メディアグランプリ

東大と京大がPythonの教科書を無料配布する時代に金を稼がなければならない僕たち


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記事:村人F(ライティング・ゼミNEO)
 
 
つくづく恐ろしい時代になってしまったと、同時に思った。
東大と京大がPythonの教科書を無料配布する、この現状を。
 
 
 
1ヶ月前、僕は業務の都合上でプログラミング言語Pythonを習得する必要があった。
期間は1週間しかない。
 
無謀に聞こえるかもしれないがプログラマーの世界ではよくある話である。
プログラミング言語はC言語やJavaなどいろいろ存在するが、それぞれの違いは方言程度になるため、1つ極めておけば新しい言語の習得は短期間で可能なのだ。
とはいえ1週間は流石に短いが。
ただ僕はPythonに興味があったので、会社から業務時間に勉強しろと指示されたときは内心ガッツポーズをしていた。
 
理由には業界で主流の言語だから習得したかった点もある。
しかしそれ以上に東京大学と京都大学がそれぞれ教科書を作っており、しかも無料で配布しているということに惹かれていた。
だから機会があれば読んでみたいと、ずっと思っていたのである。
そのため、教材も迷わずこの2つを使用することにした。
 
そして読み比べて見たが、どちらも大学の特徴が色濃く出ていた。
京大の方は単純に読み物として面白い。
説明がいわゆる教科書調の淡々とした感じでなく、一人で読んでも楽しめるように工夫されている。
例題もクリエイティブな心を刺激する問題が多く、やってみようという気になる。
もちろんコラム欄も面白いネタが充実している。
ああ、やっぱり自由な学風なんだなあという雰囲気が伝わる教科書だ。
 
その点、東大は硬い。
THE 教科書である。余計なことは一切ない。
そして計算ドリルのようにひたすら問題を解いて身体に染み込ませるスタイルだ。
この習うより慣れろと言わんばかりの硬派な印象はまさに東大。
これもイメージ通りだった。
 
こうして2大学の教科書をハシゴした僕は、無事Pythonを仕事で使えるレベルまで習得できた。
さすが日本のトップが作っているだけあって、凄くクオリティが高かった。
ネットに転がっている有象無象とは格が違う一品である。
これらがなかったら1週間で覚えるなんて不可能だったろう。
 
しかし、同時に思ってしまった。
こんな質の高い教科書を、無料で配布しているのである。
普通だったら2000円くらいの金額で販売しているような品物を。
これを単純にいい時代になったと言っていいのだろうか。
 
なぜなら、これらを無料で配布しているということは、逆に言うとこれほどのクオリティでも金を貰えないことを示しているからである。
これは教科書だけに限った話ではない。
一流アーティストも新曲を無料で配信しているし、マンガもそうだ。
クリエイティブ界全体に、この風潮ができている。
 
受け取る僕たちにしてみたら、確かにありがたい時代である。
数千円以上かかっていたところが0円になるのだから。
お財布にとてもやさしい。
 
しかしPythonの教科書を読んでいるときに気づいてしまった。
僕たちも同じようにお金を稼ぎづらくなったのだと。
 
なにせ無料のライバルが大量にいるのである。
しかもその中に東大や京大、さらに一流アーティストも混じっているのだ。
化け物集団どころの騒ぎじゃない。
 
だが仕事ではお客様からお金を頂かなくてはいけない。
この状況の中で、である。
そう、僕たちはいつの間にか修羅の時代に降り立っていたのだ。
だから提供しなければならない価値も、異常なほど上がっているのである。
 
そして僕は、戦う武器を得るためにPythonを勉強した。
しかしそのハードルは、遥かに高い。
だからより一層、鍛錬を続けていかなければならない。
覚えただけで優位になれる時代では、もはやないのだ。
 
ひょっとして東大京大の無料配布の意図は、ここにあるのかもしれない。
今はなんでも無料で手に入る時代である。
教科書のような優れた作品も含めてだ。
しかし、それは同時に過酷な状況なのである。
極めて優れた商品でなければ、お金を得られないのだから。
よって生き残るためには、より勉学に励む必要があるのだ。
きっと、このメッセージをアピールするために行ったのだろう。
 
そして2大学の教科書でPythonを学んだ僕は、このプログラミング言語と共に修羅の世界を戦い抜かねばならない。
ライバルは僕より技術があり、それでも成果物を無料で提供してくるような人たちだ。
その中で金を稼いでいく必要がある。
こうして書くと過酷どころの騒ぎじゃない。
人類史上で最もハードモードな時代と言っていい。
 
ならば楽しんだ方が得だろう。
Pythonを通して久々に感じたが、新しいことを勉強するのは面白い。
そして厳しい状況を乗り越えていくことも、やはり面白いのである。
さらに文章術、営業力など様々なスキルを身につける術も、現代は充実しているのだ。
これらの武器を組み合わせていけば、修羅の時代も生き抜くことができるだろう。
 
2大学が無料で提供しているPythonの教科書はプログラミングの知識だけでなく、現代の厳しさと戦い方も同時に示している。
この教えと共に、世界に食らいついていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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