
太郎と花子は、現在飼っている楊貴妃メダカの名前である。
現在一人暮らしの私は、玄関の鍵を開け、帰宅してから最初にすることは、メダカの生存確認である。
「生きているね。良かった!」
ほっとしながら2匹のメダカに早速、えさを与える。口をパクパクさせながら、メダカはえさをすごい勢いで食べる。
 
楊貴妃メダカとは、鮮やかな朱赤の色をした品種である。世界三大美人である「楊貴妃」とは全く関係ないが、美しさに因んで、名付けられたらしい。
飼い始めたのは6年前になる。
初夏のある日、近隣のホームセンターで日用品の買い物をするつもりが、犬の鳴き声が気になり、ペットコーナーへ……。
そこには、犬、猫、ハムスターなどの小動物や熱帯魚、メダカなどの魚が多く売られていた。小動物はマンションの規約により飼うことはできないが、メダカなら飼えるかも……。
そう思いながら、「楊貴妃メダカ」という品種の値段を見たら1匹450円である。他の安いメダカも売られていたが、楊貴妃メダカが一番可愛いと思った。でも、たかがメダカ、高額である。その日は買わずに帰宅した。
夜、寝ようとしたら、水槽の中でスイスイ動いていたメダカの姿を思い出し、頭から離れない。
「メダカを飼ってみよう!」
 
翌日、再びホームセンターへ行き、店員に購入したいと申し出て、水槽から楊貴妃メダカを4匹掬ってもらう。
「オスかメスかを選ぶことは出来ませんので、ご了承ください」
確かにその通りである。何十匹もいる水槽の中から、個体を選ぶことはできない。
会計は450円×4=1800円。飼育鉢、ホテイアオイ、餌なども合わせて、4000円近い買い物をしてしまった。
 
その後、4匹の楊貴妃メダカは、夏になり、1匹が卵をホテイアオイに産み付けた。1匹は運良くメスだったのだ。
私は、そっと卵を採取し、別の容器に移し替えた。虫眼鏡を使わないと見えないくらいのとても小さい卵の成長を見守った。
1週間後、少しずつ孵化した。小さな命の誕生である。
採取した20個位の卵から孵化したのはわずか5個。そのうち、1か月位で少しずつ成長できたのは、わずか3匹だった。
 
この6年間で、孵化して成長したメダカはまた卵を産み、少しずつ増えていっては、死んでいく……。
残り1匹になると、寂しいだろうと思い、また同じホームセンターで2匹買う繰り返しで、今に至る。
 
現在、生存しているのは、太郎と花子の2匹だけである。昨年の夏には6匹いたが、夏の暑さの影響か、少しずつ死んでしまった。残った2匹がオスとメスであることは、花子が昨年の秋に卵を産んだので間違いない。
その卵を孵化させようと努力したが、今回はうまくいかなかった。
 
天気が良い日は、飼育鉢をベランダに出してあげる。
陽の光と心地よい風に当たって、とても気持ちが良さそうである。
私は、太郎と花子という全長約3センチの小さな命を日々、愛おしく感じている。
自宅に一人でいる時は、頻繁に話しかけている。
話が通じないのは当然だが、気持ちが通じ合っていると私が勝手に思い込んでいる。
ある日、仕事でミスをして上司に怒られ、落ち込んで帰宅した日があった。
「今日、いろいろあって疲れた」
そうメダカに話しかけると、動きがぎこちなく見える。
失恋した日にも、出来事を応答しないメダカたちに話すと、とても小さなヒレを動かしながら、励ましてくれているような気がした。
「この間買った宝くじ、三千円当たっていたよ」
そんな些細な幸せなことにも、一緒に喜んでくれているように見えた。
 
メダカの寿命は最長でも3年らしい。
現在、飼育しているメダカはあとどれくらい生きられるだろう。
昨年の冬からの寒い日も生き延びてくれたから、できるだけ長生きしてほしい。
生き物は何でも飼っていれば、愛着が湧くものだ。
たかがメダカ、されどメダカなのだ。
 
コロナ禍で、在宅の時間が増えたため、メダカを飼う家庭が増え続けているというニュースを耳にしたことがある。
また、メダカの養殖を専門にしている一般人がいて、うまく養殖できればかなり儲けることができるらしい。
特に、楊貴妃メダカのような特殊な改良メダカは高く付くらしい。
でも、私は、せっかく孵化させて育てたメダカには愛着があるから、養殖させて商売しようなんて全く考えていない。
 
私は、2匹のメダカが自宅の小さな空間で、ヒレを動かしながら元気に動いている姿を見ているだけで心が癒される。
花を飾ったらキレイだし、観葉植物も日々、成長して美しい。
でも、「動く生き物」が家にいることは、一人暮らしの寂しさを軽減させてくれる。一人暮らしの相棒なのだ。
 
今日も寝る前に話しかけよう。
「太郎、花子。おやすみなさい」
そして、朝起きたら一番にメダカに「おはよう」と声をかける自分がいる。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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